フランスの映画監督<フランソワ・トリュフォー>(88)の著作『ある映画の物語』(単行本1986年8月・草思社刊)が文庫本(1760円)となって再刊されています。翻訳は映画評論家の<山田宏一>が務めています。
本書は、『大人は判ってくれない』「1959年)・『突然炎のごとく』「1962年)・<トリュフォー>監督の最大のヒット作。 セザール賞主要十部門受賞。アカデミー外国語映画賞にノミネートされた『終電車』(1980年)などで知られ、ヌーヴェルヴァーグを代表する監督の1人である<フランソワ・トリュフォー>が、自作2作品を通して、映画という芸術形式の創造の秘密を赤裸々にかつ率直に綴った稀有な内容となっています。
本書ではディストピアSF『華氏451』(1966年)の撮影日記、映画作りの混乱する現場を描いた『映画に愛をこめて アメリカの夜』(1973年)のシナリオを通して<トリュフォー>の創作の秘密が明かされています。
俳優のわがままや技術上のトラブルなど、スケジュールに追い立てられる日々が多彩なエピソードで彩られています。
本書は、 第152回「2015年)直木賞を『サラバ!』で受賞した<西加奈子>のすでに発表されています短篇作品3篇に、加筆・修正して新たに文庫化(2020年3月11日刊)された一冊で、タイトルにもなっています、(1)『サムのこと』、(2)『猿に会う』、(3)『泣く女』が収録されています。
(1)『サムのこと』は、なぜ「サム」と呼んでいたのかもわからない「伊藤剛」を、26歳の男女5人が、交通事故で亡くなった「サム」の通夜に雨の日に出向く話です。ゲイの僕「有本」の目線で、「サム」との思い出が5人の仲間とのエピソードを絡ませ、「誰が死んでも。何が起こっても、日常は変わりない」人間関係を描いています。
(2)『猿に会う』は、中学1年生からの仲良し3人組の25歳のパラサイトシングル状態の日常を切り取り、日光東照宮の陽明門のパワースポットへ旅行する顛末を通して3人の友情関係の源を描いています。
(3)『泣く女』は、和歌山県の高校野球県大会も終わった「ノリオ」が、同じ野球部の幼馴染の「堀田」と、卒業記念に、太宰治に憧れている作家志望の「堀田」の提案で太宰の足跡を追うべく青森県に旅行に出かけます。
ダダイズムに憧れる「堀田」だけに、海辺で「泣いている女」を見かけ、太宰のごとき小説を夢見て希望に溢れます。
どの作品も、昔からの友情関係を基盤に描かれており、人生の節目にふと相手に感じる「何か」を機微にとらえた短篇だと感じました。
ちなみに、『猿に会う』は、動画配信サービス「dTVドラマ」として「乃木坂46」4期生が出演、4月10日(金)より全4話として配信されています。
グラフィックデザイナー<小笠原正勝>(1942年・東京生まれ)の仕事に焦点を当てた書籍『映画と演劇 ポスターデザインワークの50年 知られざる仕事師の全仕事』が、誠文堂新光社より4月8日に発売されています。
映画本編はもちろんのこと、関連するビジュアルとしての「映画ポスター」は、広告媒体として、また美術作品としても重要な役割を担っています。
本書はドイツの<ヴィム・ヴェンダース>監督、フランスの<ジャン=リュック・ゴダール >監督、ソ連の<アンドレイ・タルコフスキー>監督をはじめ、『ツィゴイネルワイゼン』(1980年・監督:鈴木清順)・『悲情城市』(1990年・監督:ホウ・シャオシェン(侯 孝賢))などのポスターを手がけたほか、<市川崑>『股旅』(1973年)によりカンヌ国際映画祭の第1回ポスターコンクールでグランプリを受賞している<小笠原正勝>の仕事をまとめています。
「映画ポスターの魅力 グラフィック・デザイナー小笠原正勝展」と題した特別展示が2019年11月16日(土)~2020年2月16日(日)まで静岡県浜松市中区「木下惠介記念館」(旧浜松銀行協会)が開催されたばかりですが、本書では、約500点のポスターを会社やジャンル、国別に掲載。制作にまつわるエピソードや、国立映画アーカイブの主任研究員・岡田秀則による特別寄稿など、全320ページで構成されています。
