2013年2月「太田出版」から単行本として出版された『夢を売る男』が、(幻冬舎文庫)として2015年5月1日に発行されています。
読書離れ、本離れが言われて久しいですが、その実態をベースにした物語が展開していきます。
主人公は、「丸栄社」の編集部長を務めている大手出版社の編集部勤務の経験がある「牛河原勘治」45歳です。
現代人のいびつな個人での出版欲望を逆手にとり、彼らの欲望を満足させることでベストセラー作家としての「夢を売り」、印刷代と称して金を稼ぐ裏面の出版業界が、コメfディータッチで描かれていきます。
大物になることを夢見ている27歳のフリーター、自分の教育論を世に問いたい教育ママの主婦、自分史を残したい団塊世代の男たち等が、登場してきます。
「小説を書く奴なんて、たいてい頭がおかしい」、また、「テレビ屋(著者は元放送作家・『探偵!ナイトスクープ』のチーフライターを25年以上務めた)の百田何某みたいに毎日違うメニューを出す作家も問題だ」と「牛河原」に語らせていますのには、笑いました。
<伊坂幸太郎>の『首折り男のための協奏曲』は、2014年(平成26年)1月に単行本が刊行され、2016年(平成28年)12月1日に文庫本化されている、全7篇からなる短編集ですが、これまた単なる読み切り短編集ではなくて、短篇の登場人物たちや出来事が、各短篇に相互に絡み合う、『残り全部バケーション』 や 『アイネクライムナハトムジーク』 などでお馴染みの≪伊坂ワールド≫が展開される構成でした。
ということで、複雑な物語を説明するのは単純ではありません。主人公「首折り男」は、一瞬にして相手の首を降り死に至らしめる殺人者良して登場しています。
隣人の老夫婦は、隣に住む男がテレビで報道されている殺人鬼の「首折り男」ではないかと疑う章から始まります。
また、「少年のいじめ」や「大人との約束」をキーワードに物語が展開、探偵の「黒澤」までが登場、27歳の若者たちの合コン話と場面は目真古しく変わってゆくのですが、5年間に発表された7篇のつながりに驚きながら知らぬ間に読み終えていた一冊でした。
映画評論家の<町山智浩>(57)が、自ら選出した「本当に怖い映画」9本を解説しています。
<町山智浩>は、1995年に雑誌『映画秘宝』を創刊した後、渡米。現在はカリフォルニア州バークレーに在住。近著に『映画には「動機」がある 「最前線の映画」を読む Vol.2』(集英社インターナショナル)、『最も危険なアメリカ映画』(集英社文庫)、『町山智浩の「アメリカ流れ者」』(スモール出版)などがあります。
本書で取り上げられているのは、<ジョージ・A・ロメロ>のデビュー作『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968年) ・ 革新的なドイツのサイレント映画『カリガリ博士』(1920年・監督:ロベルト・ヴィーネ) ・ アメリカ風刺的な心理ホラー映画『アメリカン・サイコ』(2000年・監督:メアリー・ハロン) ・ アリ・アスターの長編映画デビュー作 『ヘレディタリー/継承』 (2018年) ・ 『ポゼッション』 (2012年・監督:オーレ・ボールネダル) ・ 『テナント 恐怖を借りた男』(1976年・監督:ロマン・ポランスキー) ・ 『血を吸うカメラ』(1960年・監督: マイケル・パウエル) ・ 『たたり』(1963年・監督: ロバート・ワイズ) ・ 悪魔のような伝導師を描くカルト作『狩人の夜』(1990年・監督: チャールズ・ロートン) などです。
映画ファンとしても、好き嫌いが出るホラー・サイコ・スリラー部門だけに、楽しめる内容でした。
元AV女優<蒼井そら>(36)の半生を、作家<藤原亜姫>がストーリー化した小説『夜が明けたら 蒼井そら』が、(主婦の友社)から紙版と電子版で発売(2020年6月19日)されています。
2002年6月14日に『Bejean』誌でグラビアデビューした<蒼井そら>。それから4年間、日本を代表する国民的セクシータレントとして、グラビア、バラエティ、アダルトビデオ、Vシネマなどで幅広く活躍。2018年1月1日に結婚し現在は双子の母となっています。中国でもタレントとして活動し、中国版Twitter・Weiboではフォロワー数1900万人を超えています。
著者の<藤原亜姫>は2008年ケータイ小説史上空前のアクセス数を誇った 『インザクローゼット blog中毒』 (2016年8月12日・河出書房新社刊)で作家デビュー。他著書に同作品のスピンオフ『クローゼット・フリーク』(2009年12月2日・河出書房新社刊)・『東京娼女』(2010年7月21日・河出書房新社刊)などがあります。人間の弱みや闇を独自の視点で痛快な物語に変えるのを得意とする作家です。
