今年の読書(113)『真鍮のむし』田中啓文(創元推理文庫)
8月
14日
7話の連作短篇が収録されていますが、語り手は「唐島英治クインテット」のトランペット奏者<唐島英治>ですが、ジャズの演奏現場にて起こる事件を解決するのはテナーサックスを担当する<氷見緋太郎>です。
著者自身がテナーサックス奏者で、自らのバンドを持っていますので、ジャズに関する知識は幅広く、推理小説仕立てでありながら、自然とジャズの世界に引きずり込まれていきます。
音楽に行き詰った<唐島>は、気分転換に日本を離れ<氷見>とニューヨークやシカゴ、ニューオリンズと巡りますが、海外を舞台に世事には疎い音楽バカの<氷見>が、不思議と遭遇する事件を音楽を奏でるように謎を解き明かしていきます。
各章の終わりには、著者お気に入りのアルバムの紹介コーナーがあり、ジャズファンとしては面白く読み終えれました。