本書は、前作 『スケープゴート』 の続編にあたります。前作では、経済の立て直しにと民間人から金融大臣に就任した主人公<美沙希皓子>が、日本初の女性総理として就任するところで終わり、その後の手腕がたのしみでしたが、就任後の活躍が描かれたのが、本書『大暴落 ガラ 内閣総理大臣 三崎皓子』(2020年3月25日・中公文庫刊)です。「ガラ」とは、株価格の大暴落を指す業界用語として用いられています。
総理大臣就任と同時に、娘の「麻由」の所在が不明、同じ明正党の古手議員から組閣に対して横槍が入り任命が遅れる状況の中、関東地方をめがけて台風が2個接近、荒川が氾濫して東京都が水没する状況が迫り、<三崎>は、「災害緊急事態宣言」を発令しますが。好天気の東京ということもあり、危機感が伝わりません。
そんなおり、海外では円売りが進み日本銀行の信用失墜いう情勢の中で、20年利付国債の入札日を迎えようとしていました。
未曾有の水害対策、金融危機を総理の<三崎>の手腕が見どころとなる内容で、元債権ディーラーの経歴が生かされた構成に全507ページ、面白く読み切りました。国の危機管理、現在の新型コロナウイルス対策にも通じるところがありました。
新潮社は8日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、人気に火が付いたノーベル文学賞(1957年)受賞作家<アルベール・カミュ>(1913年11月7日~1960年1月4日)の長編小説『ペスト』(新潮文庫)の発行部数が、100万部を突破したと発表しています。
新潮社によりますと『ペスト』は、1947年にフランスで発表。ペスト感染の拡大防止のため封鎖されたアルジェリアの港町で闘う医師らを描いています。
新潮文庫版は1969年(昭和44年)刊行。最近は毎年5千部ほど増刷していましたが、今年は国内に感染が広がった2月以降に計7回、15万4千部を増刷し、累計約104万部となっています。
全国の書店員が「今いちばん売りたい本」を決める「2020年本屋大賞」(本屋大賞実行委員会主催)の大賞作品が7日発表され、<凪良ゆう>氏の『流浪の月』(東京創元社)が選ばれています。
『流浪の月』は、引き離された男女のその後の時間を描いた物語。家に帰れない主人公9歳のの少女「さらさ」は、公園で出会った19歳の青年「ふみ」に助けを求めます。青年は彼女を受け入れるも世間からは誘拐事件として捉えられてしまい、社会から一方的に被害者と加害者としてそれぞれ糾弾、同情されてしまいます。そして15年後に再開し、周囲の人を巻き込みながら新しい人間関係への旅立ちが描かれています。
著者の<凪良ゆう>氏は、2006年に『恋するエゴイスト』でデビュー。主にボーイズラブ系で活動しており、代表作に『神様のビオトープ』「2017年・講談社)や『すみれ荘ファミリア』「2018年7月14日・KADOKAWA)などがあります。
過去の受賞・ノミネート作は、映画化やドラマ化されるなど話題になったものも多く、<百田尚樹>氏の『海賊とよばれた男』、<三浦しをん>氏の『舟を編む』、<湊かなえ>氏の『告白』などが映画化され、『ビブリア古書堂の事件手帖』 が月9ドラマ(フジテレビ系)として放送されています。
2017年に『映像の境域 アートフィルム/ワールドシネマ』(森話社)でサントリー学芸賞受賞した映像作家・批評家の<金子遊>(46)による書籍『ワールドシネマ入門 世界の映画監督14人が語る創作の秘密とテーマの探求』ですが、イラストレーター・映像作家の<住本尚子>さんがイラストを手がけています。
