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神戸:ファルコンの散歩メモ

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  • ハッシュタグ「#読書」の検索結果1769件

今年の読書(39)『ホテルロイヤル』桜木柴乃(集英社文庫)

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本書は2013年上半期・第149回の「直木賞」受賞作品です。

短篇7篇が収められており、北海道の釧路湿原を見下ろす場所に建つラブホテル「ホテルロイヤル」を舞台として、ホテルの経営者、その家族、従業員、出入り業者、そしてホテルを利用する男女に繰り広げられる心の機微を、鮮やかに描き出しています。

あまり小説の舞台として登場しないラブホテルだとおもいますが、裏通りにひっそりと建つ非日常的な空間に身をおく登場人物たちの心のさまを、無駄のない的確な文章で紡ぎ出し、生活感あふれる登場人物たちを語り繋いでいきます。

短篇7篇は、時系列的に現在から過去にさかのぼり、読者は廃墟のホテルの場面からホテル建設の背景まで辿る7篇が見事に連続する構成力に、筆者の並々ならぬ力量がうかがえます。
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今年の読書(38)『ぬけまいる』朝井まかて(講談社文庫)

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今年の読書(38)『ぬけまいる...
タイトルの『ぬけまいる』は、江戸時代に伊勢神宮に雇い人や家族に断りもなく参拝しても、お咎めが無かった「抜け詣り」(御蔭詣り)から付けられています。

登場するは、若い頃に「馬喰町の猪鹿蝶」と呼ばれた28歳の、<お以乃>、<お志花>、<お蝶>という江戸娘三人組です。
それぞれに個人の悩みを持ち鬱積した日々を重ねていた三人は、突然仕事も家庭も掘り出して「お伊勢参り」に繰り出し、その珍道中が描かれています。

女性の江戸時代を背景とした道中記は珍しく、読みながら<田辺聖子>の 『姥ざかり花の』 を思い浮かべていました。

道中の背景は、当時(1845年:弘化2年)の史実に基づき綿密ですし、植木職人の世界を描いた 『ちゃんちゃら』 や、植物学者<シーボルト>を描いた 『先生のお庭番』 など植物の世界にも造詣が深い著者で、江戸時代に流行した「変化朝顔」などの話題も登場、なかなか楽しめました。
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今年の読書(37)『大人の説経』山本一力(文春文庫)

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今年の読書(37)『大人の説経...
1997年『蒼龍』で「オール読物新人賞」を受賞して作家デビュー、2002年『あかね空』で「第126回直木三十五賞」を射とめている著者です。

本書は二部に分かれており、第一章は『天理時報』(天理教道友社)、第二章は『時字随想』(読売新聞)と『1194』(三井ビルテクノサービス)に書かれたエッセイ集です。

数多くの転職経験のある著者が、まっとうな大人の振る舞いを説いていますが、どれも心優しい目線を感じる内容です。

特に市井で細々と商売をされている、中華料理屋「来々軒」や市場の肉屋さん、アサリ売りのお婆ちゃん、蕎麦屋の店員さん、熱海の食堂の女将さんなどの逸話は、庶民派のエッセイとして心に残り、ホッコリとした気分にさせてくれます。
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今年の読書(36)『天命の扉』遠藤武文(角川文庫)

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副題として<県警捜査一課・城取圭輔>とあり、また長野県警があまり小説には登場しない舞台設定ということで読んでみました。

事件は長野県庁で行われてた県会の定例議会中に停電が起こり、演説中の議員が射殺されますが、閉鎖された議場と傍聴席の中での事件だけに逃げた者もおらず、また凶器も発見されません。

議会開会前に県知事に不可解な短歌のメールが届きますが、同じ内容のメッセージが、射殺された議員のポケットからも発見され、<城取>は捜査を始めます。

<城取>は過去にパチンコ店強盗事件犯として検挙した<竹内>が、冤罪ではないかとの不安を持っています。今回の事件も、その彼がアリバイに使った善光寺の本尊に絡む宗教や歴史的記述が多く、正直ミステリーに必要な内容だとはおもえず、また犯人の動機自体もどうかなという設定でした。

