今年の読書(53)『誓約』薬丸岳(幻冬舎文庫)
7月
13日
<薬丸岳>は、「罪と償い」を主題にした作品が多いようで、 『虚無』 ・ 『刑事のまなざし』 ・ 『友罪』 ・ 『死命』 など、どれも重いテーマが展開されています。
本書の主人公「向井聡」は、或るレストランバーで経営者兼バーテンダーとして妻と小学三年生の父として、幸せな生活を送っていましたが、或る日、一通の手紙が届いたことにより、平穏な生活が壊されていきます。
悪事の限りを尽くしていた若いころの「向井」は、ヤクザから逃れるために逃走資金や整形手術の費用を工面するためにひとりの婦人と「誓約」をかわします。それは婦人の殺された娘の仇を、犯人が出所後に「向井」が果たすという殺人契約でした。
すっかり改心して約束を忘れていた「向井」の手元に「犯人が出所した旨の手紙が届きます。夫人はすでに亡くなっていますが、差出人は執拗に「向井」に接触をしてきます。
この時代らしくスマホのGPS機能を小道具としたスリリングな追跡物語が展開、最後まで息をつかせません。