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神戸:ファルコンの散歩メモ

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今年の読書(122)『晴天の迷いクジラ』窪美澄(新潮文庫)

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今年の読書(122)『晴天の迷...
本書に登場する主人公は3人、それぞれの人物の生い立ち・家庭環境が語られ、最後の第四章で、3人の関わりが見事に開花しています。

第一章は、24歳の<田宮由人>です。
3人兄妹の間に挟まれ、なぜか母親は登校拒否の兄と、中学3年生で妊娠した妹の孫にかかりっきりで、<由人>は祖母にかわいがられて育ちます。
東京に出て、デザインの専門学校に通う最中、<ミカ>という女性と知り合いますが、仕事が忙しい<由人>は<ミカ>に浮気されてしまい、失恋の痛手と仕事疲れから「うつ」だと診断、自殺願望がちらついています。

その<由人>が勤めるデザイン会社の社長が<中島野乃花>で48歳。幼いころから絵がうまく、教師にすすめられた絵画教室の<横川英則>の子を18歳で身ごもり、政治家の二世の妻の立場に馴染めず、育児ノイローゼで家を飛び出し離婚しています。

デザイン会社が倒産という時、私物を取りに会社に出向いた際に<由人>は、自殺しようとする<野乃花>と鉢合わせ、どうせ死ぬならニュースで報道されている湾に紛れ込んだクジラを見てからにしようと車で移動中、母との折り合いが悪く家を飛び出してきた16歳の<正子>と遭遇、奇妙な3人連れの旅が始まります。

主人公たちの悩みや苦悩は、読者自身の人生経験と重ね合わせられる部分が多々あり、「生きるとは」を真正面から捉えた重厚感ある長編として、感動を与えてくれる一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(121)『流跡』朝吹真理子(新潮文庫)

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今年の読書(121)『流跡』朝...
本書は、『きことこ』で第144回芥川龍之介賞(2011年下半期)を受賞した著者のデビュー作品『流跡』と『家族』の2篇が納められています。

この『流跡』は、「ドゥマゴ文学賞」を受賞していますが、一読してわたしには「面白い!」という内容ではありませんでした。

段落のない長い文章が続く文体で、主人公が男なのか女なのかもわからず、タイトル通り川の水の流れのように長い文章が延々と続いていきます。

両作品とも第三者的な語り口で、「・・・」で囲われた会話文も一切登場することなく、語り手の目線での描写が続き、想像力を書きたてる構成ですが、文学的(好きな言葉ではありませんが)要素はあるのでしょうが、面白さを求める作品ではありませんでした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(120)『花工房ノンノの秘密』深津十一(宝島社文庫)

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今年の読書(120)『花工房ノ...
前作 『コレクター 不思議な石の物語』 に次ぐ、(宝島社文庫)として2作品目が本書です。

札幌市すすきのにある花屋『花工房ノンノ』でアルバイトをする<山下純平>は北都大学生、三才の時に母親をガス中毒事故で亡くしていますが、自らも青いお花畑を目にしながら、生死の境を漂う臨死体験を経験しています。

ある日『花工房ノンノ』の忘年会で、臨死体験の話を持ち出すと、その光景とそっくりな動画サイトをネットで見たと同僚の<細井祥子>に教えられ、二人で確認するとすでに削除されていました。
このネットを調査しようと<細井>は動いていましたが、ホテルのランチバイキングで食中毒を起こし、その原因が「ソライロアサガオ」のタネに含まれる成分だとわかります。

事件の解明に手に負えなくなった二人は花屋の娘<絵里子>に相談、彼女は同級生の学習塾の講師<前園>を紹介、彼が探偵役として事件にかかわり、持ち前の知識で名推理を展開していきます。

花屋を舞台としているだけに花に関する話題が豊富で、「なぜ人は、花を愛でるのだろう」という、冒頭の言葉の解答でもあり、お花好きの方には<ぜひ一読>のミステリーでした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(119))『午前0時のラジオ局』村山仁志(PHP文芸文庫)

