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神戸:ファルコンの散歩メモ

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今年の読書(70)『蟻の階段』麻見和史(講談社文庫)

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副題に「警視庁殺人分析班」とあるように、捜査第一課を中心に据えた推理小説です。

主人公<如月塔子>は現在26歳、身長152.8センチで警視庁の採用基準(154センチ以上)に足りませんが、刑事だった亡き父の後を継ぎ高卒で入庁、捜査一課に配属されています。

刺殺死体が発見されますが、死体の周りには<頭蓋骨・白い花・掛け時計・スープ皿>が囲むように置かれ、捜査の途中で『ヴァニタス画』と呼ばれる手法が模倣されているとわかるのですが、よく似た第二の殺人事件が起こってしまいます。

バブル期の絵画投資ブームを背景に、<如月>の教育係<鷹野>をはじめ、退職した刑事<加賀見>等が絡んで、新米刑事<如月>の成長過程が楽しめる一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(69)『グッバイ・ヒーロー』横関大(講談社文庫)

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今年の読書(69)『グッバイ・...
主人公の<伊庭亮太>は25歳ながら、宅配ピザのアルバイト仲間たちと、<チキン・ランナウェイ>というロックバンド4人組のリーダーです。

あるとき、拳銃を持った立てこもり犯がいるカラオケスナックにピザを届けるところから、人質にされているおっさん<鈴木二郎>と関わり合い、世話好きの<亮太>は彼の依頼で、わけありの母子家庭のところにピザを届ける仕事を請け負ってしまいます。

ロックバンドでのデビューを夢見なるお人よしともいえる<亮太>と、「運び屋ジロー」と異名を持つおっさんの過去とが絡み合い、こっけいさを感じながらも息もつかせぬ展開で読者を最後まであきさせません。

最後はおっさんのホロットさせられる人間味が感じ取れ、プロローグから始まる伏線の素晴らしさに、乱歩賞受賞作の 『再会』 以上の面白さで楽しめました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(68)『極北』マーセル・セロー:村上春樹訳(中央公論社)

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今年の読書(68)『極北』マー...
舞台はアメリカからロシア移住してきた住人が住んでいた(村)を舞台としていますが、年代は定かに書かれていません。
背景には、放射能汚染で地球が廃墟となり、シベリアの「極北」に人間がポツリポツリと生存している近未来小説です。

女主人公<メイクピース>は、一人で(村)に住み、自らを警察官だと自覚して日課としてパトロールをしていますが、ある日<ピング>と名のる妊娠した女の子と出会い、共同生活が始まります。穏やかな生活も出産をすることなく<ピング>は病死、、自分も自殺をしようとした時に空を飛ぶ飛行機を発見して、まだ地球のどこかに文明が残っているんだと信じて旅に出かけるのですが・・・。

ツンドラ地帯の過酷な自然環境を舞台に、人間が生き抜いていく過酷さを感じさせながら、<メイピークス>の5年間の人生が語られていきます。壮大な叙事詩を読んでいるように語られ、最後に一抹の希望の灯りが見いだせる終わり方でした。

奇しくもこの作品は、2011年3月に起こった福島の原発事故以前に書かれた作品で、単なるフイクションとして読み流すことができない示唆にあふれています。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(67)『アナーキー・イン・ザ・JP』中森明夫(新潮文庫)

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これは奇想天外な物語でしたが、近代日本史の再勉強をしているようで楽しめました。

主人公は、パンクロックにはまっている17歳の高校生<シンジ>ですが、パンクの王様<シド・ビシャス>のお告げを聞こうとイタコのばあさんの祈祷所に出向くのですが、間違えてアナキストの<大杉栄>の霊を呼び出してしまい、<シンジ>の脳内に住みついてしまいす。

没(1923年9月16日)後90年を経た日本において、<大杉栄>と<シンジ>の取る行動が何とも絶妙な二人三脚で、破天荒な物語が繰り広げられます。

<幸徳秋水・菅野須賀子・神近市子・甘粕大尉>など、<大杉栄>の身近な登場人物名が多数登場、史実に基づいた歴史物としての裏付けもあり、高校生の痛快青春物語として、これはなかなかの力作でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(66)『FLY TRAP(フライ・トラップ)』高嶋哲夫(文春文庫)

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今年の読書(66)『FLY T...
O県警生活安全部には3つの課があり、その中の生活安全企画課内に設置された「JWAT(ジェイワット)」に所属する女性刑事<小松原雪野>巡査部長が、主人公です。

管轄地域で、発生していた若者による<オヤジ狩り>のひったくり事件が発生、徐々に悪質になり傷害事件にまで発展、捜査一課の担当と引き継がれていきますが、少年事件ということで<小松原>はあくまで事件に関与して捜査を進めていきます。

そんな折、夜の公園で保護した少年<隼人>の証言に疑問を抱き、なかの良い三人組みが浮かび上がってきますが、やがて覚醒剤の事件へと発展、彼らが関与しているのかと物語は進んでいきます。

少年それぞれの家庭環境を背景に、男勝りな女性刑事が活躍する警察小説が多いなか、過激な行動で犯人と敵対するわけではありませんが、思いやりの心を持つ女性刑事の活躍が楽しめた一冊です。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(65)『オー!ファーザー』伊坂幸太郎(新潮文庫)

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今年の読書(65)『オー!ファ...
来る5月24日(土)、ワーナー・ブラザース配給で劇場公開されます同名映画の原作です。

4股をかけていた母親<知代>(ラストだけ登場します)と、その相手である<鷹・悟・葵・勲>の4人が、父親として同居を余儀なくされている高校2年生の<由紀夫>が主人公(映画では<岡田将生>)です。

