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神戸:ファルコンの散歩メモ

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今年の読書(62)『翡翠の封印』夏目翠(中公文庫)

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今年の読書(62)『翡翠の封印...
乱読派として、本を選ぶ基準はその時その時で違うのですが、今回は著者名の<翠>が本のタイトル『翡の封印』に使われているのが気になり読んでみました。

騎馬民族として王国を樹立した「ヴェルマ国」の王子<テオドリアス(テオ)>と、豊かな農地を持つ「レガータ国」の<セシアラ(セラ)>は共に15歳、両国を狙っている「ガトゥール国」に対抗するために政治的な婚姻をさせられますが、(セラ)は神殿で巫女姫として幼いころから働き、人の死を知る力を供えています。

(セラ)は(テオ)の姉<イオーネ>と婚姻のあとに合い、握手をした瞬間に死期が近いことを知り(テオ)に告げますが、それを聞いた(テオ)は怒り心頭、その日から(セラ)と決裂するのですが、誰ともわからない人物に毒矢を打たれた(テオ)を、持ち前の薬草の知識で(セラ)は助け、仲良くなりかけたときに「ガトゥール国」との戦いに出向かなければならなくなってしまいます。

(セラ)が美しい緑の瞳を持つ意味が、物語を読み進むにつれてわかり、ファンタジックな物語として楽しめた「第4回C★NOVELS大賞」(2008年)受賞作品でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(61)『馬車道「斉藤さん」殺人事件』鯨統一郎(小学館文庫)

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今年の読書(61)『馬車道「斉...
浮気調査の依頼で女性を尾行中の「たんぽぽ探偵事務所(略してタンタン)」の所長(27歳)<岸翔太>と所員の<鈴木海鈴(マリン)>(19歳)は、馬車道に全裸で現れた女性が倒れて死亡する事件に出会ってしまいます。

全裸のため身元もわからない中、馬車道のお店に聞き込みを行い、その女性と直前までバーで飲んでいた<娘々(にゃんにゃん)好子>にたどり着き、彼女は殺人犯に疑われていることにより、この事件の解決を「タンタン」に依頼します。

調査をはじめると殺された女性は「サイトウ」だとわかり、彼女が親しくしていた<西東司>が麻薬を扱っていたことが徐々に判明、その彼も刺殺死体となって愛人に発見されますが、その愛人<伊藤みひろ>も殺されてしまいます。

ギャグとユーモアのある文体で気楽に読み進めておりましたが、一見この事件も解決かという段階でどんでん返しがあり、「う~ん」と唸らすひねりは面白かったです。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(60)『ローラ・フェイとの最後の会話』トマス・H・クック

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今年の読書(60)『ローラ・フ...
生まれ育ったアラバマ州グレンビィルの町を捨て、歴史家として名を馳せたいという大きな野心をもってハーバード大学に入学した主人公<ルーク>ですが、自分の執筆した本の宣伝のために「自費」でセントルイスの西部開拓博物館に講演に出向きます。

講演会場で20年ぶりに出会ったのは、47歳になった<ローラ・フェイ>で、以前の美しさは消え失せていました。

彼女はかって父<ダグ>の愛人と噂され、<ルーク>は無能な父と共に憎んでいましたが、講演会が終わり宿泊先のホテルのバーで当時の話を語り合うなかで、実際は何もなかったことを知らされます。

<ルーク>の多感な年ごろの父や母に対する心情を主軸として、グレンビィルでの人間関係を横糸に絡ませながら当時の真実が解き明かされ、思わぬ展開を見せてくれる一冊でした。 
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(59)『時限』鏑木蓮(講談社文庫)

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今年の読書(59)『時限』鏑木...
本書の主人公<片岡真子>は、京都府警に入ってまだ7年目の新人刑事で、警察庁から出向しているキャリア組の<高藤>警部と組まされますが、<片岡>のはんなりとした京都弁が気になる<高藤>です。

