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神戸:ファルコンの散歩メモ

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今年の読書(46)『柚子の花咲く』葉室麟(朝日文庫)

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今年の読書(46)『柚子の花咲...
著者の時代小説を読むといつも感じるのは、結末のさわやかさが素晴らしいのだと、改めて感じさせてくれる一冊でした。

鵜の島藩領内の沼口宿にて、一人の武士の遺骸が海岸で見つかりました。男は隣接する日坂藩の青葉堂村塾の教授「梶与五郎」で、鵜の島藩家老の三男でもありました。

村塾で「梶」のかっての教え子「筒井恭平」は、恩師が殺された真相を探るべく、隣藩へ出向き捨て身の態勢で、恩師の複雑な家庭環境と人間関係のしがらみを解き明かしてゆきます。

干拓を巡り隣藩との境界でのもめ事を主軸に、子供時代の「梶与五郎」との村塾の出来事を回想しながら、恩師の口癖の教え「桃栗三年、下記八年、柚子は九年で花を咲かす」の言葉通り、武士として、人間として大きく成長した「恭平」の生き方に感動しながら、教育とは何かという本質に迫る内容でした。
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今年の読書(45)『花や散るらん』葉室麟(文春文庫)

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今年の読書(45)『花や散るら...
「時に元禄十二年十二月十四日、江戸の夜風を震わせて・・・」の語りが入る<三波春夫>の『俵星玄蕃』(1969年)は、赤穂浪士の討ち入りが主題で、私の大好きな歌のひとつです。

本書は、赤穂3代目藩主<浅野 長矩>と高家の<吉良上野介>との「忠臣蔵」とも呼ばれる「赤穂事件」の流れを中心に据え、京の郊外で静かに暮らす元水戸徳川家奥女中取締役の「咲弥」と「雨宮蔵人」という架空の夫婦を登場させ、江戸幕府と京の朝廷との対立を伏線とする、武士の心意気を描いた作品です。

標題の「華や散るらん」は、能の「熊野」に出てくる「いかにせん都の春もおしけれど馴れし東の花やちるらん」から引用されています。

「華やちるらん」の言葉に著者は、男女のこころの結び付きや夫婦・親子の絆、そして武士たる者の矜持を端的に表し、「赤穂事件」という史実に沿わせ、自らの思い描く人の世の世界を見事に構築させた作品だとおもいます。また、「赤穂事件」の裏の世界を知りえた貴重な時代小説でもありました。
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今年の読書(44)『冬の光』篠田節子(文春文庫)

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今年の読書(44)『冬の光』篠...
著者の作品は、『アクアリウム』 ・ 『沈黙の画布』 などを読んでいますが、『仮想儀礼(上・下)』 の文章力に圧倒され、綿密な作品構成に惹かれています。久々の文庫本の新刊『冬の光』(2019年3月10日発行)が目に留まり手にしました。

あらすじだけを書きますとありきたりの小説のようですが、そこは著者の巧みな構成で、最後まで読み手を引き付けて放しません。

高度成長期に企業戦士として働いてきた<高岡康宏>62歳は、家庭外に学生運動の同志としてつかず離れず20年来の女<笹岡紘子>との関係が家族にばれ、家庭内で浮いた生活をしていました。東北大震災でボランティアに出た帰り、四国遍路に出向き、帰りのフェリーから転落したのか亡くなったのが発見されます。事故か自殺かわからないまま、次女の<碧>は、真相を確かめようと、父の残したメモを頼りに四国88か所を訪ね歩きます。

<康宏>の視線で描かれる<紘子>との関係、<碧>の視線での父親像と家庭環境が交互に語られ、<康宏>の人生観が浮かび上がっていきます。

家族とは、男女の関係とは、人にはそれぞれの人生があり、それを見つめる人々にもまた、それぞれの人生があるはずです。その触れ合いやすれ違いが人間同士の関係なのだと、改めて感じさせ切なくさせてくれる物語でした。
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今年の読書(43)『日の昇る国へ』佐伯泰英(新潮文庫)