善光寺の歴史性を楽しむにはいいかもしれませんが、刑事を主人公に据えた小説としては、評価できる内容ではありませんでした。
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今年の読書(35)『ブルーマーダー』誉田哲也(光文社文庫)

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刑事<姫川玲子>を主人公とするシリーズとして、『ストロベリーナイト』『ソウルケイジ』『シンメトリー』『インビジブルレイン』『感染遊戯』 に次ぐ文庫本最新刊が本書です。

本書で<姫川>は本庁捜査一課の主任から、池袋署の刑事課強行犯捜査係の担当係長になっています。
その池袋署管内の雑居ビルで、出所したばかりの庭田組組長<河村丈治>の撲殺死体が発見され、さらに同一犯と思わせる手口で、半グレ集団である「新東京連合」や中国人グループ「主華龍(スカル)」のOBたちが、連続して殺害されていきます。

<下井正文>警部補と組み池袋の繁華街を捜査中、フイリピンから出稼ぎに来ている女性から、<ブルーマダー>と呼ばれる殺人者の存在を知らされ、裏社会の人間が20人以上消されている事実を突き止めていきます。

本書は第一作目の『ストロベリーナイト』の<姫川>は29歳、その4年後のアンサー編的な筋立てをしており、まだこのシリーズを読まれていないかたは、ぜひ『ストロベリーナイト』だけは読んで、本書を読んでいただきたいです。

17歳の夏に起こった<姫川>の暴行事件を核として、恋心を持っていた元部下の<菊田>巡査部長や、天敵の<ガンテツ>こと<勝俣健作>警部補も健在で、<姫川>ファンとしてはおおいに楽しめた一冊でした。
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今年の読書(34)『花は桜木 人は武士』鈴木周平(星湖社)

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今年の読書(34)『花は桜木 ...
先だって、一杯呑みに出向いた<憩い処「乾杯」>の<ハルちゃん>からいただいた文庫本 『花は桜木 人は武士』 を、さっそく読ませていただきました。

大阪府生まれで神戸市で育った著者らしく、多くの時代劇は「江戸」を舞台としていますが、本書は上方の「大坂」や「京」を舞台として、本書には7篇の短篇が収められています。

8歳のときに親に売られた娘<お房>は、<陸奥>という源氏名の花魁になっていますが、ふとした縁で唐物屋の<半四郎>と知遇を得て、江戸に住む両親と再会する『天神祭の女』に始まり、浪花の森で惨殺死体が発見され、見慣れぬ銀銭から長崎まで出向いた同心が突き止めたのは、船の難破で財産を失った「鹿島屋」の娘の企みだった『ぴしょんの女』まで、庶民の喜怒哀楽と、武士の矜持を描いた作品が楽しめました。
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<ハルちゃん>からのおすそ分け『花は桜木 人は武士』

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<ハルちゃん>からのおすそ分け...
今宵は<憩い処「乾杯」>で、「ホタルイカの酢味噌和え」 を肴に一杯呑んでいました。

時代小説も良く読んでいますので、女将さんの<ハルちゃん>から<鈴木周平>さんの文庫本、『花は桜木 ひとは武士』をいただきました。

どうやらお店に顔出しされるお客さんのようで、神戸市灘区に在住、本書に収録されている『ぴんしょうの女』で「第22回小説CLUB新人賞」を受賞して作家デビューされています。

本好きとしてはありがたいおすそ分けで、また著者と直接お会いできるかも知れず、お店を覗く楽しみが増えました。
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今年の読書(33)『天皇の代理人(エージェント)』赤城毅(ハルキ文庫)

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今年の読書(33)『天皇の代理...
物語が語られる舞台は、銀座の裏路地にあるバー「シェリー博物館」です。