元老舗呉服屋<向井>の別邸で若い女性の首つり死体が発見され、遺体の首筋には、首を吊った索条痕と手で絞めた扼殺痕があり、不可解な事件として捜査が始まります。

歯の治療あとから、死体は3年前に家出した長崎市の<夏山千紘>だと判明、引き取りに来た母親との会話で<片岡>は彼女の過去を聞かされます。父親に児童ポルノを作成され、それが原因で自殺未遂を繰り返しながらも、「いのちの110番」の担当者<山本祐一>に心の安寧を見つけ出しますが、介護士をしていた<山本>の妹は15年前に失踪、最後の訪問先が<向井>の別邸で、彼は<向井>を犯人だと信じていました。

二つの事件が交錯、殺人の時効15年(事件当時)が目前に迫り、<向井>に翻弄されながらも真摯に事件に取り組む<片岡>の姿が印象的で、続編を望むキャラクターでした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(58)『逆流 越境捜査』笹本稜平(双葉社)

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今年の読書(58)『逆流 越境...
<越境捜査>シリーズも、2007年8月に『越境捜査』を1冊目として、2014年3月刊行の本書で4冊目になります。

警視庁捜査一課特命捜査二係の<鷺沼友哉>は、足立区の河川敷の白骨死体の捜査にあたっていましたが、柿の木坂の自宅マンションで暴漢にナイフで襲われ1カ月の自宅療養を命じられます。

彼を見つけたのは神奈川県警瀬谷署の刑事<宮野裕之>で、今まで管轄を超えて捜査協力してきた仲間であり、<宮野>は逮捕した窃盗犯が、12年前に白骨死体が発見された近くの家に忍び込んだとき、死体を見たと自供、関連があるのではと<鷺沼>を訪問した時でした。

その家は現在は参議院議員の<小暮孝則>の自宅で、10年前に更地にして売却した土地で、不審に思った<鷺沼>と<宮野>、そして<鷺沼>の身辺警護に着いた碑文谷警察署の<山中彩香>を巻き込み捜査を進めていきます。
<鷺沼>の部下である新人の<井上拓海>巡査も、<小暮>の身辺捜査のために福岡県警に出向きますが、一人前の刑事の風格を備えはじめ、いい動きを見せてくれていました。

定年まじかの<鷺沼>の上司<三好章>や元ヤクザの<福富>の脇役も見事で、はみ出し刑事の面目躍如の活躍が楽しめました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(57)『鳥少年』皆川博子(創元推理文庫)

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今年の読書(57)『鳥少年』皆...
本書は、著者の1970年代・1980年代の未収録の短篇集で、16編が収録されています。

表題作の『鳥少年』は、『月刊カドカワ』1083年7月号に掲載された作品で、少年たちに暴行にあった<鳰子>を主人公に据え、少年のひとりがなぜか「クォ~」としか喋れなくなる話です。

一番目に収録されている『火焔樹の下では』は、精神病院を舞台に天才的絵画能力を持つ患者の治療にあたる女医と看護師が、その患者のことを書いた作家との間でやり取りする手紙形式の構成で、怖い「女の執念」が見事にあらわされていました。

どの作品もブラックサスペンスとでもいえる読後感が残る短篇ばかりで、美容院を舞台に美容師と客の女性の一人の男に執着する話しの『魔女』の最後の一行、<孤りの女が深夜、部屋にこもっているとき、どんな力を持つものか、男は知らないのだ>には、特に背筋が寒くなる「女の怨念」を感じました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(56)『帰郷』エース・アトキンズ(ハヤカワ文庫)

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今年の読書(56)『帰郷』エー...
主人公はイラクやアフガニスタンなどの戦地に派遣されているレンジャー部隊の29歳の軍曹<クウィン>で、6年ぶりに故郷の街ジェリコに、伯父である保安官<ハンプトン>の葬儀に参列するために帰郷してきます。

葬儀の席で<クウィン>は<ハンプトン>が拳銃で亡くなったことを教えられ、自殺か他殺かと迷っているとき、政治家としてのし上がった<スタッグ>が、<ハンプトン>に金を貸しており、担保代わりのに家や土地を明け渡せと要求してきます。

<クウィン>はことの真相を探り始め、ドラッグの密造をしている<ガウリー>にたどり着き、彼と<スタッグ>が組み、ジェリコの街を乗っ取ろうとしているのではと考え始めます。
レンジャー部隊の強健さを生かし、<ガウリー>と一線を交える<クウィン>ですが、最後は街全体を巻き込む銃撃戦になってしまいます。