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今年の読書(43)『日の昇る国...
第一巻『死闘』(2008年1月5日:徳間文庫刊行)に始まり第十一巻『帰還』に終わる<古着屋総兵衛影始末>シリーズに次ぎ、新シリーズとしての<新・古着屋総兵衛>シリーズも、第一巻 『地に非ず』 (2011年1月28日刊行)に始まり本書第十八巻の『日の昇る国へ』(2019年6月1日刊行)にて完結となりました。

恒例の「古着市」の開催直前に。将軍家近習の旗本「古瀬」が売り上げの一部を上納せよとの圧力を大黒屋にかけてきます。「古瀬」は無益の小普請組から瞬く間に将軍家近習にのしあがった男であり、総兵衛たちが背後関係を探りますとあくどい商売の呉服店「きき」が浮かび上がりますが、無事に始末をつけ、第十回目の「古着市」はいつも通りに開催されます。

桜子と婚姻を済ませた総兵衛は、新造船「カイト号」を引き取りに、バタヴィア迄桜子と一緒にイマサカ号にて日本を離れます。

「カイト号」を引き取った総兵衛一行は試験航海を繰り返し、船員共々新しい船に慣れていきますが、総兵衛は日本に戻らず、日の昇る国アメリカを目指して旅立つことを決心します。

日本の大黒屋の行く末は、徳川幕府との関係は、鷺沢一族の行く末はなどと読者としては気になる部分も多く残るところですが、長きにわたる物語としては、頃合いの完結かもしれません。
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今年の読書(42)『いざ帰りなん』佐伯泰英(新潮文庫)

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<佐伯泰英>の「新古着屋総兵衛」シリーズも、第16巻 『敦盛おくり』 に次ぐ本書『いざ帰りなん』で17巻目になりました。

<総兵衛>率いる鳶沢一族のに運び方の<文介>の動きがおかしいと<北郷陰吉>の報告を受けて、<総兵衛>は、身辺調査を<陰吉・平十郎・忠吉・林梅香>らに委ねますが、若年寄りの<京極高久>が金貸し<三留屋>と組み、古着市の乗っ取りをはかっていることを突き止めます。

古着市開催が迫る中、<総兵衛>たちは、<京極>の屋敷に乗り込み、<京極>の暗殺を裏の貌として働き、事なきを得ます。

一方、大黒丸とイマサカ号の交易船団は、新造船カイト号の建造のめども立ち、2年ぶりに日本へ戻ってきます。

日本では、京都に出向いた<総兵衛>と<坊城桜子>の仮祝言が執り行われ、盛大に開催された「古着市」でも披露され、大黒屋としての基盤が固まっていきます。無事夫婦になったふたりは、<総兵衛>を船団長として新造船のカイト号の引き取りと交易に旅立ちます。

本書で、<総兵衛>の配下となった元秋月藩主の<筑後平十郎>の過去が語られ、彩りを添えていました。
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今年の読書(41)『検事の信義』柚木裕子(KADOKAWA)

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今年の読書(41)『検事の信義...
たまたま手にした 『朽ちないサクラ』 が気に入り、前回(40)の 『最後の証人』 に続き<柚月裕子>の最新作が本書です。

第1作目の『最後の証人』では、ヤメ検として弁護士として登場している<佐方貞人>ですが、シリーズとしては検事として『検事の本懐』・『検事の死命』に続く4作目が本書で、「裁きを望む」「恨みを刻む」「正義を質す」「信義を守る」の4篇が組まれ、これらのタイトルに主人公の検事<佐方貞人>の人物像が浮かび上がる構成になっています。