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今年の読書(119))『午前0...
ラジオ局を舞台にした小説として、<五十嵐貴久>の 『リミット』 という緊迫感のある小説がありますが、本書は正反対にファンタジックな短篇が6話納められています。

地方局の新米アナウンサー<鴨川優>は、テレビ局からラジオ局へと移動になり、ディレクター<蓮池陽一>の下で午前0時に始まる深夜番組『ミッドナイト☆レディオステーション』のアナウンサーとなり、新人アシスタントの<山野佳澄>と組んで番組を担当します。

放送中に突然スタジオの照明が消えたりと不思議な現象が起こるのですが、<蓮池>は25年前に交通事故で死んだ幽霊であり、次々とこの世に未練がある「浮遊霊」たちが登場、この世とあの世の切ない人間ドラマが連作で展開されていきます。

著者自身がNBC長崎放送のアナウンサーですが、いわゆる緊張感のある業界物ではなく、心温まる物語で構成されています。
あとがきを読んで、『コンビニたそがれ堂』の <村山早紀> さんが、なんと実姉だということを知り驚きました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(118)『サマーサイダー』壁井ユカコ(文春文庫)

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今年の読書(118)『サマーサ...
同じ小学校から同じ中学校に進んだ幼馴染の<倉田ミズ>・<三浦誉>・<恵悠>は、卒業と同時に廃校になった「日暮市立ひぐら西中学校」の最後の卒業生でした。

<三浦>は、夜盲・狭窄症の持病があり、将来は失明するかもしれない不安を抱えながら、また<恵悠>は、バレーボールの推薦入学で私学の高校に入学したのですが、レベルの高さに付いて行かれず、夏休みを前に部活に出なくなっていました。

そんな3人に対して<松沢千比呂>先生から、使われなくなった体育用具を寄贈するため、ボランティアの掃除係の声がかかり、3人は久しぶりに夏休みに中学校に出向くことになりますが、<松沢>自体にもある考えがあっての呼びかけでした。

それぞれの悩みを隠しながら、一見三角関係の青春恋愛物語かなと読み進むにつれて、「蝉」にまつわるホラー的な展開が始まり、1年前の夏休みに起こった担任<佐野青春>の変死事件と物語は絡んでいきます。

十代の思春期の男女の心の機微を主軸に、「蝉」に関連するブラックユーモアを横糸に、1年前の夏休みの出来事を再現させていく展開に戸惑いを感じながらも、予測できない結末に最後まで面白く読み終えれました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(117)『コレクター 不思議な石の物語』深津十一(宝島社文庫)

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今年の読書(117)『コレクタ...
主人公の<木島耕平>は高校2年生、祖母が死ぬ間際に残した遺言は、黒い石を口の中に入れて火葬後、取り出して<林>なる人物に渡してほしいということでした。

おばあちゃん子の<耕平>は、祖母の遺言通りに行った「石」を持って、<林>を尋ねると78歳の人物で、家業として日本中から奇異な「石」を集めては、それを割ることに専念しているコレクター、祖母の残した「石」は「死人石」ということを教わります。

祖母と<林>とのつながりが分からないまま<耕平>は、<林>から借りた「白夢石」で、本当に真っ白な世界の夢を見てしまい、「石」の持つ力の不思議さを授業中に考えているところを美人の<ナオミ先生>に見つかり、祖母や<林>のことを話します。

幼い頃に耳にそっくりの「童(わらべ)石」を見つけたことのある<ナオミ先生>は、<耕平>と一緒に<林>の屋敷を訪れますが・・・。

不思議な「石」にまつわる出来事をユーモアを交えながら展開、遠く伊賀の国の忍者の時代から時空を超えた壮大な物語が隠されていて、面白く読み終えれました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(116)『泥ぞつもりて』宮木あや子(文春文庫)

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今年の読書(116)『泥ぞつも...
本書には表題作の『泥(こひ)ぞつもりて』 ・ 『凍(こぼ)れる涙』 ・ 『東風吹かば』の中篇作品が連作として3篇納められています。

