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神戸:ファルコンの散歩メモ

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今年の読書(15)『犬の報酬』堂場瞬一(中公文庫)

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今年の読書(15)『犬の報酬』...
<堂場瞬一>の企業小説『犬の報酬』は、自動車企業の「自動運転開発」を絡めた物語として2017年3月に刊行され、2022年1月25日に文庫本として発売されています。

大手自動車メーカーの「タチ自動車」は、自動運転の開発を進める実験走行中に衝突事故を起こします。所轄の警察署は人身事故でもなく些細な物損事故ということで公表しませんでしたが、この事件の記事が東日新聞に掲載されたことから物語は展開していきます。

自動車メーカーの事故をめぐり、情報を隠蔽しようとするメーカーと、暴こうとする新聞記者の取材を軸に構成されています。

事故の情報がどこから漏れたのか、総務課の「伊佐美祐志」と「井本茉莉花」は社長の指示で秘密裏に社内調査を進めていきますが、調査対象者が社内で自殺を行い、その後の実験走行中に、人身事故が起こり女子小学生が亡くなります。

東日新聞の「畠中孝介」は、ネタ元であるタチ自動車内部に精通する「X」を通して社内の情報を得てさらなるスクープを求めて動き回ります。

ネタ元「X]は、別のメーカーの自動運転開発と関係を持つ大学の恩師にアドヴァイスを求めたことで、開発から外され、意に沿わない部署に異動させられた社員で、高校の同級生だった記者のネタ元になっていました。表題の「犬」の意味がここで繋がります。その恩師のゼミの教え子である国交省審議官が、国策として陰で糸を引く、という構図でした。
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今年の読書(14)『看守の流儀』城山真一(宝島社文庫)

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今年の読書(14)『看守の流儀...
まだ3月ですが、初めて読む<城山真一>の『看守の流儀』は、おそらく今年の読書のベスト1.2だとおもえるほど、刑務所を舞台に描く5篇の短編連作として重厚な人間ドラマの構成は見事で、感涙する描写もある傑作でした。

<横山秀夫>の「いやぁ、これは久しぶりのドストライクだった。」の言葉が読み終えると「なるほど」とよく分かるのですが、細かいところはネタバレになりますので、ぜひ手に取って読んでほしい一冊です。

物語の舞台は、地方都市金沢にある加賀刑務所、そこは更生の最後の砦ですが、上級試験に合格している顔に傷のあるキャリアの刑務官「火石司」が着任し、刑務所内で起こるシャバ以上に濃厚な人間関係が渦巻く五つの事件を「火石マジック」といわれるさばきで解決、努めている刑務官たちの矜持と葛藤がぶつかり合う連作ミステリー仕立てになっています。

第一話『ヨンピン』
模範囚として服役期間の四分の一を残して仮出所した「源田」が、更正施設から姿を消してしまいます。副看守長の「宗片」は行方を調べ始めます。
第二話『Gとれ』
暴力団が売りさばいていたのは、加賀刑務所が印刷を請け負っている大学の入試問題でした。看守部長の「及川」は、入手経路と犯人の特定を命じられます。
第三話『レッドゾーン』
総務部で管理していた受刑者の健康診断記録とレントゲンフィルムが消失してしまいます。誤廃棄か盗難か、総務部を恨む処遇部のしわざなのか。
第四話『ガラ受け』
すい臓がんで倒れた受刑者「貝原」は余命3カ月の診断。刑務所内での療養を希望する彼を説得し、刑務官の「西門」は刑の執行停止を求め、身受け人が必要ということで「貝原」の離婚した妻と娘に会いに出向きます。
第五話『お礼参り』
再犯リスクの高さから、加賀刑務所は警察と共同で、満期出所した放火犯「牛切」に再犯の可能性があるということで監視をつけます。しかし「牛切」は監視に気が付き姿をくらませてしまいます。そこにはある策略が隠されていました。

文庫本の帯にあります「驚きの結末!」が書けないのが残念ですが、おすすめの一冊です。
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今年の読書(13)『ボーダーズ』堂場瞬一(集英社文庫)