本書には幼少期からグラビアデビュー時の写真、そして現在の撮り下ろしカットも掲載されています。また電子限定版には通常版には収録されていない未公開エピソードや未公開カットも収録予定されているようです。
『私に、魔法をかけて Disney Princess Rule』の<ウイザード・ノリリー>の書籍『水曜の夜は ディズニー映画のおまじないを』(2020年6月1日)です。
本書は月刊『ディズニーファン』の連載「ハクナ・マタタ ディズニー ことばの魔法」を加筆して書籍化されています。平日の真ん中である水曜日の夜に「ディズニー映画の≪魔法の言葉≫で心に栄養をあげよう」をコンセプトに、ふと迷っている人に進むべき道を示してくれるようなメッセージを 、ディズニー映画の名場面と名セリフを絡めて紹介しています。
オールカラー96ページでイラストと文章が見開きで楽しめます。テーマ別に5つの章(第1章 明日へ進む力 第2章 恋に落ちたら 第3章 自分を大切にする心 第4章 絆をつむぐ 第5章 夢をかなえるために)からの構成になっています。
ありのままの自分を肯定する「プーさん」、自分の価値を信じ続けた「シンデレラ」といったキャラクターのほか、「美女と野獣」・「アラジン」 ・「シュガー・ラッシュ」・「ベイマックス」 ・「ズートピア」・「トイ・ストーリー」・「塔の上のラプンツェル」などのキャラクターやセリフが取り上げられています。また「ヴィランズの教え」として、闇に飲み込まれないための方法も掲載されています。
女性署長の登場としては、<安東能明>の 『出署せず』 や 『広域指定』などの<阪元真紀>警視がいますし、<堂場瞬一>の 『錯迷』 には、不審死を遂げた<桜場里佳子>署長が登場していますが、副所長という立場での主人公は初めてではないでしょうか。
階級順位と何期生なのかが幅を利かす縦社会の警察組織において、副署長という微妙な立場が見事に生かされてました。著者の<松嶋智左>は、元女性白バイ隊員という経歴の持ち主だけあって、男社会といわれる警察組織と警察署をうまく舞台として描き切っています。
主人公の<田添杏美>警視は、美人とは言い難い容姿で、独身です。33年間警察官として勤務し、とある県の小さな日見阪署に副所長として赴任して半年ほどの夏の日に台風が直撃するという夜に、警察署内の敷地内で、地域課の「鈴木」係長がナイフでの刺殺体として発見されます。
大雨に打たれた現場では証拠の採集も期待できない中、犯人はまだ署内にいる警察官と思われ、「田添」は、所轄の名誉にかけて本庁の手を煩わせることなく、殺人捜査のベテランである刑事課長の「花野」と対立しながらも犯人を挙げることに奔走します。
署内の殺人事件を柱として、台風の夜に起こる、警察署としての救助活動や、留置場内での不祥事、所内でのトラブルなどが絡み合い。複雑な群像劇が展開して行きます。犯人として警察官が逮捕されるのですが、著者はさらなる展開を見せつけ、台風一過の嵐の夜の一夜を巡る濃厚なミステリーを描きます。続編を期待したい、出来ばえでした。
社会学者、映画批評家<宮台真司>、兵庫教育大学大学院学校教育研究科准教授<永田夏来>、音楽研究家<かがりはるき>の共著として『音楽が聴けなくなる日」(2020年5月15日)が(集英社新書)として刊行されています。
過去には、同タイトルで2020年6月11日に83歳で亡くなられた<服部 克久>氏も『音楽が聴けなくなる日』ー音楽CDの再販制度維持のための序曲 ー(1996年12月1日・平凡社刊)を著しています。
2019年3月12日夜、コカインを使用したとして麻薬取締法違反容疑で逮捕された<ピエール瀧>(電気グルーヴ)が、起訴や判決を待たず翌日にレコード会社は全ての音源・映像の出荷停止、在庫回収、配信停止を発表するなど、近年ミュージシャンの薬物事件ではこのような対応が即座になされてきています。
同書では、こうした「自粛」社会に対して、著者がそれぞれの立場から問題の背景と構造を明らかにし、現代社会における「音楽」「薬物」「自粛」の在り方について意見を述べています。
巻末には過去の「音楽自粛小史」が収録されています。帯文には<坂本龍一>が推薦文を書いています。
いまどき「貸本屋」があるのかなと興味を引いた<桔梗楓>のタイトル『京都北嵯峨シニガミ貸本屋』(2020年5月17日刊)です。わたしが子供のの頃、生家に近い神戸市兵庫区下三条町にありました貸本屋「山田書店」さんには漫画本を含めてよくお世話になりました。いまだ古書店として営業されているのでしょうか、懐かしく思い出します。