久しぶりの帰郷ということで、高校時代の想い出話を絡め、今は結婚している当時の恋人や女性保安官補などを登場させ、閉鎖的な小さな町の人間模様が見事に描かれている一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(55)『首都崩壊』高嶋哲夫(幻冬舎)

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今年の読書(55)『首都崩壊』...
アメリカ合衆国大統領<リチャード>は、側近である<ロバート>を秘かに日本に派遣、国土交通省から留学していた同窓の<森崎真>を訪れ、<野田>首相との通訳を頼みます。
アメリカの危惧は現在の日本の政治・経済状況ではリーマンショック以上の危機が訪れ、世界恐慌の再来が起こるということで、東京で発生する大地震の要因もありました。

そんな折、東都大学地震研究所の<前脇>は、東京に直下型地震が5年以内に90%の確率で起こると予測、政府に情報公開を求めますが、国民がパニックの落ちるために無視されてしまいます。

<野田>首相は、一機打開のために首都移転計画を支持、2011年に解散した首都機能移転の室長だった<村津>をトップとする首都移転チームを立ち上げ、留学時代に首都移転の論文を書いていた<森崎>もチームの要として動き回ります。

日本の不安定な経済状況の中で儲けようとするヘッジファンドの企業登場させ、また道州制の政治的思惑も絡む中、<森崎>達は首都移転構想をまとめ上げますが、裏側にはアメリカ側の思惑がひしめいていました。

阪神・淡路大震災や東日本大震災の記憶の新しい中、東京一極主義の不安も現実的にあり、フイクションだと割り切れない気持ちで読んでおりました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(54)『SOSの猿』伊坂幸太郎(中公文庫)

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今年の読書(54)『SOSの猿...
本書は、「私の話」と「猿の話」の二部構成で、それぞれ交互に物語が展開されていきます。

「私」こと<遠藤二郎>は家電量販店でエアコンを販売している30代の男で、大学受験に失敗、教師の薦めでイタリアの美術学校に留学していましたが、現地の友人の父がカトリックの神父として「エクソシス」であり、その手ほどきを受け日本に帰国後も「エクソシスト」として悪魔祓いを行っています。

昔憧れていた<辺見ねいさん>の息子が2年前からひきこもり状態になり、特にここ半年ほど前から様子が急変、<二郎>のところに助けを求めてきます。

片や「猿の話」は正体不明の語り手によって「因果関係の物語」が主軸となり、システム開発会社の品質管理担当の<五十嵐真>を主人公とし、証券マンの打ち込みミスにより株の誤発注が起こり、300億円の損失の原因調査を命じられますが、<孫悟空>の登場人物たちに翻弄されていきます。

つながりのない平行線的な別物語として話が進んでいきますが、<二郎>と<五十嵐>の間を取り持つように<孫悟空>が自由自在に「私」と<五十嵐>の前に現れ、物語が一本に集結されていきます。
エンターテイメントの名手としてさすがの構成で、面白く読み終えれました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(53)『異境』堂場瞬一(小学館文庫)

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今年の読書(53)『異境』堂場...
一本気な性格のため上司とのトラブルで、『日報本社』から横浜支局に飛ばされた38歳の<甲斐明人>は、解散雰囲気の選挙戦の資料集めという閑職的な仕事を与えられ、支局内でも浮いた存在です。

そんな折、入社2年目の<二階康平>が失踪、彼のマンションが荒らされているのを発見、事件性を感じた<甲斐>は、他のマスコミ関係者に知られたくない上司の命令で、援軍もなく一人で<二階>の調査に乗り出します。

<二階>は何か大きなスクープを掴んでいたのがわかり、彼が取材していた生活安全部の警部<時松>の自殺もあり、また神奈川県警のやる気のない調査に憤りを感じる<甲斐>ですが、女性刑事<浅羽翔子>と知り合い、<二階>の行動を辿るうちに警察内部の腐敗と横浜を中心とした外国人ギャング組織の存在が浮かび上がります。

非常に小気味よい場面展開で物語は進み、孤軍奮闘する<甲斐>と正義感を貫き通そうとする<浅羽>との組み合わせが楽しめた一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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