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著者<堂場瞬一>には、多くのシリーズがありますが、本書『ボーダーズ』は「検証捜査シリーズ」の〈『検証捜査』『複合捜査』『共犯捜査』『時限捜査』『凍結捜査』『共謀捜査』〉の全6冊に続く、警視庁特殊事件対策班(SCU)の5人を主人公に据えた新シリーズの登場です。

東京新橋で銀行立て籠り事件が発生します。男性客「藤岡」が刺殺された後、犯人は逮捕されたのですが、被害者は40年前に成田闘争のデモで機動隊員を殺して手配され、公安に追われている男「中内伸治」でした。

その捜査に警視庁特殊事件対策班(SCU)が動き出します。(SCU)は犯罪が多様化する中、あらゆる事件の現場に介入できることを許された警視総監直轄の組織でチームは個性ある5人が集められています。

公安出身のキャップ「結城」から被害者の「藤岡」を調べるよう指示された「八神」は、犯人、被害者、公安が複雑に絡む事件の真相に、特殊能力を個々に持つメンバーの協力を得て挑みます。才能豊かな刑事チームの活躍をを描く新シリーズとして、チーム5人の個性が良く描かれた第一作目で今後の展開が楽しみなシリーズになりそうです。
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今年の読書(12)『蝶のゆくへ』葉室麟(集英社文庫)

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今年の読書(12)『蝶のゆくへ...
著者<葉室麟>は、2012年『蜩ノ記』で第146回直木三十五賞を受賞、江戸時代を舞台に武士の生き様や矜持を描きながら市井の敗者や弱者の視点を大切にした歴史時代小説を多く残しています。

2017年(平成29年)12月23日66歳で没後、江戸時代から明治へと時代が変わる世相を描いた『約束』の原稿が見つかり刊行されていますが、本書も明治から大正期を背景とし、著者の没後の2018年8月に刊行、2021年6月25日に文庫本として発売されています。

旧仙台藩士の三女として生まれた「星りょう」(後の相馬黒光)。その利発さから「アンビシャスガール」と呼ばれた「りょう」は、自分らしく生きたい、何事かをなしたいと願い、18歳で上京、明治28年に東京の明治女学校へ入学します。女子教育向上を掲げる校長の「巌本善治」は「蝶として飛び立つあなた方を見守るのがわたしの役目」と、「りょう」に語りかけます。

明治女学校の生徒「斎藤冬子」と教師「北村透谷」の間に生まれた悲しい恋物語。夫「国木田独歩」のもとから逃げた「りょう」の従妹「佐々城信子」が辿った道のり。義父の「勝海舟」との間に男女の関係を越えた深い愛と信頼を交わした英語教師の「クララ・ホイットニー」。校長「巌本」の妻であり、病を抱えながらも翻訳家・作家として活躍した「若松賤子」。「賤子」に憧れ、その病床へ見舞いに訪れた「樋口一葉」。

「りょう」が若き日に出会った、新しい生き方を生きようとするそれぞれの明治の女性たちの生きざまを通して、その希望と挫折、喜びと葛藤が胸に迫る、明治文学史ともいえる登場人物たちが躍動する歴史長編です。

最後は「りょう」自らの女性としての生き方の運命の結実を描き切っています。
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今年の読書(11)『護られなかった者たちへ』中山千里(宝島社文庫)

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今年の読書(11)『護られなか...
本書は、2021年10月1日より公開されました<瀬々敬久>監督の『護られなかった者たちへ』の原作で、2018年1月にNHK出版により単行本が刊行され、加筆修正のうえ2021年8月4日に文庫本として発売されています。

仙台市内で誰もが口を揃えて「人格者」だと言う、仙台市の福祉保険事務所課長「三雲忠勝」が、身体を拘束された餓死死体で発見されます。周辺捜査では「三雲」は誰からも恨みを買うような人物ではなく、怨恨が理由とは考えにくく、物盗りによる犯行の可能性も低く、捜査は暗礁に乗り上げてしまいますが、県警捜査一課の刑事「笘篠誠一郎」は、残酷な殺害方法から怨恨の線が捨てきれません。

続いて、人格者とまで言われている県会議員の「城之内猛瑠」が連続して「餓死死体」として発見されます。捜査の過程で「三雲」と「城之内」は塩釜福祉事務所での同僚だったことが判明、その過程で事件の数日前に、塩画家福祉事務所で暴行事件を起こし事務所に放火した「利根勝久」が仮出所しているのが分かります。

