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神戸:ファルコンの散歩メモ

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今年の読書(5)『悲嘆の門 (中)』宮部みゆき(新潮文庫)

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今年の読書(5)『悲嘆の門 (...
前回(4)の 『悲嘆の門 (上)』 に続く 『悲嘆の門 中)』になります。

アルバイト先のサイバーパトロール会社「クマー」の同僚「森永」の行方不明事件を追及している「三島孝太郎」は、探し出した通称「お茶筒ビル」に潜入しますが、そこで元刑事の「都築」と鉢合わせしてしまいます。「都築」も屋上のガーゴイルのその後が気になり忍び込んでいました。

前回「都築」が訪れたときにありました屋上の鳥形のガーゴイルが消えうせ、「都築」と「孝太郎」は、夜通し交代で屋上を見張っていましたが、鳥の怪物ともいうべき女戦士「ガラ」と遭遇します。「ガラ」は<言葉という精霊(すだま)の生まれ出ずる領域>の<三之柱を守護する戦死>であり、この<領域(リージョン)>に紛れ込んたとの説明を受ける「都築」と「孝太郎」ですが、二人には「ガラ」の言っていることが理解できません。

その後、「孝太郎」の前に<狼>と名乗る女子高生<森崎友理子>が現れ、言葉を読み取る「ガラ」の存在意義を説明します。

かたや、「孝太郎」の憧れである「クマー」の女性経営者「山科鮎子」が京都にて連続殺人事件の手口で殺される事件が起こり、正義と復習に燃えた「孝太郎」は「ガラ」と取引をすることを決意、「山科」の殺人犯を「ガラ」の餌食として捧げます。

この(中巻)の後半部分において、「悲嘆の門」の意味が登場します。小説という物語の中に物語の<始源の地>を登場させ、悩ましい<領域>の<輪>を再認識させながら中巻(342ページ)を読み終えました。
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今年の読書(4)『悲嘆の門 (上)』宮部みゆき(新潮文庫)

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今年の読書(4)『悲嘆の門 (...
本書『悲嘆の門』は2015年(平成27年)1月20日に単行本(上・下)2冊で刊行されていますが、文庫本では2017年(平成29年)12月1日に(上・中・下)の3分冊として発行されています。

序章部分の導入部に母子家庭の親子が登場5歳の女の子「真菜(マナ)」が登場しますが、これがのちの大きな伏線となります。

主人公(?)教育学部の大学1年生の「三島孝太郎」は、高校のテニス部の先輩「真岐」の誘いで、ネット上の法律に反するモノや犯罪に結びつくモノを監視・検閲を行うサイバーパトロールの会社「クマー」でアルバイトを始めます。

あるひ、全国で起きる連続殺人事件かと思わせる手足の指を切り取る不可解な事件の監視チームに入りますが、その過程で連続ホームレス失踪事件に興味を持った同僚「森永」が、個人的に失踪した老人の調査に出かけたまま、行方不明になってしまいます。

「孝太郎」は「森永」からメールで送られてきた1枚の「鳥の絵」を手掛かりに、「森永」の追跡に乗り出します。この絵を描いたのが、5歳の女の子「真菜」でした。

物語と並行して、定年で引退した元警視庁捜査一課の刑事「都築」が登場。町内の老人「千草タエ」が、通称「お茶筒ビルという4階建てのビルの屋上に飾られている鳥の形をしたガーゴイルが、毎日動いているという話を聞き、現地のビルに出向いていきます。

いろいろな事件や状況が複雑に絡み合う幕開けの上巻(370ページ)でした。
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今年の読書(3)『誰も必要としていないかもしれない』諏訪敦彦(フィルムアート社)

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今年の読書(3)『誰も必要とし...
映画監督<諏訪敦彦>(59)の『誰も必要としていないかもしれない、映画の可能性のためにー制作・教育・批評』が、1月24日公開される<モトーラ世理奈>を主演に迎えた最新作 『風の電話』 公開に先立ち、(フィルムアート社)より1月16日に発売されています。