本書の舞台となる「貸本屋」は、「生」の未練を斬る場所として存在し、自分の人生を書き表した本の一行だけを修正することが出来、思い残すことなく黄泉の国へt旅立つことが出来ます。
主人公の高校生の「穂波晶」は、東京から祖母の住む京都北嵯峨に夏休みを利用して訪れた際に、死人しか見えない貸本屋「宵道」になぜか迷い込みます。そこには、三途の川の番人と称する和服姿のイケメン店主「比良坂」と「シニガミ」という名の白い猫がいました。本棚には人の人生をつづった本が並んでいます。
「晶」は、「比良坂」や「シニガミ」と一緒になって、成仏できない亡者の悩みを見つけ出し、修正個所を手助けしていきます。
なぜ「晶」が、死者しか見えない貸本屋「宵道」に訪れることが出来たのかは、ネタばれになりますすので、割愛させていただきます。人生が二度あればということを感じさせてくれるハートフルファンタジードラマが楽しめた肩の張らない一冊でした。
バー好きで、歴史に興味もあり、著者<鯨統一郎>の 『ニナイカナイの語り部』 や 『哲学探偵』 などが気に入っていましたので、本書『歴史はバーで作られる』を手にしてみましたが、正直。期待外れの内容でした。タイトルを皮肉るわけではありませんが、酒の場の雑学ネタとしてはいいのでしょうが、構えて読む一冊の書物の内容としてはどうかなぁというお気軽な内容でした。
新鋭気鋭の歴史学者の「喜多川猛」とその教え子の帝桜大学史学科3年生の「安田学」たちが、ぶらりと入店したバー<シベール>は、歴史研究家と名乗る80歳前後の老人が先客として一人だけいる、美人の女性バーテンダーの店でした。
酒の会話として、歴史談義に花が咲く4人でしたが、ブラリと寄った初日には、「源義経は、スパイだった」と老人が唱えるとんでもない新説を巡って歴史推理合戦が始まります。「喜多川」と「安田」たちは、日曜日ごとにバー<シベール>を訪れ、「アマゾネス葉卑弥呼の子孫」や「八百屋お七は日本のジャンヌダルク」とかの話題で盛り上がります。
美人バーテンダーと老人の関係が気になる「安田」ですが、バーテンダーの繰り出す歴史の解釈を覆せない「喜多川」と「安田」たちでした。
本書『花の鎖』の単行本は2011年3月に刊行、文庫本としては2013年9月10日に発行されています。
趣味の「登山」経験を生かした 『山女日記』 が単行本として2014年7月10日に刊行される前に、本書も「登山」を伏線として大きな意味を持つ構成でした。やはり、同一著者の作品は時系列に読むのが、いいようです。
毎年届く謎の花束は、差出人「K」としか書かれていません。 両親を亡くし、愛する祖母もガンで入院中、さらに講師として働いていた英会話スクールが破綻し金銭的に困っている27歳の「梨花」を中心として物語は始まります。 建設会社で働いていましたが、伯父夫婦のすすめで営業職の「和弥」と結婚しましたが、子供が出来ずに悩む「美雪」。 公民館で水彩画教室の講師をしつつ、和菓子屋でバイトをしている「紗月」。 そして、「雪」「月」「花」の字を名前に持つ3人の女性3人の人生にからみつき影を落とす謎の人物「K」。
舞台は、東京から新幹線で一時間以上かかる地方都市から、さらに在来線で三〇分ほど行った田舎町での出来事が、町の中心の「アカシア商店街」のキンツバで有名な「梅花堂」が関連してきます。渓谷を有した風光明媚な土地柄として、画家の「香西路夫」の美術館の設計コンペが伏線として登場してきますので、同業者として業界ネタとして楽しめました、
第一章から第六章まで、「花」「雪」「月」の節に分かれ、それぞれのヒロインの出来事が紡がれ、女性3人の物語が語られていきます。
設計士を夢見ていた「和弥」が、「美雪」のいとこ「陽介」が立ち上げた建築事務所に転職することになりますが、任せられたのはまたしても営業職でした。
大学時代、山岳部に所属していたイラストレーターの「紗月」は、当時の仲間「希美子」から白血病の夫「浩一」のドナーとして助けて欲しいと頼まれます。大学時代「浩一」とはかつて互いに想い合っていましたが、理由があって離別していました。「希美子」の願いをきくべきかどうか葛藤する「紗月」は、水彩画教室を開く公民館の職員「前田」に誘われ、過去の因縁を断ち切るために八ヶ岳に登る決意をします。
複雑な人間関係が、最後に紐解かれたとき、驚きの事実が胸を打つ、感動の人間ドラマとしてのミステリーでした。
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