「笘篠」は必要に「利根」の周辺を捜査していきますが、殺害された上司の「上崎」が次なる標的だとにらみ、「利根」を追い詰めていきます。

生活保護問題に絡めたリアルな現実問題の社会福祉と人々の正義感が交差したときに見えるものは何か、著者<中山千里>の巧みな構成に、思わず「あっ!!」と真犯人が浮かび上がる文章の巧みさと、伏線の巧みさにも驚く一冊でした。
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今年の読書(9)『神林先生の浅草案内(未完)』神林桂一(プレジデント社)

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今年の読書(9)『神林先生の浅...
本書『神林先生の浅草案内(未完)』の著者<神林桂一>さんは、都立浅草高等学校の教員生活43年の国語教師で、食べ歩き、飲み歩き歴46年になるといいます。

<神林桂一>さんは、一元的な情報に頼らず、自転車でランチに繰り出しては新店開業の気配に敏感に反応し、酒場の店主や客との会話から生きたネタを仕入れ、実際に訪ねて、食べて、飲むことで、情報を蓄積していきます。

職場の若い先生や同僚たちに、浅草の深き食文化を知ってもらうべく、愛機のワープロ「文豪」のキーボードを叩き、わら半紙に刷り出した『ミニコミ』を発行。「ランキング」と謳ってはいるものの、載っているのは、自分の愛する偏愛店ばかりでどの店も違って、どの店もいいのです。

この本は、37号にわたって発行した『ミニコミ』より「浅草ランチ・ベスト100」「ひとり飲みの店ランキング」を元に、<神林桂>先生が足繁く通った店を、きれいな写真と共に紹介しています。

これからますます意欲的に飲んで、食べて、さらには情報発信を、と意気込んでいた矢先、神林先生は突然、この世を去りました。「あとがき」は、奥様が書かれています。
『神林先生の浅草案内(未完)』は、更新されることのない途中経過の記録であり、店へのラブレターであり、浅草の食文化が垣間見られる教科書の一遍であり、観光客の知らない浅草を知る案内でもあります。
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今年の読書(8)『稼ぎ屋稼業』南英男(実業之日本社文庫)

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今年の読書(8)『稼ぎ屋稼業』...
著者<南英男>の作品としては、刑事を主人公とした作品を多く読んできていますが、本書『稼ぎ屋稼業』は、38歳にして着ぐるみ役者の「成瀬和樹」と72歳のゴーストライター「磯村暁」のふたりが織りなす裏稼業のクライムサスペンスとして、2002年7月に刊行され、2021年12月15日に本書の文庫本として発売されています。

元スタントマンでけがのため着ぐるみ役者をしている「成瀬」は、怪獣映画の撮影で監督と喧嘩し降板、恋人「響子」にも見放されます。同じくゴーストライターの「磯村」もトラブルで仕事を干されていました。

そんな失意の二人に便利屋の元刑事の「片岡」が、デリヘルをしていた娘「麻美」の盗撮動画を取り返してほしいという会社社長「矢吹」からの探偵仕事を持ちかけられます。

「矢吹」は、娘の盗撮動画をネタに恐喝を受けているということで、脅迫者の特定と動画データの回収を依頼され、「成瀬」と「磯村」は調査を始めますが、思わぬトラブルがふたりを巻き込んでいきます。
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今年の読書(7)『鬼嵐』仙川環(小学館文庫)

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今年の読書(7)『鬼嵐』仙川環...
『感染』で第1回小学館文庫小説賞を受賞し、医療ミステリーの第一人者として、『治験』『細胞異植』などを詠んできています<仙川環>の『鬼嵐』です。2018年に単行本として刊行され、2021年12月12日に文庫本として発行されています。

女医の「及川夏未」は、東京の大学病院での感染症研究者生活の軋轢から挫折し、北関東の父が経営するクリニックがある地元に戻ります。過疎化が進み、農業では外国人労働者の増加が目立つ地元では、町おこしの目玉にと、中国産の羊(シャオヤンカイ)を地元産の食肉として商品化しようとする動きが進んでいました。

