今年の読書(71)『ルージュ 硝子の太陽』誉田哲也(光文社文庫)
12月
24日
物語の冒頭から、昭島市で起きた一家4人を惨殺する悲惨な場面描写から物語は始まります。28年経ったその後、世田谷区祖師谷で母子三人殺害事件が発生、その被害者の一人が、地下アイドルグループの人気者<繭子>ということで、注目を浴びた事件に<姫川>班たちは捜査を開始しますが、遺体を徹底的に損傷した残虐な犯行の捜査は進展しません。
殺人現場の家に出向いた際、現場近くで不審な行動をとる男を<姫川>は目撃、その後彼はフリーのジャーナリスト<上岡>で、殺されたことを知ります。代々木署の捜査本部には、犬猿の仲の「ガンテツ」こと<勝俣健作>がいるだけに、<姫川>は捜査資料が気になりながら手が出せません。
母子三人殺害事件が進展しない中、<姫川>班は代々木署へ配置転換され、<姫川>は、祖師谷の事件の28年前にもよく似た事件が起きているのを、殺害された<上岡>は、同一犯人でアメリカ兵はないかとのメモ書きを残していました。
読者には事件の捜査と並行してアメリカ陸軍兵のベトナム戦争の後遺症で悩む<アンソニー>の犯行だと思わせる記述がありますが、事件の真相は思わぬどんでん返しで、読者の予想を覆してくれます。
12月21日には、第9巻目となる『ノワール 硝子の太陽』(光文社文庫)が刊行されていますが、来年の楽しみとして残しておきます。