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神戸:ファルコンの散歩メモ

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今年の読書(32)『タワーリング』福田和代(新潮文庫)

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タワーリングと聞けば、1974年に公開されたアメリカ映画の『タワーリング・インフェルノ』を思い出してしまいますが、本書も地上50階建ての巨大ビルを舞台に繰り広げられます。

再開発ビルとして建てられた「ウインドシア六本木セントラルタワー」には、ショッピング街・オフイス・住居が混在する複合ビルとして、<川村章吾>を社長とする<マーズコーポレーション>が開発、最上階には<川村>の住居があります。

仕組まれたエレーベーター事故に紛れ込み、セキュリーティー対策が万全と思われた50階の住居に賊が侵入、<川村>を人質に取ると共に警備室を乗っ取り「ビルジャック」を宣言、身代金の要求をしてきます。

全てがハイテク化されたインテリジェントビルの機能を逆手に取る誘拐犯に、マーズの社員<船津康介>は打開策を見つけようと奮闘の行動を取りますが、事件は思わぬどんでん返しで読者を唖然とさせてくれます。

男と男の友情、親と子の関係、地上げの現状等の伏線の積み重ねも素晴らしく、最後まで一気に読ませる構成でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(31)『ちょちょら』畠中恵(新潮文庫)

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今年の読書(31)『ちょちょら...
主人公は<間野新之助>、兄<千太郎>が理由を言わずに自害したことにより、多々良木藩の江戸留守居役を引き継ぐことになりますが、幼馴染で兄の許嫁<千恵>が同じ留守居役の父<入江貞勝>共々親子で藩を脱藩したことを知ります。

留守居役とは、藩と藩との間を取り持ち、幕府の意を藩に伝え、時としてその間で藩のために行動を起こす、世間からは金遣いの荒いことで悪し様に言われる立場です。

<間野>は、留守居役たちに「聞番茶屋」と称する料理屋で留守居役としての手ほどきを受けながら、江戸城西の丸で起こった刃傷沙汰事件を納めるために奔走したことにより、幕府が印旛沼の干拓工事を内密に計画、どこぞの藩に請け負わす情報を知り得ます。

台所事情が悪い多々良木藩は、万が一この工事の指名を受けますと藩がつぶれるということで、新人留守居役として自分の藩だけを助けるのではなく、<間野>は265藩総抜けを計り、実行していきます。

淡い恋心を抱いていた<千恵>は料理屋の仲居として働き、札差の「青戸屋」が妾にと目を付け、仲間と思われた同じ留守居役の<赤崎>などの素行も疑わしい中、実直な<間野>の行動が魅力的に描かれ、その後の続編が読みたくなる内容でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(30)『精神科医が狂気をつくる』岩波明(新潮文庫)

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全8章からなる構成ですが、歯に衣を着せぬ明快な文章で綴られ、最後まで尽きぬ興味で読み終えれました。

特に科学的根拠もなしに一般市民に対して影響を与える著書や著者を、一刀両断に論破する箇所は、自らの考えに自信がないとできないことです。
また医療制度に対する国側の姿勢、製薬会社・マスコミの現状にも切り込んでいます。

精神疾患の治療と称して行われている「うつ病には・・・・が有効である」や一時流行しました「脳トレで認知症は治る」といったまやかしが、取り返しのつかない重篤な患者を生み出している現状等を、患者の症例を用いながら詳しく述べられていました。

また、精神科医の範疇を超える博覧強記な知識や史実が随所に散りばめられ、精神科の歴史の知識も得れる内容でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(29)『廃墟に乞う』佐々木譲(文春文庫)

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今年の読書(29)『廃墟に乞う...
1979年に『鉄騎兵、跳んだ』で「オール讀物新人賞」を受賞して以来、数々の賞を受賞している著者ですが、本書はデビュー30年目にして「第142回直木賞」受賞作品で、作家生活32年目に受賞した <白石一郎> に次いで遅い受賞者になります。

本書の主人公は、誘拐監禁事件で不注意から女性を助けることができず、逃亡した犯人が自殺するという幕引きになり、心身的に衰弱、休職扱いを受けながら自宅療養している北海道警<仙道孝司>警部補です。

休職中ということで警察手帳は持っていませんが、逆に道警の管轄以外に行動ができるという利点を生かし、知人からの依頼に対して探偵役的に調査をすすめ、決してでしゃばることなく事件の手柄は所轄の刑事に譲るという立場を貫き通しています。

著者は夕張市生まれ、現在は中標津在住という立場から北海道の地理に精通しており、納められた6話の短篇はどれもそれぞれの地域特性を生かした登場人物を絡めさせる構成は見事です。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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ファルコン植物記(1444)<梅>(6)【西王母】

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品種名の【西王母(セイオウボ)】は、中国で古くから信仰された女神(仙女)の名前で、3000年に一度だけ実を結ぶ不老不死の霊薬とされる桃の木の所有者です。

幕末の頃、金沢で育成された<椿>にも、同名の「西王母」の品種があります。

梅の原種に近い野梅系の紅筆性として淡い桃色をした一重咲き、花径20~25ミリの中輪で、開花時期は2月~3月頃です。

本来の<桃>には「西王母」という品種がないのかなと調べますと、山形県天童市にあります<イシドウ>が、「川中島白桃」と「ゆうぞら」を交配させ選抜育成させた「西王母」を、2004年11月に品種登録をしていました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(28)『光』三浦しをん(集英社文庫)

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今年の読書(28)『光』三浦し...
何とも重たい主題に、読み終えて唸ってしまいました。
ひとつは、来月11日で4年目を迎える東北大震災ですが、本書の初出は遡ること5年前の2006年11月から『小説すばる』に連載(~2007年12月)が始まっていることです。

