今年の読書(28・29)『天路の旅人(上・下)』沢木幸太郎(新潮文庫)
6月
6日
本書『天路の旅人』は、2022年10月に単行本刊行され、2025年5月1日に文庫本(上・下)として発売されています。
第二次世界大戦末期、敵国の中国大陸の奥地まで密偵として潜入した若き日本人がいました。著者は、この日本人<西川一三>に興味を抱き、本人へのインタビューを繰り返し、8年にわたり中国北部からインドまで果てしなく長い路を歩み続けた男の話を聞き取ります。
満鉄に勤めるも高給を捨て、「興亜義塾」生として学びますが、途中退学するも、未知なる中国奥地の世界への好奇心に突き動かされた男は日本の密偵としてラマ僧に扮し、極寒の雪道、延々と続く砂漠、幾重もの峠、匪賊の襲撃や飢えを乗り越えていきます。
対談後、著作『秘境西蔵八年の潜行』の3000枚を超える生原稿が保管されていることが判明、著者は、聞き取りと生原稿を基にして、8年間の<西川一三>の足取りをたどる、壮大な物語が綴られ、第二次世界大戦の裏側での歴史が浮き彫りにされています。
冒頭に、<西川一三>の商売論を聞いて、『ヤマザキ、天皇を撃て』の<奥崎謙三>の名前が出てきたときには、驚きました。