ギャンブル好きの<鷹>とドッグレースを見物に出かけた際、鞄のすり替え事件を目撃したことから、県知事選挙に絡む事件に巻き込まれてしまい、愛する息子を救い出すために4人の父親たちの姿がコミカルなタッチで描かれています。

文頭の同級生の<多恵子>とのやり取りや、野球部員の登校拒否問題、カツアゲなど学園ものかとおもわせる書き出しで、「これがミステリーなのかなぁ~」と感じながら読み進めるなか、<由紀夫>の周りで次々と事件が起こります。
何気なく用意周到にはぐれめぐらされたこれらの出来事が、後半一気に絡みあい、さすが<伊坂ワールド>だと思わせる構成で、粋な会話と共に面白く読み終えることができました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(64)新宿鮫Ⅹ『絆回廊』大沢在昌(光文社)

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<新宿鮫>シリーズも、1作目の『新宿鮫』(1990年:光文社カッパ・ノベルス)からはや10作目になっています。
1作目から8作目までは、(光文社)から「カッパ・ノベルス」の体裁での発売でしたが、9作目の『狼花』と本書『絆回廊』は、根強い人気があるのでしょうか単行本での発行です。

キャリア組でありながら警察組織での出世にも関心が無く、警察の内部抗争に巻き込まれてはぐれ状態の立場を貫いている<鮫島>警部が主人公で、自分流の捜査方法で確実に事件を解決していく姿は、全編を通じて変わりません。

恋人として12歳年下のロックバンドのボーカル<青木昌>がいますが、本書ではバンドのメンバーが麻薬使用で逮捕、警察の面子のために<鮫島>とは別れたたこととして本書は終わっていますが、この後の展開は次作まで待たなければいけません。
一匹狼の<鮫島>の理解者である上司の<桜井>は、昔の事件がらみで本書で殉職してしまいます。

20数年ぶりに刑務所を出てきた男を中心に物語は始まりますが、この男を待ち続けていたけなげな<語り手>のどんでん返しが以外で、楽しめました。
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今年の読書(63-2)『ライアンの代価3&4』トム・クランシー(新潮文庫)

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今年の読書(63-2)『ライア...
表向きは投資会社であるながら、実態は対テロ対策の秘密組織の「ザ・キャンパス」ですが、メンバーの<ジョン・クラーク>は、9・11の首謀者<アミール>の捕獲に対して違法な拉致をしたことにより、FBIから指名手配を受けてしまいます。

きな臭い情報で、パキスタンに潜入した「ザ・キャンパス」の<ドリスコル>はテロ組織に捕虜となり、ドバイではパキスタンとインドの全面戦争をもくろむ<リアズ・レハン>が不審な動きをみせ<ザ・キャンパス>のメンバーは息つく暇なく、活動を余儀なくされてしまいます。

並行してインドでは高速道路でテロ行為が発生、パキスンタンでは、核爆弾が輸送中に強奪され、ロシアの「コスモス宇宙飛行社」のシンパ<ゲオルギー>は衛星打ち上げのロケットに核弾頭を載せ、モスクワを狙ってイスラム国家の再興を狙うのですが・・・。

全4冊の『ライアンの代価』ですが、限られた文字数では細かい内容が紹介できないのが残念なのですが、次作につながる終わり方で、これまた続編が楽しみなシリーズです。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(63-1)『ライアンの代価1&2』トム・クランシー(新潮文庫)

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今年の読書(63-1)『ライア...
前作を引き継ぐ形で物語は始まりますが、単独の小説として十分に楽しめる内容になっています。

9・11のテロの黒幕<アミール>を捕獲して、FBI管轄のもとフォローレンス連邦刑務所に入獄させた<ジャック・ライアン>は、再度大統領を目指して現大統領<エドワード>と11月6日に行われる大統領選挙の選挙活動に精力を注いでいます。

現大統領と対テロ政策が対立している中、民間の秘密機関<ザ・キャンパス>は、要警戒テロリストたちがフランスに結集している情報を得て、急きょ奇襲作戦で問題を解決、誰にも知られることなくアメリカに戻ってきます。

大統領選挙の流れを主軸に据え、パキスタン・ロシア・インドを舞台に暗躍する各種諜報機関とテロ集団の名称がこれでもかと入り乱れながら、読者を後半の(3&4)へと期待を抱かせるように誘い込ませるのは、さすがインテリジェンスの大御所です。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(62)『汝、隣人を愛せよ』福澤徹三(徳間文庫)

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今年の読書(62)『汝、隣人を...
大学講師の<真壁弘平>は、新しく購入したマンションに移り住んで間もなく、「しずかにしろ!」というクレームが書かれた手紙を受け取ります。

息子の<智也>のゲーム音かもしれず注意していたのですが、嫌がらせはエスカレートしてゆき、玄関の前に鳩の死骸などが置かれ、同じマンションの住人<釘宮勝江>を犯人だと決めつけますが、確たる証拠はありません。

相次ぐ隣人トラブルの最中にもかかわらず、自らも大学を解雇されてしまい、不安定な日常生活の中、8年前にマンションで起こった自殺事件が浮かび上がります。
<真壁>と同じマンションの新任理事でありジャーナリストの<阿久津>は、この自殺事件を調査中に、自殺と判定される不審死で無くなります。

同じひとつの屋根の下に住むマンションの住民同士のトラブルを縦軸として、引きこもりの<智也>との親子関係が絡み、中年の悲哀と家庭環境が描かれた作品で、複雑な人間模様が楽しめました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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