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神戸:ファルコンの散歩メモ

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今年の読書(2・3)『海賊と呼ばれた男』百田尚樹(講談社文庫)

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第10回の本屋大賞を受賞したベストセラー小説で、2016年に 「永遠の0」 (2013年)と同じ<山崎貴>監督により映画化され、出光興産産創業者の<出光佐三>をモデルとした主人公・国岡鐡造の一生と、出光興産をモデルにした国岡商店が大企業にまで成長する過程が描かれているという内容は知り得ていましたが、遅まきながらお正月休みにじっくりと上下2巻を読んでみました。

<出光佐三>をモデルとした主人公・国岡鐵造が、石油の一大事業を成し遂げるさまを明治・大正・昭和という時代の流れを背景に、石油産業に情熱を注ぐ主人公の生き様が、一つの戦後史として、日本の敗戦を境として見事に描かれています。

学生時代、イランの「国立国会図書館」の国際コンペに参加した経験がありますが、その当時のパーレビ国王の立場が描かれており、イランの石油にまつわる状況を興味深く読みました。

化石燃料としての「石油」、今後の流れはどうなるのかなと、考え込んでしまいました。
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今年の読書(1)『賞の棺』帚木蓬生(集英社文庫)

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昨年<本庶佑>氏が<ジェイムズ・P・アリソン>氏とノーベル生理学・医学賞を共同受賞したのは、記憶に新しいところですが、本書は同じく筋肉の運動に関してノーベル生理学・医学賞を受賞したイギリスの医師<アーサー・ヒル>にまつわるミステリーとして描かれています。

同じ筋肉の運動に関する研究を進めていた恩師<清原修平>の教え子<津田孝>は、恩師を含め筋肉分野での研究者の不審な死因を探るべく、疑惑の受賞者や関係者を訪ねて、ヨーロッパ各地を巡り歩きます。

悪事の暴露が目的ではなく、真実を明らかにすることが目的となっている点が、好ましい。疑惑追及の旅ですが、単にミステリというに留まらず、人が生きていく上で大切なものを盛り込み、画家を目指しパリで生活している恩師の娘<清原紀子>とのラブロマンスを絡め、また子供が成長する過程において、親子関係が将来に影響する描写も考えさせられるないようでした。

読者としては、犯人の予想がつく中、結末は妥当な締めくくり方かなと思えながら読み終えました。
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今年の読書(72)『だから荒野』桐野夏生(文春文庫)

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46歳の誕生日に、夫<浩光>と長男<健太>とレストランに自ら運転手となり食事に出かけた主婦<朋美>は、自分を軽んじる身勝手な家族の会話にキレ、夫の愛車「ティアナ」で家を飛び出してしまいます。

行く当てのない<朋美>は。車に積んでいた夫のゴルフセットを売りとばし東京からの逃避行の軍資金とします。

夫と結婚する前に付き合っていた長崎に住む<酒井典彦>との再会を決意、高速道路に乗り入れ、<朋美>の珍道中がはじまります。

「車で家出する主婦」というキャッチフレーズでしたので、<リドリー・スコット>監督の映画『テルマ&ルイーズ』「1991年」の面白さを期待し、また著者の 『東京島』 並の波乱万丈の進展を期待した割には、私には面白味にかける結末でした。
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今年の読書(71)『ルージュ 硝子の太陽』誉田哲也(光文社文庫)

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<姫川玲子>シリーズとして 『ストロベリーナイト』 で始まり 『インデックス』 まで7巻を読み続けていますが、本書は第8巻目になります。

物語の冒頭から、昭島市で起きた一家4人を惨殺する悲惨な場面描写から物語は始まります。28年経ったその後、世田谷区祖師谷で母子三人殺害事件が発生、その被害者の一人が、地下アイドルグループの人気者<繭子>ということで、注目を浴びた事件に<姫川>班たちは捜査を開始しますが、遺体を徹底的に損傷した残虐な犯行の捜査は進展しません。

殺人現場の家に出向いた際、現場近くで不審な行動をとる男を<姫川>は目撃、その後彼はフリーのジャーナリスト<上岡>で、殺されたことを知ります。代々木署の捜査本部には、犬猿の仲の「ガンテツ」こと<勝俣健作>がいるだけに、<姫川>は捜査資料が気になりながら手が出せません。
母子三人殺害事件が進展しない中、<姫川>班は代々木署へ配置転換され、<姫川>は、祖師谷の事件の28年前にもよく似た事件が起きているのを、殺害された<上岡>は、同一犯人でアメリカ兵はないかとのメモ書きを残していました。

