前回読みました 『TOKYO BLAKOUT』 は、いかに国民が電気が使えて当たり前であると錯覚しているのかを、東日本大震災以前に警告していたことに驚きながら読み終えました。
今回は東京の各地で風船を用いた爆発が起こり、「十二神将」と名乗る爆弾テロリストが名乗りを上げます。
各企業を狙う爆弾事件と並行して、神戸三宮でスポーツジムを経営する<田代>の所に、ペルーではテロ対策本部捜査官の<ミゲル>が、従兄弟の<サンチョ>と友人の<ファン>が日本で行方不明になっているとのことで来日、<田代>と協力して<サンチョ>たちの行方を追います。
一見関係ない事件が平行しているように描かれていますが、この二つの事件が結びつき、日本の若者の置かれている現状とペルーの社会状況を深刻にえぐりながら、現代の社会に対しての問題定義を感じさせる一冊でした。
1973(昭和48)年から『ビッグコミックオリジナル』に連載されていた<水島新司>さんの漫画<あぶさん>が、2月5日号の(976話)をもって最終回を迎えました。
呑ん兵衛の<あぶさん>こと<景浦安武>は、南海ホークス時代から代打専門の選手として、ダイエーホークス、ソフトバンクと球団名が変わるなか年齢を重ねてきており、そろそろ引退の時期だと心配しておりました。
酒が大好きな呑ん兵衛として、打席に入る前にバットに「酒しぶき」を振りかける儀式は、酒豪の打者として面目躍如の場面でした。
漫画家<水島新司>さんは、本来は阪神タイガースファンだと聞いていますが、41年間に渡り、毎回楽しみながら読まれた方も多いはずです。
次作としては、ファンである阪神タイガース球団を舞台に、新たなる漫画を描いていただきたいものです。
16歳の高校生<白鷹黒彦>と、「世界最高の知恵」と呼ばれる天才<犬神清秀>とその妹の14歳の中学生<犬神果菜(はてな)>を中心とする事件簿シリーズの第3巻目です。
携帯電話も通じない人里離れた「露壜(ろびん)村」に、<清秀>から<果菜>の所に村に来るようにとのハガキが届き、兄と合流すべく<黒彦>と二人で出掛けるます。
村に付いた当日、村の長である<綾樫家>の当主<久作>が急死、お寺に向かう葬列の場面に出会い、<果菜>は<久作>の未亡人<ウタ>から生き神様だと見初められ、<綾樫家>に泊まることになります。
村の旧家として君臨する<綾樫家>ですが、古い因習が絡む中、当主の跡目争いなのか、長男・二男等が次々に惨殺死体で発見されていきます。
密室殺人ではありませんが、閉ざされた旧家の屋敷内中で起こる事件は読者に家族の犯行を推理させますが、「露壜村」全体を包み込むどんでん返しの結末が待ち受けている554ページでした。
トンガ王国にゴルフ場開発のため、スポンサーである「泰宝グループ」会長の長男<野々村>を現地視察させるために「パラダイス土地開発」の社員4名が、ウララ航空で別の島にゴルフに出かけた際、悪天候のために遭難、無人島に流されるところから物語は始まります。
無人島を舞台にした小説には、 『東京島』 <桐野夏生>が印象的でしたが、これまたどのような結末になるのかと、期待して読み始めました。
小さなプロペラ機には、新婚旅行中の二人、戦友の慰霊の旅に出た元日本兵の84歳の老人とその孫の小学生<仁太>、自然環境を守ろうとするテロリスト「マリガーディアン」の<サイモン>、そして犬<カーゴ>が同乗していました。
10人と一匹の犬が、文明的なモノが何もない中、「生きて帰りたい」という気持ちを持ち続けながらの共同生活が始まります。
無人島においても会社組織の上下関係をあからさまに誇示する上司のもと、平社員の<塚本賢司>は走り回されますが、それぞれの登場人物たちの性格付けがよく表されており、最後の一ページ迄どうなるのかと、ワクワクしながらサバイバル小説が楽しめました。
読み始めはのめり込むような内容ではないかなと感じたのですが、最後のページを読み終えたとき、「これはとてもいい一冊に当たった」というのが、正直な感想です。
主人公<石田徹子>は弁護士で、遠戚にあたる<小谷夏子>は7歳の時に嫌な思い出を持つ相手で、弁護士になりたての頃、結婚詐欺師としての<夏子>のトラブルに関与し無事に解決します。
第1章から第8章まで、この<夏子>のトラブルを扱っており、結婚詐欺師・絵画の取引・旅館の仲居・ペット産業・お見合いサークル等、様々なトラブルを起こしながら日本各地を転々としていきますが、<夏子>自身は登場することなく、あくまで<夏子>と接したことのある人物たちの人物評でしか語られません。
