今年の読書(51)『追想の探偵』月村了衛(双葉文庫)
7月
4日
特に映画ファンで、推理小説好きの方には、ぜひ読んでいただきたい本作です。映画ファンとしては、<原田マハ>の『キネマの神様』 以上の評価を私は与えたい一冊でした。大いに続編を期待したい作品です。
映画雑誌出版社「黎砦社」に勤める「28歳の「神部実花」は、古い特撮映画を扱う『特撮旬報』の編集者です。消息不明の監督や俳優陣などの大物映画人を探し出す<人探しの神部>と業界内で異名を取っています。
わずかな資料から、行方知れずの映画人を探し出し、当時の映画撮影の状況や人物たちに輝きを取り戻すべく、関係者の記憶を頼りに走り回る姿は、私立探偵の活躍以上に特撮映画に対する思い入れが伝わり、スクリーンから忘れ去られた人物や映画の小道具たちに光を与えていきます。
6編の話が納められていますが、どの物語も、最後には解決してゆくのですが、<神部>の『それが私の仕事だから』という台詞が見事に似合う主人公の登場でした。