「裁きを望む」は、ある住居侵入および窃盗の容疑で逮捕・起訴された若い男の論告求刑公判で、佐方が「無罪」を論告するという異例の場面で始まります。

無罪論告はきわめて珍しく、全国の裁判所で年に1、2例あるかないかです。被告人はある資産家の家に侵入し、高価な腕時計を盗んだとして起訴されていた。しかし、証拠調べが不十分で、また被告人が被害者の非嫡出子であることがわかり、スキャンダルな展開となっていました。

腕時計は事件の前に被害者から被告人に手渡されていました。警察に逮捕されたときに、そう証言すれば起訴されることはなかったと思われた。まるで起訴されることを望んでいたような被告人の思惑とは何か。このあと、遺産相続をめぐる「トリック」や地方検察庁内部での人間関係が絡み、<佐方>は厳しい判断を迫られます。

そのとき、<佐方>が考えたのは「罪はまっとうに裁かれなければならない」という当たり前のことでした。ところが被告人は別のことを考えていました。種明かしになるので、詳しく書けませんが、<佐方>はある奇手に出ます。このあたりは著者がとくに知恵を絞ったに違いありません。

かつて検事を主人公にしたリーガル・ミステリーがなかった訳ではなく、<小杉健治>の 『決断』 に登場する東京地検の<江木秀哉>なども魅力的でした。<柚月>さんはシリーズ前作の『検事の死命』(2013年9月5日)から6年経て、新たな検事像を確立させたようです。
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今年の読書(40)『最後の証人』柚月裕子(角川文庫)

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今年の読書(40)『最後の証人...
同じ著者の 『朽ちないサクラ』 が好みでしたので、手にしました『最後の証人』です。本書は、2010年5月24日単行本にて刊行、2018年6月25日文庫本化されています。

主人公の<佐方貞人>は12年前まで米崎地方検察庁の検察官でしたが、自らの「正義」を貫くためにその職を辞し、東京都内で「ヤメ検」として弁護士事務所を開いています。引き受ける事件は、「事件が面白いかどうかで、金銭面には無頓着です。

そんな彼が、今回弁護するのはホテルの一室で起きた刺殺事件の被告人です。物的証拠・状況証拠共に、被告人の有罪はほぼ間違いないとみられており、対決する検事<庄司真生>も若手ながら<佐方>が検事当時の上司の<筒井>の部下らしく自信に満ちた切れ者です。しかし<佐方>はこの事件がそんなに単純なものではないと感じていました。

被告人の無罪を証明するためには、あるひとりの証人を出廷させ、証言させることができるかどうか。事件の裏側に隠された真相に辿り着いた時、この裁判の勝敗はそれで決まると<佐方>は確信していました。

裁判は一見男女の痴情のもつれでの殺人事件だとおもわれましたが、7年前に起こった小学生が死亡した自動車事故が伏線として描かれ、被告人と被害者の読み違いをさせるという著者の目論見に「うっ!」とさせられた読み手が多かったのではないでしょうか。
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今年の読書(39)『ヒト夜の永い夢』柴田勝家(ハヤカワ文庫JA)

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今年の読書(39)『ヒト夜の永...
著者の<柴田勝家(本名は、綿谷翔太)>さん(31)は、成城大学大学院文学研究科日本常民文化専攻博士課程前期修了。在学中の2014年、『ニルヤの島』で第2回ハヤカワSFコンテストの大賞を受賞し、デビューしています。

本書『ヒト夜の永い夢』は奇想天外、人を食った設定です。昭和2年、稀代の博物学者「南方熊楠」のもとへ超心理学者の「福来友吉」が訪れます。「福来」は明治43年のいわゆる「千里眼事件」で学会を追放された変わり者です。

「福来」の誘いで学者たちの秘密団体「昭和考幽学会」へ加わった「熊楠」は、新天皇即位の記念事業のため、思考する自動人形を作ることになります。

「熊楠」が研究する粘菌を使ったコンピューターを組み込んだ「少女」は、「天皇機関」と名付けられますが、「2・26事件」の混乱へとストーリーは展開していきます。

文中、孫文、江戸川乱歩、北一輝、宮沢賢治、石原莞爾などが登場、<柴田>さんはあるインタビューに答え、「宮沢賢治」と「南方熊楠」に交流があったという設定は、パズルのように時系列を検討して考えたといいます。