読者には事件の捜査と並行してアメリカ陸軍兵のベトナム戦争の後遺症で悩む<アンソニー>の犯行だと思わせる記述がありますが、事件の真相は思わぬどんでん返しで、読者の予想を覆してくれます。

12月21日には、第9巻目となる『ノワール 硝子の太陽』(光文社文庫)が刊行されていますが、来年の楽しみとして残しておきます。
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今年の読書(70)『虚夢』薬丸岳(講談社文庫)

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<桜木柴乃>の(68) 『霧(ウラル)』 、<佐々木譲>の(69) 『砂の街路樹』 はともに北海道出身の作家ということで北海道の都市を舞台にしていますが、偶然にも本書も北海道を舞台にして物語が展開しますが、著者は、兵庫県明石市の出身です。

仕事中の夫<三上孝一>を家に残し山菜の娘<留美>と公園で遊んでいた<佐和子>は、通り魔に襲われ<留美>は死亡。自らも大けがをしますが、一命は取り留めます。犯人<藤崎>は12人を死傷させましたが心神喪失状態の「総合失調症」とされ、「刑法39条」により裁判を受ける立場にはならず精神病院への入院処置に留まります。

その後<三上>と<佐和子>は離婚、作家業を目指していた<三上>は、ススキノの風俗ライターになり、<佐和子>は地元の不動産会社の社長と再婚します。

ある日<三上>の携帯電話に元妻の<佐和子>から<藤崎>を街中で見たとの連絡があり、それを契機に<佐和子>の行動がおかしくなりはじめます。

<三上>も<藤崎>を目撃し、調べてみますと精神病院から退院しているのがわかり、行動を監視し始めます。

片やピンクサロンに勤める19歳の<ゆき>の客として<藤崎>が登場、<ゆき>に付きまとう男を<藤崎>はまたしても殺害してしまいます。

大きな二つの事件が意外なところで結びつき、驚きの結末まで一気に読ませる構成で、「なるほど」とうならせる一冊でした。
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今年の読書(69)『砂の街路図』佐々木譲(小学館文庫)

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主人公<岩崎俊也>は、20年前の12歳の時に、突然父親<裕二>が姿を消し、北海道の「郡布」(架空の北海道の地方都市)の運河で酒に酔って転落死した過去を持っています。

同じ地にある法科大学の同窓である母もなくなり49日を済ませた<俊也>は、なぜ父が母に断わりもなく「郡布」に出向いたのかを知るために、北の地に出向いていきます。

父が死んだときに残されたマッチ箱の店を頼りに、真実を追い求め始めます。漕艇部に所属していた大学時代の出来事を調べ、運河の町「郡布」を歩きながら若き日の父の姿を追い求めていきます。

色々な関係者の話から、父が漕艇部に在籍していた時の不祥事が関連していることが分かり、家族にさえ隠し続けていた心の苦悩と死の真相に辿りつくのですが、いつしか<俊也>は、「郡布」の街並みに引き込まれてしまい、両親の過ごした町に住みつこうかと思い始めるのでした。
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今年の読書(68)『霧(ウラル)』桜木柴乃(小学館文庫)

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北海道江別市在住の作家らしく、『風葬』 では釧路と根室、『砂上』 では江別市、本書の物語の舞台となるのは、根室の漁港です。

主人公は<河乃辺珠生>、地元の顔役的な存在「河乃辺水産」の次女ですが15歳で家を飛び出し、20歳という年齢ながら料亭「喜楽楼」の芸者として座敷に出ています。彼女はここで<相羽重之>と知り合い相羽組組長の妻となります。

長女<智鶴>は、国会議員を目指す大旗運輸の御曹司に嫁ぎ、三女<早苗>は金貸しの杉原家の次男を養子に迎え実家を継ぐ立場です。

北方領土との政治的な社会を背景に、閉鎖的な漁村の人間関係を絡め、根室の街での女三姉妹の人生が<珠生>の視線で描かれていきます。

妾<スミ>の家で射殺される<相羽>ですが、25歳で未亡人となり相羽組を引き継いだその後の<珠生>と、残された<スミ>と<相羽>の幼子のその後の続編が読みたくなる余韻を残して読み終えました。
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今年の読書(67)『薔薇窓の闇(下)』帚木蓬生(集英社文庫)