同書には、ポルトガルの<ペドロ・コスタ>(61),兵庫県 神戸市出身<黒沢清>(64)、アルジェリアの<トニー・ガトリフ>(71)、アメリカ在住の観察映画ドキュメンタリー作家<想田和弘>(49)、ハンガリーの<タル・ベーラ>(64)、グルジアの<オタール・イオセリアーニ>(86)、イランの<モフセン・マフマルバフ>(62)、フィリピンの<ブリランテ・メンドーサ>(59)、イランの<アミール・ナデリ>(74)、キルギスの<アクタン・アリム・クバト>(62)、フィリピン ・バギオ出身の<キドラット・タヒミック>(77)、アメリカの<ベン・ラッセル>(44)、カンボジアの<リティ・パン>(56)、フィリピンの<ラヴ・ディアス>(61)ら世界各国の映像作家14人と<金子遊>の対話が収録されています。
モチベーションの源やテーマなど、さまざまな言葉、風土、食物、ファッション、生活習慣、信仰、音楽を通して、彼らのクリエイティブの根幹に迫っていきます。
数々の金字塔を打ち立てた、伝説ともいうべき映画『スター・ウォーズ』シリーズが、2019年12月20日(~2020年3月5日)に日米同時に公開された第9作 『スターウォーズ スカイウォーカーの夜明け』 にて、ついに完結しています。
その『スター・ウォーズ』シリーズの1977年の第1作目『スター・ウォーズ』(エピソード4/新たなる希望)から9作品すべてに出演した唯一の出演者が、著者<アンソニー・ダニエルズ>(74)の「C-3PO」役です。
本書『私はC-3PO』は、40数年前に<ジョージ・ルーカス>(75)に初めてあった時のエピソードから、最新作までの撮影の舞台裏が赤裸々に綴られた貴重な一冊となっています。
『スター・ウォーズ』の出演者が『スター・ウォーズ』関連の書籍を出すのはこれが初めてになります。これまで明かされなかったエピソードが満載されており、映画ファン必携の一冊です。一般書籍としては、 『スター・ウォーズ スーパーグラフィック インフォグラフィックで旅する はるかかなたの銀河系』 などが出版されています。
テレビドラマのシーズン2が<栗山千明>主演で、4月11日(土)からBSテレ8で放送されることが決定しています 「行動心理操作感・楯岡絵麻」 シリーズの最新刊「2020年3月26日刊)です。テレビドラマ化の影響もあるのでしょうか。既刊の文庫本の表紙図案が変更されています。
文庫本シリーズとしては、第1巻の 『サイレント・ヴォイス』 にはじまり、本書『ツィン・ソウル』で8巻目になります。
取り調べ中の被疑者の行動・しぐさで、相手の「嘘」を見抜く通称「エンマ様」こと「楯岡絵麻」を主人公に据え、難解な事件を解決してゆくさまが、心理学用語をちりばめながら展開されていきます。
脇を固める「西野圭介」や「綿貫慎吾」や「筒井」ら刑事たちも個性的で、犯人を追及してゆく刑事物とは違う路線のシリーズとして楽しめます。
タイトルの「ツィン・ソウル」ですが、前世では一緒だった魂が、この物理次元に存在をする際、二つまたは複数に別れた存在のことだと言われていることを意味しますが、収録されている4話の短篇の最後の『きっと運命の人』を象徴しているようです。
病院内で発生するトラブルに対して危機管理を行う元警視庁公安部の警部「廣瀬知剛」を主人公とする「院内刑事」シリーズとして、 『院内刑事(デカ)』 ・ 『院内刑事ブラック・メディスン』 に次ぐ第3弾が本書『フェイク・レセプト』「2020年2月14日刊)です。
連作短編集として、プロローグに始まりエピローグの間に、8章からなる短篇の構成で、「廣瀬」が勤める川崎殿町病院で起こる様々なトラブルを小気味よく解決していく様が楽しめました。
危機管理の対応に対して、神奈川県警から新しい「院内刑事」として「牛島隆二」と「前澤真美子」の2名の転職者がメンバーに加わり、新しい展開が期待できそうな下地ができています。
女性初の総理候補の出産、引きこもり青年が起こした発火事故、チンピラの医療費未払い事件、中国エステの事件、総理の孫の不登校事件、など社会性のある事件を医療の現場としての現実感あふれる内容で、また著者自身が元公安部出身という経歴を生かし、他の作品と同様に中国・韓国等の社会背景を詳しく分析される場面も登場、楽しめた一冊であり、第4弾が待ち遠しいシリーズです。
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