SFだからなんでもありと思われますが、昭和史と昭和の文化史を押さえた上のストーリーは「伝奇ロマン」風ですが、妙に説得力を持ってせまります。

俳優の故<西村晃>さんの父、生物学者、元・北海道帝国大学教授「西村真琴」も重要な役どころで登場します。「西村真琴」は「學天則」という機械仕掛けの人形を実際に開発し、昭和天皇即位を記念した大礼記念京都博覧会(1928(昭和3)年)、に展示したことでも知られています。終盤、「學天則」が思わぬ形で「天皇機関」と対峙します。

「天皇機関」となった少女が魅力的です。果たして何なのか? 人間なのか機械なのか、生きているのか死んでいるのか? 波乱の展開の中に静かで思弁的なテーマが内包されている全573ページでした。
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今年の読書(38)『十二年目の映像』帚木蓬生(集英社文庫)

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今年の読書(38)『十二年目の...
本書『十二年目の映像』は、単行本としては、1981年に刊行されています。(集英社文庫)としては、『賞の棺』 ・ 『薔薇窓の闇(上・下)』 に続いて、2014年11月25日に発行されています。

大手放送局に勤務する25歳の<川原庸次>は、かつて学生運動に参加していたという上司<鎗居>からT大時計台闘争の時に立てこもった時計台内部から撮影したというスクープ映像の存在を聞かされます。初めは半信半疑の<川原>でしたが、十二年間にわたり地下に潜伏し続ける男<井田>と出会い、そのフィルムの存在を確信します。しかし彼の不審死を境に事態は急変していきます。テレビ局を舞台にした緊迫の長編サスペンスです。

かたや、<川原>と女優志望の恋人<和田英>との関係や、テレビ局内のドラマ制作の流れ、テレビ業界にしぶとく生き続ける業界人たちの生き様を織り込み、最後まで緊迫感をもって読み進められた一冊でした。
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今年の読書(37)『死命』薬丸岳(文春文庫)

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今年の読書(37)『死命』薬丸...
本書『死命』は、2012年4月文藝春秋から刊行され、2014年11月に文春文庫として発行されています。 『刑事のまなざし』』(2011年6月) ・ 『ハードラック』(2011年9月)に次ぐ作品になります。

『死命』は、胃癌を患い余命いくばくもなく、自らの死と隣り合わせの状態にある2人の男が織りなす、壮絶な物語です。子供のころ受けたトラウマで関係を持った女性を絞殺することに喜びを感じる33歳の<榊真一>と、刑事としての矜持をもちえた妻を亡くした53歳の捜査一課の刑事<蒼井凌>は、所轄の28歳の新人刑事<矢部知樹>と組み、女性を狙った連続殺人事件を追います。刑事人生に心血を注いできた<蒼井>は、病で余命宣告を受けたのを機に、死の恐怖に襲われながらも、残された時間を職務に注ぐことを再決意するとともに、ダンサーを目指す娘<瑞希>や息子<健吾>との関係にも修復を試みます。

そんな<蒼井>に追われるのが、同じく胃癌で余命宣告を受けたデイトレーダー<榊信一>。命のタイムリミットに直面した彼はあろうことか、ずっと抑え込んできた殺人衝動に忠実に生きると決め、連続殺人に手を染めていきます。

余命宣告を受けた者同士でありながら、命との向き合い方も、悟った使命も相反する<蒼井>と<榊>。2人は駆け引きを交錯させながら、スリリングな追走劇を展開していきます。そんな中、2人の「人生」を司る過去も徐々に炙り出され、<榊>を愛する幼馴染の<山口澄乃>を巻き込み、運命は思いもよらない方向に展開していきます。
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