<僕>は、あるひ老人から声を掛けられ、彼は外務省に勤務していた外交官<津村昌雄>と名乗り、戦前の歴史として表には出てこない自分の経験した隠された真実について語り始めます。

本書には四話が収録されていますすが、全権大使相当の身分で<砂谷周一郎>が登場、各地で起こる殺人事件やスパイ事件に関して重要な立場で外交をこなしていきます。
登場人物は史実に忠実に、起こる事件はフィクション(?)として、ヨーロッパを舞台に展開される秘密外交が面白く楽しめた一冊でした。

<逢坂剛>のあとがきに、著者の言葉として「アメリカみたいな大国を相手に三年余りも戦ったわけですから、それって大変なドラマです。かっての戦記物ブームとかは、実際に(戦争)を体験した人、地獄を体験してその臭いを知っている人たちが読んでいた」とありましたが、ふと、映画にもなった<百田尚樹>の 『永遠の0(ゼロ)』 を思い出しておりました。
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今年の読書(32)『アスクレピオスの愛人』林真理子(新潮社文庫)

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本書のタイトルである<アスクレピオス>は、ギリシア神話に登場する名医として死者をも甦らせるため、<ゼウス>の怒りに触れ雷撃で殺されてしまいますが、死後、蛇つかい座として天に登り、「医神」となりました。
小説の舞台となるWHOの紋章は、国連旗の図案に蛇が絡みつく杖をあしらい、医療のシンボルとなっています。

本書の主人公48歳の<佐伯志保子>は、スイス・ジュネーブにあるWHO(世界保健機関)のメディカル・オフイサーとして、パンデミック予防のため感染症の前線で世界中を飛び回っています。

<志保子>には、美容整形外科の別れた夫<斉藤裕一>の元に19歳の娘<れおな>がおり、彼女も活躍する母の姿にあこがれ、私大の医学部に通っています。
そんな折、継母の<結花>は<裕一>の不倫を知り、43歳で妊娠したものの不妊治療で通っていた「白金ソフィア病院」で、出産を前に「羊水塞栓症」で母子ともなくなってしまいます。<裕一>は、病院長の<小原俊矢>を相手に医療裁判を起こしますが、<小原>は<志保子>の長年の愛人でした。

世界の保健医療に並々ならぬ情熱を燃やしながら、私生活では誰にはばかることなく男との関係を持ち続ける母<志保子>、医者が医者を訴えるという父<裕一>の行動を目の当たりにした娘<れおな>は、医者の世界に不信感を抱き医学部退学を考え始めます。

現状の医療現場を縦糸に、男と女、母親と娘等の人間関係を横糸に描いた、著者には珍しい医療分野の一作でした。
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今年の読書(31)『願かけ』新・酔いどれ小藤次(二)佐伯泰英(文春文庫)

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今年の読書(31)『願かけ』新...
主人公は<赤目小籐次>、「来島水軍流正剣十手脇剣七手」の剣豪であり、部類の酒好きな老侍です。

これまでに <酔いどれ小籐次留書> シリーズとして<幻冬舎文庫>から、19巻が発行されていますが、<文春文庫>から 『神隠し』 を一巻目として新シリーズが始まりました。

刃物研ぎを生業としている<小籐次>ですが、その姿に手を合わせ念仏を唱え、賽銭を投げる者が続出、武勇伝から「酔いどれ大明神」に祭り上げられている感が見え隠れするのですが、読売屋<空蔵>や岡っ引き<秀次>親分の調べでも風評の元が探れません。

かたや妻<おりょう>が主催する「芽柳派」の歌会でも、門弟の間で諍いがあり、なにやらきな臭い様相を見せ、二つの騒動は<小籐次>を貶めるための画策だと判明していきます。

10歳の養子<駿太郎>は、本書で実の父だと思っていた<小籐次>が、実は刺客として切り殺された<須藤平八郎>が実の父親と知るのですが、敵相手として今後どう振る舞っていくのかが、シリーズの楽しみでもあるようです。
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