戦後間もないシチリアの小さな村の映画館をめぐる人々の映画への愛を描く『ニュー・シネマ・パラダイス』が、2025年12月5日よりリバイバル上映されます。
現在のローマ。夜遅く帰宅した映画監督の「サルヴァトーレ・ディ・ヴィータ」は、留守中に母から「アルフレード」が死んだという電話がかかっていたことを知らされます。その名を耳にした途端、「サルヴァトーレ」の脳裏には、シチリアのジャンカルド村での少年時代の思い出が甦るのでした。
当時、母「マリア」と妹の三人暮らしだった「サルヴァトーレ」は〈トト〉と呼ばれ、母親に頼まれた買物の金で映画を観るほどの映画好きでした。そんな〈トト〉を魅了していたのは映画館パラダイス座の映写室であり、また映写技師の「アルフレード」でした。パラダイス座には司祭の検閲があり、そのせいで村の人々はこれまで映画のキス・シーンを見たことがありませんでした。〈トト〉はいつも映写室に入り込む機会を窺っていましたが、「アルフレード」は彼を追い返そうとしますが、そのうち2人の間には不思議な友情の絆が結ばれてゆき、〈トト〉は映写室でカットされたフィルムを宝物にして集めるのでした。しかしある日、フィルムに火がつき、パラダイス座は瞬く間に燃え尽きてしまいます。そして〈トト〉の懸命の救出にもかかわらず、「アルフレード」は火傷が原因で失明してしまうのでした。やがてパラダイス座は再建され、「アルフレード」に代わって〈トト〉が映写技師になります。もはや検閲もなく、フィルムも不燃性になっていました。青年に成長した〈トト〉は、銀行家の娘「エレナ」に恋をし、やがて愛を成就させ幸せなひと夏を過ごしますが、彼女の父親は2人の恋愛を認めようとせずパレルモに引っ越しし、〈トト〉は兵役につきます。
除隊後村に戻ってきた〈トト〉の前に「エレナ」が2度と姿を現わすことはありませんでした。「アルフレード」に勧められ、〈トト〉が故郷の町を離れて30年の月日が経っていました。「アルフレード」の葬儀に出席するためにジャンカルド村に戻ってきた〈トト〉は、駐車場に姿を変えようとしている荒れ果てたパラダイス座で物思いに耽るのでした。試写室で「アルフレード」の形見のフィルムを見つめる「サルヴァトーレ」の瞳に、いつしか涙があふれ出します。それは検閲でカットされたキス・シーンのフィルムを繋げたものでした。
「アルフレード」に<フィリップ・ノワレ>、「サルヴァトーレ」に<ジャック・ペラン>、「トト(サルヴァトーレ・少年時代)」に<サルヴァトーレ・カシオ>、「母マリア」に<アントネラ・アッティーリ>、「司祭」に<レオポルド・トリエステ>、「エレナ」に<アニェーゼ・ナーノ>、「サルヴァトーレ(アドレセント)」に<マリオ・レオナルディ>が出演、監督・脚本は本作品が日本での一般公開第一作になる<ジュゼッペ・トルナトーレ>が手掛けています、音楽は<エンニオ・モリコーネ>が担当。1989年カンヌ映画祭審査員特別大賞受賞作品です。