今年の読書(4)『樹林の罠』佐々木譲(ハルキ文庫)
1月
27日
著者の<佐々木譲>は好きな作家ですので、種々雑多に幅広く10冊近くは取り上げていると思いますが、特にこの「北海道警察(道警)」シリーズは第1作目の『笑う警官』(2007年5月15日)に始まり本書『樹林の罠』で10冊目の文庫本として、2026年1月18日に発売されています。
もともと同時代を背景として描くというコンセプトで書かれてきた本シリーズですので、本作では新型コロナウイルスの蔓延によって変わってしまった日常の風景が、主人公たちの生活を通して豊かに描かれています。
コロナ禍によって思うように仕事ができない、それでも家族のために懸命に生きる人、逼迫した医療機関で働く人、変化し続ける街の様子、そして新しい犯罪とまさに時代と社会を写し取る警察小説の魅力にあふれています。
またこれまでのシリーズで積み重ねてきた主人公たちの公私にわたる人生の転機は、人間味にあふれ本書の魅力に大きく貢献しています。
轢き逃げの通報を受け、臨場した北海道警察本部大通署機動捜査隊の「津久井卓」は、事故ではなく事件の可能性があることを現場で知ります。それは被害者が拉致・暴行された後に撥ねられた可能性が高いからでした。その頃、生活安全課少年係の「小島百合」は、駅前交番で保護された、九歳の女の子を引き取りに向かいます。その子は、旭川の先の町から札幌駅まで父親に会いたいと出てきたようでした。一方、脳梗塞で倒れた父を引き取るために「百合」と別れた「佐伯宏一」警部補は、仕事と介護の両立に戸惑っていました。そんな「佐伯」に弁護士事務所荒らしの事案が舞い込む見ます。ひとつの交通事故を契機に、警察官としての矜持、そして遊軍の刑事の意地が、隠された犯罪を炙り出していく過程で、北海道の現実の時代背景を舞台にそれぞれの事件が一つにつながっていきます。読み終えた段階で、タイトルの意味が分かります。
第10作目を一区切りとして、主人公「佐伯宏一」警部補が警部に昇進後のダイ2シリーズが刊行されているようで、文庫本の発売を楽しみに待ちたいと思います。









