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神戸:ファルコンの散歩メモ

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今年の読書(74)『黒猫の刹那あるいは卒論指導』森晶麿(ハヤカワ文庫)

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今年の読書(74)『黒猫の刹那...
<黒猫>シリーズは、 『黒猫の遊歩あるいは美学講義』 を第1巻として現在までに5冊が刊行されており、本書は第4巻目に当たりますが、ハヤカワ文庫としては2冊目になります。

第1巻目では若き24歳の大学教授の<黒猫>とその付き人を務める大学院生の<私>を中心に日常に潜む謎解きが楽しめましたが、本書は<黒猫>と<私>の大学生活時代を舞台に、短篇が6篇納められています。

美学部の学部長である<唐草ゼミ>在籍から博識の<黒猫>と、<エドガ・アラン・ポを卒論とする<私>との関係がよくわかる構成で、<ポオ>の作品を下敷きにして作品に新たなる解釈行いながら、謎解きが進んでいきます。

本書では<唐草学部長>の推薦を受けて、フランスの現代思想の大家<ラテスト教授>の元へ留学するまでの<黒猫>の推理が、冴えわたる一冊でした。
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今年の読書(73)『賞の棺』帚木蓬生(集英社文庫)

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今年の読書(73)『賞の棺』帚...
本書は単行本として新潮社から1990年12月に刊行、1996年2月に新潮文庫に納められており、2013年11月に集英社文庫として発売されています。

イギリス医学界の権威者<アーサー・ヒル>がノーベル医学・生理学賞を受賞を知らされた<津田孝>は、同じ分野で研究を続けながらも4年前に急性白血病でなくなった恩師<清原修平>の家に焼香を兼ねて挨拶に出向いた際、恩師の娘<紀子>が絵画の勉強のためにパリいることを知ります。

ブダペストの学会出席に合わせて<津田>は長期休暇を申請すると共に、<紀子>や旧友と会う予定を組みますが、何気なく手にした恩師の記念集に、<アーサー・ヒル>より先に筋肉の「第三のフィラメント」与呼ばれる物質を発見していた<アントニオ・ルイス>の話に興味を持ちます。

ブタベストの生理学研究所を訪れた<津田>は、以前の所長もまた4年前に急性白血で亡くなっているの知り、<清原>の研究室に6カ月いた<アイリス・サンガー>が、この研究所にも<アーサー・ヒル>の推薦で6カ月ばかりいたことを知り、何か策略めいたものを感じ取り、真相を求めてヨーロッパを駆け巡ります。

世界の最高権威であるノーベル賞を舞台に、臨床医学者としての生き方を主軸に、娘と父、息子と母親等、複雑な親子の関係を絡ませながら、また<津田>と<紀子>の淡いラブロマンスの要素もある、本角的な医療ミステリーとして楽しめた一冊でした。
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今年の読書(72)『叫びと祈り』梓崎優(創元推理文庫)

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今年の読書(72)『叫びと祈り...
本書には5編の短篇が納められており、タイトルは収録されている第4番目の『叫び』と第5番目の『祈り』を合わせたようです。

主人公は国際動向を分析する雑誌を発行する会社に勤めている<斉木>で、7か国語を喋れるということで、世界各地に派遣されますが、その派遣先で殺人事件やミステリーじみた出来事に遭遇してしまいます。

サハラ砂漠に残る塩の道の取材中の殺人事件、友人の失恋物語にまつわるスペインでの出来事、ウクライナに隣接する南ロシアの丘陵地に立つ修道所での殺人事件、アマゾンの先住民の部落で発生した伝染病、そして<斉木>自らの身に起こるアクシデント等、読者を功名なな語り口で引き込んでいきます。

巻頭に納められた『砂漠を走る船の道』は、「第5回ミステリーズ!新人賞」(2008年度)受賞作品で、本書はデビュー単行本の文庫本ということで手にしてみましたが、物語性を主軸に据えたミステリーの覆面作家として今後の活躍が楽しみです。
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今年の読書(71)『メグル』乾ルカ(創元推理文庫)

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今年の読書(71)『メグル』乾...
巡り合わせというのは不思議とあるようで、過去に取り上げた<乾ルカ>さんの本を検索しましたら、デビュー作の 『夏光(なつひかり)』 が2012年度の(71)冊目でした。

本書には5つの短篇が納められており、どのタイトルもカタカナでまとめられています。
H大学の学生課奨学係のアルバイト紹介には、無表情な女性職員<悠木>が担当者として座り、窓口に来た学生たちになぜか各人の過去を見つめ直す機会を与えるべくアルバイトを世話していきますが、その決め台詞は「あなたは行くべきよ。断らないでね」です。