本書は6章から構成されており、、自身の歩みを振り返る書き下ろし随筆、<北野武>やポルトガルの映画監督<ペドロ・コスタ>の作品を扱った映画評論、<西島秀俊>と<三浦友和>が<諏訪敦彦>とその作品を語る録り下ろしインタビューなどが収録されています。

また、かつて教鞭を執った東京造形大学(学長を2008年から2013年まで務め)での入学式や卒業式における式辞、『H Story』(2001年) ・ 『ライオンは今夜死ぬ』 (2017年)などのシノプシス、企画書といった貴重な資料も収められており。<諏訪>ファンならずとも映画ファンとして貴重な資料となる一冊だと思います。
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今年の読書(2)『残り全部バケーション』伊坂幸太郎(集英社文庫)

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今年の読書(2)『残り全部バケ...
本書『残り全部バケーション』は、2012年12月に単行本として刊行され、2015年12月25日に文庫本が発行されています。

連作短編として5篇が収録されていますが、どの短篇も全体を構成するそれぞれの伏線となっており、読後にド~ンとくる「伊坂ワールド」に浸れます。

物語は、「毒島」を頂点とするあくどい仕事に手を染める「溝口」と「岡田」の二人組を中心に進みます。「毒島」の手下として金になる仕事として乗用車の当たり屋たや恐喝を生業としてきた2人ですが、ある日「岡田」が足を洗いたいと「溝口」に申し出るところから物語は動き出します。

裏稼業に隠された人情と友情の世界が楽しめた一冊でした。
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今年の読書(1)『社長室の冬』堂場瞬一(集英社文庫)

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今年の読書(1)『社長室の冬』...
日本新報記者「南康祐」を主人公とする 『警察(サツ)まわりの夏』 (2017年5月9日文庫刊) ・ 『蛮政の秋』 (2018年12月18日文庫刊)に続くメディア三部作の完結編が本書『社長室の冬』(2019年12月25日文庫刊)です。

日本新報記者である「南康祐」は、会社にとって不利益な情報を握る危険人物であるとみなされ、編集局から社長室へと異動させられました。

日本新報社は日本を代表する巨大新聞社のひとつですが、発行部数の減少により経営危機に陥っており、社長の「小寺政男」はこのままでは未来はないと判断し、外資系IT企業AMC社への身売り交渉を始めていましたが、突如急死してしまいます。九州に左遷されていた「新里明」が急遽後任社長に就任することとなり、売却交渉を引き継ぐことになります。

「南」は「新里」社長のもとでAMC社との売却交渉を担当することになります。交渉相手はAMCジャパン社長「青井聡太」、「青井」は20年前は日本新報の記者で、海外勤務の予定が反故にされて新設のメディア事業に異動させられたことから辞表を」提出した過去を持っています。 移動を命じたのは「新里」でした。

売却交渉は「新聞紙の廃刊」という条件で難航。「南」の同期の記者は会社に見切りをつけて続々とやめていき、また労働組合から会社OBであり個人筆頭株主である「長澤英昭」まで多方面から徹底的な反発を受けてしまいます。

日本新報社は「長澤」の嫌がらせや衆議院議員であり民自党政調会長である「南」にとって因縁のあるメディア規制に執念を燃やす「三池高志」が登場し、売却阻止が画策されますが、最後には「三池」も失脚する中、AMC社との売却交渉は破棄されてしまいます。このさきも 日本新報社の経営が不透明な状況なのですが、「南」は原点に返り再度記者としての道を歩み出そうとします。
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今年の読書(70)『さわらびの譜』葉室麟(角川文庫)

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今年の読書(70)『さわらびの...
今年最後の読書記は、<葉室麟>(1951年1月25日~ 2017年12月23日)の時代小説『さわらびの譜』(文庫本2015年12月25日発行)で締めくくりです。2011年に 『秋月記』 を読んで以来著者の作品は遠のいていましたが、今年は 『川あかり』 ・ 『紫匂う』 ・ 『花や散るらん』 ・ 『柚子の花咲く』 ・ 『冬姫』 と続き本書で6冊目になります。

