第一巻の『クランⅠ』で警察組織を牛耳ろうとする闇の団体の捜査に乗り出した<クラン>のメンバー、<晴山>警部補は、<北森>を殺害したのは、同じ警察官の<蓑田>とあたりをつけますが、庁舎内で、<蓑田>は、拳銃自殺してしまいます。
六本木の「マル暴」担当から、渋谷署の「生活安全課」に移転させられた<岩沢>巡査部長は、管内の案内を交番勤務の<足ヶ瀬>巡査に依頼、巡回中の公園で、元警察官僚の銃殺死体を発見、渋谷にて不穏な動きを察知した<岩沢>は、地元のヤクザに情報を求めます。
複雑な構造の渋谷駅の地下に何やら「神」と呼ばれる存在の噂を知り、<岩沢>は、渋谷駅に出向くのですが、外国人のテロリストたちに、神経ガスを浴びせられ、無事に生き延びましたが、<晴山>の部下の<土沢>が殺されてしまいます。
警察組織内、もしくは組織外に確実に「神」と呼ばれる組織が存在することがわかり、<クラン>のメンバーが動き出します。
著者には、隅田署の女刑事<一柳美結>を主人公に 『フェイスレス』 に始まり 『シュラ』 で終わるシリーズがありましたが、本書は、同じく警察を舞台とする連作シリーズです。
鑑識課の敏腕検視官<綾織美香>は、同じ警察官の婚約者<北森>の変死事件が、明らかに他殺なのに自殺と処理されたことに不満を持ち、その後の検視に対して手抜きが続いていました。
捜査に支障をきたすとのことで、<晴山旭>警部補は、上司から<綾織>の内偵を命じられます。
内偵を進めていく過程で、<晴山>は、警察組織を牛耳ろうとする警察内部に存在する巨大な組織の存在に突き当たり、<千徳>首席監察官をリーダーとする「クラン」という秘密裏に不穏な組織を探り出そうとするメンバーの一員として動き出します。
昨年は、看護される立場として初めての入院を経験しました。新聞広告で見た、<小林美希さんの 『ルポ看護の質』 を読み、現在の看護現場の、看護師・介護士の状況が把握できました。
入院中お世話になりました、介護士の <山中>さん が、「おしめ」の取り換え問題で、病院側と意見が合わず辞められたのは、素敵な人だっただけに個人的にもショックでした。
本書は、2004年刊行と、ひと昔前ですが、それだけに現在に至る「看護」のその後の流れがよく理解できました。
当時活躍されている、看護婦・助産師・医師等7人の実践活動と考え方が分かりやすくまとめられています。
「看護」は何気なく日常的に使う言葉ですが、本質的な「看護」を理解して使用されている方は少ないのではないでしょうか。
堂場瞬一の「検証捜査シリーズ」として『検証捜査』・『複合捜査』に次ぐ第3弾『共犯捜査』です。
福岡で資産家の女児誘拐事件が発生。県警捜査一課刑事「皆川」は、追い詰めた犯人らしき人物は車でそのまま埠頭に突っ込んで亡くなってしまいます。身代金もなくなっていて、失態に嘆くも、また新たな誘拐事件がおきます
被害者への手がかりを失い焦る捜査陣でしたが、共犯者の存在が浮かびます。そんな中、誘拐されていた女児の遺体が発見され?そして次なる幼児誘拐が発生しているのではないかと通報が入ります。
確認に行ったが、被害は何もないと家族が言い張りますが、「皆川」は、複雑な連続誘拐に翻弄されながらも、命を張って犯人を追い詰めていきます。若き刑事が暴く驚愕の真相とは。
今年は山岳小説として、<湊かなえ>の 『山女日記』 がありましたが、やはり<笹本稜平>がこの分野の第一人者だと言わざるを得ない骨太の内容でした。
大学山岳部に所属していたころは、一目を置かれるクライマーでありながら、日本の山岳界の体質に合わず、マッキンリーに渡り、現地ガイドとして活躍していた<津田悟>が、単独登頂で消息を絶ったと、身重の妻<祥l子>からの連絡を受けた、<吉沢>は、現地捜索隊に加わり、救出のため冬のマッキンリーに向かいます。
学生時代からパーティー組んでエベレスト登頂を成功させた<吉沢>ですが、マッッキンリーでのホテル建設計画も順調に進み、子供にも恵まれながら、なぜ無謀ともいえる単独登頂に向かったのかの疑問を投げかけながらの探索は、迫力に満ちていました。
当事者<津田>の回想を織り込みながら、「登山」の世界の奥深さを読者に丁寧に描き出す構成は、リアル感あふれ、564ページ最後まで緊張感を忘れさせません。