<夏子>の男に取りいるしたたかな性格と正反対の<徹子>ですが、いつしか読み手は弁護士としての<徹子>の歩んできた姿勢に共感を覚え、ラストは涙してしまう感動場面で終わります。
<警視庁公安部・青山望>シリーズとして、 『完全黙秘』 ・ 『政界汚染』 に次いで三巻目になる『報復連鎖』です。
青森県大間から築地市場に届いたマグロの木箱の中のひとつに、氷詰めされた死体が発見されます。
麻布署の警備課長に移動した<青山>は、同期の築地署刑事課長の<龍>と協力して情報を集めますが、元暴走族グループの二つが浮かび上がり、チャイニーズマフイアとの抗争が原因だと分かり始めます。
主人公<青山>のするどい観察眼と情報分析を主軸に、中国の社会状況を絡み合わせ、暴対法の盲点である「半グレ」と呼ばれる暴走族上がりの現状を横線として、大きなスケール展開が楽しめました。
今回は同期の4人中、<大和田>が出てきませんでしたが、皆管理職警部となり、六ヶ月後には警視に昇進しています。
職責の肩書きが上がると共に、重要なポストに付きますので、新たなる事件の展開が期待できるシリーズになりそうです。
関東を中心とした暴力団「新和平連合」の会長<新田>暗殺に絡み、東京駅構内で、報復の乱射事件が起こり多くの市民が巻き添えの犠牲になりました。
<新田>亡きあと、直系の二次団体「形勝会」の会長<武田真>側に多くの傘下団体が結集し始めたのを、会長暗殺の指示した「新和平連合」の会長代理<品田>や、暗殺を画索した「玉城組」の<杉田>組長たちは、<武田>の暗殺のためにロシアマフィアの暗殺者を雇い入れます。
暴力団せん滅のため、警視庁の<青山>は、元警察官の<神木剛>をリーダーとする超法規的処置の極秘グループを結成、「新和平連合」解体に向けて動き出します。
暴力団体が数多く登場しますが、裏社会としての縦・横の古い体質の中での抗争が楽しめた一冊でした。
著者の前作 『償い』 に次ぐ(幻冬舎文庫)として2冊目です。
アメリカに渡り生活苦のために自分の卵子を売った<朝倉木綿子>は、自分が癌に罹り子供の産めない体になったとき、16歳になろうかという子供を探偵により見つけ出します。
おりしも見つけ出した<柏木恵哉>は、一家4人殺害事件の容疑者として警察が出向いたときに窓から逃げ出し、マンションの屋上から飛び降り自殺をしてしまいます。
<木綿子>は<恵哉>が真犯人とは思えず、育ての親<絹恵>から交友関係の情報を聞きだし、同じく探偵を雇い自らも事件の真相を探り始めます。
現代医学のもたらす卵子や精子の提供者と、「氏より育ち」といわれる育ての親の問題を、ミステリー仕立てでの問題提議だと感じさせる一冊でした。
母親を父親に殺され、その父親を事故死に見せかけて殺した大学生の<種田静馬>は、以前に訪れた山奥の栖刈村で自殺を図ろうと出向くのですが、そこで少女の首切り事件と遭遇してしまいます。
同じ温泉宿に泊まっていたのは、名探偵の誉れ高い<御陵(みささぎ)みかげ>の娘で、母と同じ探偵を目指す修業中の隻眼の少女とその父親でした。
殺された少女<春菜>は、千年以上昔、村に現れる龍を退治したとされる<スガル>の直系で、琴折家の三つ子のひとりの長女でした。
女系家族を中心とした琴折家を舞台として<スガル>伝説が絡み合わうなか、<みかげ>は<静馬>を助手として捜査に乗り出すのですが、二女・三女と<スガル>を継がなければいけない子供たちが殺され、また<みかげ>の父親も事件に巻き込まれ殺されてしまいます。
物語は18年の時を経て二部構成を取り、推理小説ファンなら「こうなるのだろうと」と予測をしている通りの展開になります。「なんだやはり・・・」となるのですが、二転三転のおもわぬどんでん返しが待ち受けています。
日本推理作家協会賞と本格ミステリ大賞をダブル受賞した構成力、なるほど思わせる500ページでした。
文字制限のため略称で(MF)と書きましたが、(メディアファクトリー新書)のことです。
進化生物学者として、<アリ>の世界にその社会性や巣の意義、遺伝的な問題を分かり易く表しており、昆虫好きの方以外にも人間社会と比べるテキストとして面白く読める一冊だとおもいます。
観察対象の<アリ>だけでも、「ハキリアリ」・「キイロヒメアリ」・「シワクシケアリ」・「クビレハリアイ」等何種類にもわたり、単なる<アリ>というひとくくり出来ない世界が楽しめました。
それぞれの種による<女王アリ>や<ワーカー(働きアリ)>、<兵隊アリ>たちの特性が面白く、「なるほど」と驚きながら読み終えました。
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