主人公は扇野藩有川家の長女「伊也」18歳で、6歳の時から父「有川将左衛門」から日置流雪荷派の弓の指導を受け「弓矢小町」と謳われる藩内屈指の弓上手です。

八幡神社において弓を競いますが大和流の「樋口清四郎」に敗けますが、彼に惹かれる「伊也」でしたが、流派が違うということが大きく響き、2歳下の妹の「初音」に「樋口」からの縁談が持ち込まれます。

「樋口清四郎」から弓の指導を受けた際、「伊也」はあらぬ噂を立てられ、藩主「晴家」の不興を買い、「清四郎」は謹慎処分を受けてしまいますが、その汚名をそそぐため、「伊也」は「清四郎」と弓勝負で立ち合うことになります。

片や「有川家」には「新納左近」なる武士が身を寄せていて、藩主の腹違いの兄になるのですが、扇野藩のくすぶる裏事情と絡め、<葉室>独特の武士道の世界と親子や姉妹の揺れる心の模様が描かれていきます。

高潔な弓道に対する志が、心に響く感動の世界が楽しめた一冊でした。
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今年の読書(69)『民王』池井戸潤(角川文庫)

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今年の読書(69)『民王』池井...
奥付の(令和元年10月25日初版発行)だけを見て、<池井戸潤>の最新作かと購入しました『民王』ですが、本書は2010年5月にポプラ社にて刊行、2012年6月に文藝春秋において文庫化され、2015年7月期にテレビ朝日系にてドラマ化されているのを、あとがきで知りました。

混迷する政局の中、前任総理が早々と辞任、熾烈な総裁選を勝ち抜いて内閣総理大臣に就任した与党民政党の政治家「武藤泰山」は、低迷にあえぐ支持率を上げようと意気込んだのも束の間、まさかの「事件」に巻き込まれてしまいます。

総理大臣の「武藤泰山」と、息子で大学生の「翔」の人格が国会答弁中に突然入れ替わってしまう出来事が発生。混乱を避けるため、周囲には秘密のまま互いの仕事や生活を入れ替わった状態で、秘書の「貝原」の協力を得て過ごすことになります。

「翔」は政治に全く興味がなく、ろくに漢字も読めないため首相として「貝原」の用意した国会答弁を読むのも苦労する状況で、国民に醜態をさらすことになります。一方「泰山」は、「翔」の就職活動で面接官と口論、大学の授業の代理出席で講師ともめて苦闘することになります。

政権交代を目論むアメリカ企業の陰謀で脳波をコントロールされていることが判明、直面する国家の危機はことなきを得ますが、「武藤泰山」は政治家を志した頃の初心を思い出すのでした。

読みながら<中山七里>の総理の身代わりとなる 『総理にされた男』 を思い出しておりました。内容的に似通っており、著者の作品としては、軽薄なコメディー作品で、読後感はよろしくありませんでした。
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今年の読書(68)『みかづき』森絵都(集英社文庫)

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今年の読書(68)『みかづき』...
文庫本の本書『みかづき』(2018年11月25日)は、第12回(2017年)中央公論文芸賞受賞作で、617ページという長編でしたが、戦後日本における教育の実態を背景とし長さを感じることなく読み終えれました。

1961年(昭和36年)、千葉県習志野市の小学校の用務員だった22歳の「大島吾郎」は、用務員室で私的な勉強会を始めていました。そこに来る児童のひとり、「赤坂蕗子」に「吾郎」は非凡なものを認めます。「蕗子」の母の「千明」は、家柄の違う文部官僚の男との間に設けた「蕗子」を、シングルマザーとして育てていました。「千明」は「吾郎」に対し、2人で補習塾を開くことを提案します。2人は結婚して近隣の八千代市に「八千代塾」を開き、着実に塾の経営を進めていきます。「吾郎」は教育者「ワシリー・スホムリンスキー」の評伝を書き、2人の間に娘(蘭・菜々美)も2人生まれ、「千明」の母の「頼子」も塾にくる子どもたちの相談役に勤めます。しかし、2人の塾経営をめぐる路線の対立が起き、「吾郎」は塾長を辞め家を出てしまいます。「千明」は塾を進学塾「千葉進塾」にし、津田沼駅前にも進出して、地域の有力な存在となっていきます。