親の残した建物を民家風の喫茶店と陶器などの小物を展示即売する「小蔵屋」の76歳のオーナー<杉浦草>を主人公に据えた「紅雲町珈琲屋このみ」シリーズも、 『萩をぬらす雨』 を第一作目として、『名もなき花の』 に次いで本書で、四作目になりました。
当初は、身近な事件を解決する短篇集でしたので、「おばあちゃん探偵」の登場かなとみていたのですが、<草>のほのぼのとした人情味に魅かれ読み継いできています。
今回は、大事にしている備前焼の皿の箱紐が切れたことにより、真田紐を買い求めて商店街、通称「ヤナギ」に出向いたところから、物語は始まります。
「ヤナギ」は、数軒しかない小さな商店街ですが新鋭女性建築家<弓削真澄>が、改装工事の設計を進めていますが、世界的な陶芸家の作品が絡んで、<草>は隠された紅雲町の歴史と人間関係に触れ合うことになります。
タイトルもそうですが、いつもながら陶器に対する<草>の愛情がよく描かれており、ほのぼのとした思いを読者に残しながら、さりげなく<草>の日常に戻り、建築家に対する目線も鮮やかで、楽しみながら読み終えました。
同じ著者のシリーズとして、「耳袋秘帖」は、今のところ 『馬喰町妖獣殺人事件』 が最後ですが、順次楽しく読み続けています。
本書の副題は<新若さま同心 徳川竜之介>で、すでに13作品が刊行されており、<新>シリーズとしては、4作目に当たります。
舞台は江戸時代末期、田安徳川家の十一男の<竜英>は、南町奉行の同心になりたくて、名前を<福川竜之介>と変えて、市井の事件を解決していきます。
本書では、<南蛮小僧>と称する怪盗が幕府の隠し財産を狙う企みを未然に防ぎます。
江戸末期の時代設定ですので、蒸気機関車や熱気球・バーボンなどが伏線として登場してくるのは、ご愛嬌かな。
著者の作品としては、『星々たち』と読み、気になる作家の一人として、本書を手に取りました。
遺体を風にさらし風化させる葬制が「風葬」ですが、一読して、タイトルと内容が素直に結びつきませんでした。
冒頭、新しく赴任した中学校の入学式に欠席した生徒<佐々木彩子>の家を訪問する担任の描写から始まりますが、のちの伏線として教師名が明かされてはいません。
書道教室をいとなんでいる<篠塚夏記>は、認知症の傾向がある母<春江>がつぶやく「ルイカミサキ」という地名が気になり、自分の出生と関連しているのではないかと感じとります。ある日新聞の短歌欄で「涙香岬」という言葉を見つけ、作者<沢井徳一>に連絡を取ります。
<徳一>は、快く<夏記>を現地に案内しますが、<夏記>に、<彩子>の面影をみいだします。<徳一>こそが、入学式当日に家庭訪問をした教師でした。
ソ連の拿捕事件、ソ連マフィアとの絡み、港町の遊郭など、北海道ならではの社会背景と昭和の時代背景を含ませながら、登場するそれぞれの親子関係が複雑に絡ませた秀逸な物語でした。
南町奉行の、根岸肥前守>を主人公とする「耳袋秘帖」の殺人シリーズも、第一巻の 『赤鬼奉行根岸肥前』 から始まり、本書で第16弾目になります。
訴訟で江戸にやってくる者たちが泊まる(公事館)がひしめく日本橋馬喰町を舞台としています。
<根岸>が評定を始めると、なんと白洲の場にて、訴訟の代理人である公事師が突然獣に食いつかれたような傷を残し死んでしまいます。
馬喰町には、妖獣「マミ」が出たという話をはじめ短期間の間に「七不思議」が流布、<根岸>は、何か隠されたウラがあると睨み、部下の<坂巻>と同心の<栗田>に噂の元を調べさせます。
大泥棒「暁星右衛門」に絡む悪だくみを未然に防ぐ<根岸>ですが、文末に人情家らしく<おたえ>に対する処遇が、心温まりました。
毒ガスを使用した、クーデターは未遂のまま終わりましたが、毒ガス背造者の<松島>は、その後塾を経営、教え子の<天野>にクーデターの思想を受け継がせます。
<天野>は、<国重>が考えていた日本の国体として、議員を総辞職させ、官僚主体の国家にすべく、SNSを駆使して実際に毒ガスを発生させ、捜査一課特殊犯の刑事<峰脇>たちを翻弄させていきます。
50年前に企てられたクーデタ-が、現在に甦り、<峰脇>の過去ともリンクしながら、事件は終結に向かいます。
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