物語は、第56代<清和天皇>の正妻<高子>と女御<源暄子>との関係から始まり、第57代<陽成天皇>、第58代<光考天皇>、第59代<宇多天皇>と歴代は流れていきますが、政治の権力争いの男の世界と、その政略結婚に翻弄される女たちのせつない恋情を絡めています。

平安時代の<律令制>の政治を背景として、男と女の複雑な人間関係が繰り広げられる時代絵巻物で、本書の面白さを数行で紹介する技量は持ち合わせていませんが、緻密な時代考証と登場人物たちの心の綾が見事に表現されていて、いい時代小説に当たりました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(115)『木暮荘物語』三浦しをん(祥伝社文庫)

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今年の読書(115)『木暮荘物...
タイトルにある「木暮荘」は、小田急線の世田谷代田駅から徒歩5分の距離にある木造2階建てのアパートで、築ウン十年のボロアパートです。

全6室のアパートですが、住んでいるのは、1階に大家の70歳を超す<木暮>と飼い犬の<ジョン>、女子大生の<光子>、2階に花屋に勤める26歳の<坂田繭>、サラリーマンの<神崎>の4人です。

音が筒抜けの安普請のアパートを舞台として、死ぬ間際の友人の願望の言葉を聞き、死ぬまでにもう一度セックスをしたいと悩む<小暮>、3年前に分かれた男が突然現れ現在の恋人との奇妙な三角関係で悩む<坂田繭>、複数の男友達が出入りする<光子>、それを2階から覗いている<神崎>等、どこかおかしい住人たちの生活を通して、男と女の性をおおらかに描き切った6篇の連作短篇集でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(114)『鷹野鍼灸院の事件簿』乾緑郎(宝島社文庫)

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今年の読書(114)『鷹野鍼灸...
鍼灸院の専門学校を卒業した<五月女真奈>は、院長<鷹野夏彦>の助手として勤めていますが、<鷹野>はなぜか往診ばがりで、また<真奈>自身にも直接指導することはありません。

そんな<鷹野鍼灸院>を舞台として、鍼灸にまつわる5話の中短篇が納められています。
少しばかりおとぼけの<鷹野>の所見能力が素晴らしく、その洞察眼でもってトラブルを解決するとともに、生真面目な<真奈>とのやり取りが小気味よく展開されていきます。

同級生の<小日向友梨>や、オーストラリア人の<クロエ・ブランデル>などの脇役陣も個性的で楽しめました。

まったく知らない鍼灸の世界で、<置針・関元・巨刺(こし)・鍼灸カスミ鍼>などといった専門用語が多く散りばめられ、専門学校の実情や医師との兼ね合いなど、著者自身が鍼灸師の資格を持っているだけに面白く読み終えれました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(113)『真鍮のむし』田中啓文(創元推理文庫)

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今年の読書(113)『真鍮のむ...
本書は 『落下する緑』 ・ 『辛い飴』 に続く、<氷見緋太郎の事件簿>の第三巻目です。

7話の連作短篇が収録されていますが、語り手は「唐島英治クインテット」のトランペット奏者<唐島英治>ですが、ジャズの演奏現場にて起こる事件を解決するのはテナーサックスを担当する<氷見緋太郎>です。

著者自身がテナーサックス奏者で、自らのバンドを持っていますので、ジャズに関する知識は幅広く、推理小説仕立てでありながら、自然とジャズの世界に引きずり込まれていきます。

音楽に行き詰った<唐島>は、気分転換に日本を離れ<氷見>とニューヨークやシカゴ、ニューオリンズと巡りますが、海外を舞台に世事には疎い音楽バカの<氷見>が、不思議と遭遇する事件を音楽を奏でるように謎を解き明かしていきます。

各章の終わりには、著者お気に入りのアルバムの紹介コーナーがあり、ジャズファンとしては面白く読み終えれました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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