「千明」の長女の「蕗子」は、母親とは離れ、一時期連絡も絶ち、塾の公私であった夫「上田」とともに秋田県に住み、公立学校の教員として、塾とは違う形での子どもたちとの触れ合いを追求します。次女の「蘭」は、塾の経営に関心をもつようになっていきます。三女の「菜々美」は親に反抗し、外国の学校に行くなど、子どもたちの世代はばらばらに歩みはじめます。

「蕗子」は夫の死後、二人の子供「一郎」と「杏」とともに実家に戻ります。「一郎」は就職がうまくいかずに、「蘭」が経営する配食サービスの会社「らんらん弁当」で配達を担当しますが、その途中で、貧困のために塾にも通えない子どもたちの存在を知り、そうした子ども向けの無料の学習塾を立ち上げます。その中で伴侶もみつけた「一郎」は、自分の中に流れる〈大島吾郎の血〉を自覚して、新しい人生の道を開拓しようとするのでした。
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今年の読書(67)『海よりも深く』矢口敦子(集英社文庫)

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今年の読書(67)『海よりも深...
これまでに様々な夫婦の、親子の、家族の愛を問い続けてきている<矢口敦子>の、文庫描き下ろしが、本書『海よりも深く』(2019年1月25日)です。

大学4年生の「佐藤真志歩」は、母親との関係をこじらせて、卒論で忙しいと言い訳をして冬休みに実家のある函館に帰省しませんでした。元日からカレー屋のアルバイトに出向き、店の前で迷子の少年「明」を見つけます。耳が聞こえないらしい少年が心配で、カレー屋の店長「柚木美咲」とかなり年上のボーイフレンド「尾崎宗二郎」たちと保護者探しに乗り出します。

身体に虐待を疑う痕跡を持つ少年を巡る事件が、「真志歩」が函館から東京の大学へと上京した背景、親に虐待された「明」や「宗二郎」の家庭環境やカレー店「華麗屋」を営む「柚木姉妹」たちの水害で行方不明の父親との関係などが明らかにされながら、それぞれの家族の深い闇を抉り出して描かれていきます。

最後は「宗二郎」と「明」の叔母「五味惠璃子」との現実的でない結末で終わりましたが、 家族のあり方と命の希望を描く心温まるミステリーでした。
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今年の読書(66)『珈琲店タレーランの事件簿6』岡崎琢磨(宝島社文庫)

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今年の読書(66)『珈琲店タレ...
本書は第1作 『珈琲店 タレーランの事件簿』 (2012年8月4日刊)に始まるシリーズとして第5作目の 『珈琲店 タレーランの事件簿5』 (2016年11月8日刊)に次ぐ『珈琲店 タレーランの事件簿6』(2919年11月21日刊)です。

「珈琲店 タレーラン」のバリスタであり、謎解きを趣味とする主人公「切間美星」の大叔父であり「珈琲店 タレーラン」のオーナーの「藻皮又次」が心臓病を患い入院してしまいます。すっかり弱気になった「又次」は、「美星」に4年前に亡くなった妻「千恵」が「又次」が割ったコーヒーカップに対して激怒し、一週間家を空けた7年前のことが気がかりで、その理由を「美星」に突き止めてほしいと依頼します。

「美星」は常連客の「アオヤマ」と様さを開始しますが、遺品の中から同年代の男性と写った写真を発見、浜松にて活動していた画家の「影井城」だと判明しますが、すでに死亡していました。写真に写った背景が天橋立だとわかり、現地へでむいていきますが・・・。

これまでの事件簿は短篇での構成でしたが、本作品はじっくりと謎解きが楽しめる一冊となっています。

最後に事件も解決して、「アオヤマ」が「美星」にプロポーズめいたところで終わるのですが、シリーズも本書で打ちきりかもしれません。
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