『ヒカレル』は古くからの因習として死後に手が硬直しないのはこの世に未練がある「引く手」といわれるもので、あの世に連れて行かれないように一晩中死人の手を握るバイト、『モドル』は父が入院した病院の販売店で商品の異例替え作業のバイト、『アタエル』は海外旅行に出かけているあいだの犬の餌やりのバイト、『タベル』はクローン病のために食べる楽しみがなくなった患者が作る料理を食べるバイト等、どれもが心に余韻を残す構成でした。

最後の短篇が『メグル』ですが、ここで<悠木>自身の過去にも触れられ、ミステリーチックな短篇として、心静かに読み終えることができました。
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今年の読書(70)『二都騒乱:新・古着屋総兵衛7』佐伯泰英(新潮文庫)

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今年の読書(70)『二都騒乱:...
著者の時代小説はシリーズ物が多く、『古着屋総兵衛』は全11巻、『居眠り磐音江戸草紙』にいたっては現在48巻目です。
人気作家ですのでシリーズ物の発刊が急になくなるとは思えず、<新・古着屋総兵衛>シリーズも、第6巻の 『転び者』 から間が空きましたが、のんびりと読み続けています。

タイトルの「二都」は、江戸と京都を表していますが、許嫁の<桜子>と付添いの<しげ>が、京の錦市場で消息を絶ってしまいましたが、<総兵衛>はあわてることなく、敵である薩摩藩の動きを冷静に見極めていました。

そのころ江戸では、「大黒屋」の地下大広間につながる秘密の地下通路を探り当てた元同心<池辺三五郎>が、薩摩藩に取り入られようと密告、薩摩藩上屋敷当主の<東郷清唯>の妾腹の子<石橋茂太>と出向きますが、両名とも憤死してしまいます。

薩摩藩から<桜子>拉致に関する連絡が<総兵衛>に届き、策略を感じて裏をかくべく部下を引き連れ、無事に<桜子>と<しげ>を取り戻します。

「大黒屋」は神君家康公の影旗本として、将軍からの命令を伝える<影>の存在が本書では<九条文女>とわかります。彼女は100年に渡る「大黒屋」と薩摩藩との和睦をすすめ、薩摩藩主も同意しましたが、薩摩藩京屋敷目付<伊集院監物>や、息子を殺された薩摩藩上屋敷の<東郷清唯>などの動きが、今後気になるところです。
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今年の読書(69)『デッド・リミット』遠藤武文(集英社文庫)

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今年の読書(69)『デッド・リ...
スナックの深夜営業で疲れて眠る<藤村智子>の家に一箱の小包が届き、開けてみると息子<大翔(はると)>の冷凍された小指でした。早く解放すれば整形手術で接合できると電話が入り、身代金5000万を用意するために<智子>は銀行強盗を働き、指定された場所に向かいますが、あわてて降りた電車内に置き忘れてしまいます。

指定された駅に降りた<智子>はそこで<藤村>と名乗る若者と接触しますが、彼は誘拐犯の<山田浅右衛門>ではなく、彼もまた両親を人質としてとられ、なぜかその場に<大翔>の小学校の担任<柳原佳葉子>も登場してきます。

全5章の構成ですが、各章ごとに登場人物を中心とした物語が進み、最後の章で全体のつながりがわかるのですが、各人が各様に自己中心的な行動を取る展開で、結末までどうなるのかと思わせながら読者を最後まで引っ張ります。

結末的に教師の<柳原>や悪徳刑事<磯崎>の処遇が不明なまま物語は終わり、消化不良の感はいがめませんが、全体的によくできた構成で楽しめました。
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今年の読書(68)『オ-シティ』木下半太(新潮文庫)

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今年の読書(68)『オ-シティ...
大阪市は7年前に多額の負債を抱えてしまい、「カジノ」導入で俄然と収入は増えましたが、街はギャングや売春屋がはびこる無法地帯になってしまっています。
世界から集まるギャンブラーは、「オーサカシティ」を縮めて「オーシティ」と呼んでいます。

主人公は自称「絵本探偵」の<羽田誠>で、「死神」と呼ばれている悪徳刑事<愛染>から、闇金の取り立てができないときに相手の耳を切り落とすことから「耳切り茶谷」と呼ばれる<茶谷新一>が切り落としたインド人<サミー>の耳を探せと強要されてしまいます。

<羽田>は<茶谷>の彼女<小蘭>が隠していると出向くのですが、逃げられてしまい、見つけなければ<愛染>に殺されるのがわかっているだけに、必死のドタバタ活動が展開していきます。

<羽田>は2年前に離婚していますが、窮地になるたびに分かれた「妻」の言葉を思い出すのですが、これがいい伏線になり、最後に読者をニンマリとさせてくれますし、小説全体の構成も5章に分かれ、各登場人物の目線から物語を語る手法は、見事でした。
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今年の読書(67)『神様は勝たせない』白河三兎(ハヤカワ文庫)