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今年の読書(67)『薔薇窓の闇...
(上巻)は こちら

精神科医<ラグーゼ>は、<音奴>を、自分が下宿している家主が営んでいる食堂に勤めさせることにより、心を開くようになっていきます。どうやら万博への芸人一座の一人としてパリを訪れ、金銭に困った座長に売り飛ばされた屋敷から逃げ出してきた境遇が判明します。

連続失踪事件を追うパリ警視庁警視の妹<ラボリ>が、百貨店にて射殺されてしまうのですが、彼女は<ラグーゼ>とオペラ見学をした相手で、犯人は伯未亡人の使用人たちでした。

<音奴>は、<ラグーゼ>の部屋に飾ってあった写真の中に自分を買って監禁していた人物がいることにきづき、写真を趣味とする<ラグーゼ>はその人物の被写体の好みから、連続失踪事件に関連しているのではないかと疑い始めます。

1900年当時の精神科の状況、華やかなパリ万博時代のち密な街並の描写、日本文化に傾倒している<ラグーゼ>の理解、医者として娼婦館に通いながらも、娼婦に対する優しさなどをはめこみながら、スリリングな構成と暗い重たい内容だっただけにいい結末で終わり、ほっとさせられる作品でした。
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今年の読書(66)『薔薇窓の闇(上)』帚木蓬生(集英社文庫)

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今年の読書(66)『薔薇窓の闇...
著者の作品は、『エンブリオ』 や 『インターセックス』 など、医者らしく医学界を舞台とした作品が好きで、時代小説としての 『天に星』『地に花』 も秀逸でした。

本書は、著者の専門分野である35歳の精神科医<ジュリアン・ラゼーグ>を主人公に据え、1900年に開催されたパリ万博を舞台としています。

警視庁勤めの<ラゼーグ>は、犯罪者の精神鑑定を職務としていますが、ある日警察に保護された日本人らしい16・7歳の少女<音奴>を診察しますが、多くを語ろうとしません。

一方、仲の良い<ベロー>警部から、万国博を訪れた若い外国人観光客の連続失踪事件の相談を受けます。

またそのころ<ラグーゼ>自体に謎の馬車に付きまとわれ、41歳の伯爵未亡人が彼に一目留ぼれしたことが判明、自宅に訪問、深い関係に陥ります。

<音奴>の問題、若い女性の連続失踪事件、伯爵夫人との関係を残しながら、下巻へと続きます。
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今年の読書(65)『鉄の骨』池井戸潤(車講談社文庫)

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今年の読書(65)『鉄の骨』池...
本書は文庫本で解説を含め658ページあり、並の文庫本2~3冊分の分量がありますので、読書の冊数を増やすには不向きだと思い、2011年11月に文庫化されていますが未読のままでしたが、現在日曜劇場(TBS)として著者の『下町ロケット』が放送されていますので、手にしてみました。

中堅ゼネコンの「一松組」に入社して4年目の<富島平太>はある日突然、現場員から業務課への異動を命じられます。大学の建築学科を卒業し、入社以来現場を担当してきた<平太>にとって、営業を担当する業務課は正に畑違い。

着任早々、区役所への挨拶を命じられた<平太>は、公共工事の最低入札価格や指名入札業者の数に探りを入れる上司と役人とのやり取りに驚きを覚えます。その日の夜の飲み会で平太は、業務課が通称「談合課」と呼ばれる部署であること、談合がなければ建設業界は立ち行かないため談合は「必要悪」であることを聞かされる。

談合は本当に悪なのか、平太の苦悩の日々が始まる。時を同じくして、2000億円規模の地下鉄敷設という大型公共事業の情報が入ります。「一松組」は独自技術によりコスト的優位に入札金額を決めますが、建設業界ののしがらみから、「一松組」そして<平太>も談合に関わらざるを得なくなります。東京地検特捜部が水面下で談合の捜査を進める中、この大型公共事業の入札が始まります。

私生活では、<平太>は大学時代のテニスサークルで知り合った<野村萌>は「一松組」のメインバンクである「白水銀行」に勤務、お互いの恋愛感情も、業務の違いによりすれ違いが生じ<萌>は、上司の<園田>に惹かれていきます。

若い建築現場員の生き様に合わせ日本の建設業界の現実を骨格に小気味よい展開で物語は最後まで飽きさせることなく思わぬ結末を迎えますが、<平太>と<萌>のその後が気になりながら659ページを読み終えました。
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