そんな中、クリニックの患者や看護師が出血を伴う謎の感染死が連続して起こります。

感染病の疑いを感じた「夏未」独自に調査を始めるのですが、他県でも発病が確認され、先輩医師の「友永雄介」が国の調査チームの代表になり、「夏未」は助手としてチームに参加することになりますが、調査は思うように進まず妨害する出来事が次々に起こります。

感染源は何か、そしてその裏側には何があるのか。読み応え満載の社会派医療ミステリーとして最後まで面白く読めた一冊でした。
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神戸ご当地(1404)今年の読書(6)『スマバレイの錆びれた時計塔』ゴンドーマサキ(石田絵本)

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神戸ご当地(1404)今年の読...
神戸舞台にした絵本『スマバレイの錆びれた時計塔』(原作:<ゴンドーマサキ>・挿し絵:<hare>)が、1月26日より一般発売されています

絵本は、神戸の須磨・塩屋エリアをモデルにした小さな架空の町「スマバレイ」を舞台としています。町の象徴ともいえる時計塔は、時代の移り変わりとともに厄介なものになっていました。「時計塔の取り壊し」を主導する父親を誇らしく思う主人公の「ケイト」でしたが、クラスメイトの「ジェニファー」から時計塔が心の支えになっている人たちの存在に気付かされます。しかし、予定通りに時計塔は撤去され、「スマバレイ」から鐘の音が消え、ひとりの老婆が亡くなったことで、「ケイト」はクラスメイトたちと共に時計塔の代わりに「時を知らせる行動」を決行します。

ライターやコンテンツディレクターとして活動する神戸出身の<ゴンドーマサキ>さんが、2018(平成30)年に書いた短編小説を原作としています。挿絵はイラストレーターの<hare>さんが担当しています。

絵本の製作費は昨年9月からクラウドファンディングで支援者を集め、1カ月間で目標額の195%を達成しました。「絵本の世界に看板を出せる券」が完売するなど、販売前から関心があつまっていた絵本です。

「神戸カレー食堂 ラージクマール」(兵庫県神戸市中央区北長狭通3丁目2-16・月曜定休日)では、絵本に登場する「ヴィオラのカレー」を再現。現在店内の壁面を利用した原画展が、2月18日(金)まで開催されています。
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今年の読書(5)『ゆうれい居酒屋』山口恵以子(文春文庫)

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今年の読書(5)『ゆうれい居酒...
呑み助さんとしては「居酒屋」というタイトルで手にしました<山口恵以子>の『ゆうれい居酒屋』です。文庫書下ろしとして、2021年12月10日に発行されています。

著者の<山口恵以子>さんは、44歳のときに丸の内新聞事業協同組合の社員食堂に勤務(役職は調理主任)。新鷹会会員となり小説を書き、2007年、50歳のときに『邪剣始末』で作家デビュー。2013年『月下上海』で第20回松本清張賞を受賞しています。調理経験を活かし『婚活食堂』シリーズや『食堂のおばちゃん』シリーズなどの人気グルメシリーズがあります。

本書は、新小岩井駅南側の商店街の路地裏にある居酒屋「米屋(よねや)」を舞台としています。10年前に釣り好きの夫を亡くした後、女将の「米田秋穗」が一人で守ってきたカウンター七席の小さな居酒屋に、赤ちょうちんに惹かれて悩めるお客がやってきますが、「秋穗」の簡単な作り置きの総菜を味わいながら、女将さんとの会話を通して、偉大な料理人を父に持つ若者、女優として壁に当たっている女性、大学の研究室の師弟関係で悩む研究生、グルメレポーターの将来性に悩むタレントなど、食べて飲みながらに悩み事を解決してゆく短編が5話収められています。

彼らが後日お店に出向きますとその場所には「米屋」は見当たらず、近くのお店に入り尋ねると、「米屋」は30年前に女将さんがなくなってお店を閉めたことを知らされます。

小説のあとには、お店で文中に登場した簡単な肴のレシピが掲載されています。

赤ちょうちんファンの私には、ほのぼのとした居酒屋の雰囲気がよく伝わり、東京系らしく「ホッピー」などが登場し、面白く読み終えました。他のグルメシリーズと同様に続編を期待しています。
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