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今年の読書(67)『神様は勝た...
中高一貫の私学の中等部のサッカー部を中心に据え、県予備選の準々決勝を舞台に繰り広げられるスポーツ青春ドラマであり、親子関係のドラマでもありました。

顧問の<阪堂創一>は、全国大会出場を掲げて部員を指導していますが、チームプレーのサッカーながら、部員それぞれに個人的な思惑が絡んでいます。
準々決勝は0-2でリードされた状況で試合を諦めないキーパー<潮崎隆弘>の励ましで同点に追いついてPK線に持ち込まれる場面で、メンバー6人のサッカーへの関わりが6章構成で綴られます。

サッカーの経験がなく、<広瀬はるな>に鍛えながら練習してキャプテンになった「守護神」ことキーパーの<潮崎隆弘>、女子サッカーの経験があり厳しい指導で「鬼マネージャー」と呼ばれる<広瀬はるな>、顧問の息子であることを引け目に感じている「点取り屋」の<阪堂隼人>、なぜか万年補欠に甘んじている<宇田川定史>等、個性あるメンバーの人間関係を各章を通して相関的に描いています。

なぜ顧問が全国大会を目指すようになったのか、ミステリーっぽい謎を含ませて読者を思わぬ方向に導きながらも、最後はホロットする結末を迎え、気分よく読み終えれました。
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今年の読書(66)『遭難者』折原一(文春文庫)

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今年の読書(66)『遭難者』折...
学生時代を山岳部で過ごした<笹村雪彦>(28歳)は、2年先輩の<浅川>が勤める松本市の「大崎商事」に就職、会社にある「あすなろ岳友会」に所属しています。

4月後半の日曜日、会社の同僚5人のパーティーで北アルプス登山中、「不帰の嶮」にて足を踏み外し滑落、8月に遺体が発見されます。

49日が過ぎ、ようやく会社の独身寮の荷物の整理をはじめた母<時子>と妹<千春>は、<雪彦>の登山ノートの中に「N子」名義のラブレターを発見、そこには「S」という男との三角関係を匂わす文面が綴られていました。

遭難時の5人のパーティーに参加した2名の女性とも、氏名は別として頭文字「N」が付き、母は<雪彦>の追悼登山に参加しながら真相を究明しようと動きますが、その母も同じ場所から転落して亡くなってしまいます。

<雪彦>からの絵葉書、登山届、現地の地図、死体検案書など登山に関する詳細な資料を挟み込みながらの構成は、登山の部外者にとっても興味ある構成で、残された<千春>の真相追及に思わず力が入る一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(64)『天の梯』<みをつくし料理帖>髙田郁(ハルキ文庫)

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今年の読書(64)『天の梯』<...
第1巻の 『八朔の月』 が、文庫書き下ろし作品として刊行されたのが2009年5月18日、前作の9巻目 『美雪晴れ』 に次ぎ、 第10巻目の本書『天の梯』(2014年8月18日刊行)で、<みをつくし料理帖>シリーズは完結になりました。

主人公<澪>は、享和2(1802)年7月1日に発生した淀川の大洪水で両親を失い、8歳のときに料理屋「天満一兆庵」の女将<芳>に引き取られ、主人の<嘉兵衛>は、<澪>の料理への天分を見出します。

大阪の店が焼け<嘉兵衛>をなくした<芳>は<澪>連れ、東京の江戸店を任せていた息子<伊兵衛>の店に来てみれば店は人手に渡り、行方知らずになっていました。

「天満一兆庵」の再建を願う<芳>とともに<澪>は、勝手の違う江戸で女料理人として名を馳せていきます。
想い人である御膳奉行<小松原>との縁談も料理の道のために諦め、洪水で身売りされ、今は吉原の「翁屋」にて<あさひ太夫(野江)>となった幼馴染の身請け金4000両の工面に悩む<澪>でしたが、自分が考案した「鼈甲珠」のレシピを「翁屋」に売ることで<あさひ太夫>の身請けをの解決を図ります。
女が女を身請けしたとなると江戸中で問題になるだろうとということで、<澪>は一計を案じ、札差し<摂津屋助五郎>に協力を求め、<野江>と生まれ育った大阪で暮らすことを決意します。

いつもそばにいて<澪>を見続けていた医者の<源斉>は、ご典医の誘いを断り士分を捨て、大阪に医者の学校を作る夢を語り、<澪>との婚儀を整えて先に大阪に旅立ちます。

<澪>の長年の夢である<あさひ太夫>の吉原の大門からの送り出しの場面では、思わず涙腺が緩んでしまいました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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