伊豆大島に近い美浜島に、ある日突然津波が押し寄せ島全体が壊滅、中学生の<信之>と同級生の<美花>、幼馴染の<輔(たすく)>、そして船で釣りに出ていた<輔>の父親と釣り客の<山中>、灯台守の爺さんだけが生き残ります。

自衛隊が救援作業中、<山中>は<美花>を襲い、目撃した<信之>は<山中>を殺してしまい、<輔>はそれを目撃、写真を撮影していました。

時は20年が経ち、<信之>は市役所に勤め5歳の娘を持ち平凡に暮らしていたのですが、20年ぶりに<輔>は<信之>の前に現れ、現金を要求してきます。

それぞれの登場人物が相手のことを想いながら、真実の愛情とはなにかという重い主題を織り込み、人間の弱さと凶暴性は表裏一体だと改めて感じさせてくれる一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(27)『こいわすれ』畠中恵(文春文庫)

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今年の読書(27)『こいわすれ...
本書は、江戸町名主の跡取り息子<麻之助>を主人公に据えた 『まんまこと』 シリーズの第三弾目になります。

相変わらず幼馴染の同じ町名主で色男で女たらしの<清十郎>、堅物で品行方正な見習い同心<吉五郎>とともに、神田町内や江戸に起こる謎めいたことや揉め事の解決に紛争する様子が6話、ユーモアたっぷりに描かれています。

『鬼神のおつげ』では、「富くじ」を題材に江戸時代の「庚申待」などの風習を絡ませて、江戸物として興味深く読めました。

本書では女房<お寿ず>が懐妊、町名主の跡取りとして頑張る<麻之介>でしたが、早産で無事に生まれず女房も亡くなってしまいます。
全体の物語の流れからして、突然に<お寿ず>を亡くならす必要性があるとも思えず、今後の展開に向けての伏線なのかなと、少し寂しい気分で読み終えました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(26)『パインズ-美しき地獄ー』B・クラウチ(ハヤカワ文庫)

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今年の読書(26)『パインズ-...
第2次湾岸戦争に従事した<イーサン・バーク>は、除隊後シークレットサービスの捜査官になり、同僚二人が行方不明になっている「ウェイワード・パインズ」という地方都市に出向きますが、そこで交通事故に合ってしまいます。

身分証明書も現金、携帯電話も失ったまま「パインズ」の保安官事務所に助けを求めるのですが、なぜか外部との連絡も取れず、みずから病院を抜け出して自動車で町からの脱出を試みるのですが、なぜか元の町に戻りついてしまいます。

ある日町の住民全員が、<イーサン>の町からの脱走を阻止すべく集結、手助けしてくれた一人の女性はなぶり殺しにされてしまいます。
彼女がまだ試みていない森の奥に脱出できる道がないかと逃げる<イーサン>ですが、行く手には見たことのない異形の生物が現れます。

これでもかと町から脱出させないように保安官や住民たち、病院の医師や看護師の行動に読み手側もハラハラ・イライラとさせられるのですが、結末は意外な方向に向かい、予測不可能な衝撃のラストが待ち受けていました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(25)『ガウディーの鍵』マルティン&カランサ(集英社文庫)

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今年の読書(25)『ガウディー...
建築に携わる者には、スペインのバルセロナを中心に活躍した建築家<アントニオ・ガウディー>の名は知れ渡っていますが、一般的に彼の名が知られるようになったのは、30年ほど前に流れていたサントリーローヤルのテレビCMで、「グエル公園」が登場していました。

本作品は、<ガウディー>が1926(昭和元)年6月7日に路面電車にはねられる場面から始まります。
美術史家の<マリア>は、祖父から自分は<ガウディー>の後継者で、彼は「七人の騎士」の代表者であるがゆえに、悪魔の結社「メンスラ団」の<アスモダイ>に殺されたのだと教えられ、ソロモン王の時代から「七人の騎士」が守り通してきた『キリストの鍵』の謎を解いて、<ガウディー>の使命をを完成させるようにと打ち明けられます。

<マリア>は恋人である数学者の<ミケル>の協力のもと、バルセルナに点在する<ガウディー>の建築物を巡り、「メンスラ団」の妨害を受けながらも、謎解きの世界に没頭していきます。

キリスト教を中心とする宗教的な要素と<ガウディー>の建築物の神髄を絡ませながら、バルセロナの歴史を背景に、壮大なスケールのミステリーが楽しめました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(24)『プリティが多すぎる』大崎梢(文春文庫)

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今年の読書(24)『プリティが...
(文春文庫)としては、高知のよさこい祭りを舞台に中学生時代に一緒に参加した名前も知らない女性を人を捜し求める大学生の<篤史>を主人公とした 『夏のくじら』 に次ぎ、本書が2冊目になります。

本書は、大手出版社の<千石社>に入社して2年目の<新見佳孝>が主人公ですが、『週刊千石』の編集部から中学生の少女を対象にした『ピピン』の編集部に移動させられるところから物語は始まります。

文芸書籍の編集担当を目指している<新見>は、少女のファッションや小物のカタログのような雑誌の編集に気合いが入らず、企画も無視され撮影の段取りなどの失敗を繰り返してしまいます。

雑誌の編集作業には、カメラマンやスタイリスト、モデルと言った人間関係の調整が伴い、また10代前半のモデルたちのライバル心の葛藤をも取り入れ、<新見>の仕事の成長ぶりと業界モノとしての裏側が垣間見れる構成で、知らない雑誌編集の世界が楽しめました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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