今年の読書(85)『汝よさらば』門田泰明(祥伝社文庫)
11月
1日
<門田泰明>といえば、代表作の『特命武装検事・黒木豹介』シリーズをはじめ、医療関係の『外科医・津山慶子』シリーズなどを楽しんできましたが、現代小説には珍しく、日本刀を用いた剣劇シーンが多く、その迫力あふれる文章表現から、本人も剣術・剣道の経験者であると言われています。近年では得意の剣劇描写を生かして、時代小説も多数執筆しているようで、本書もその一連の作品に当たるようです。
副題から分かりますように主人公は、浮世絵師「宗次」なのですが、導入部には、駿河国田賀藩の中老「廣澤和之進」が登場、藩の謀反を抑え込むために災難が降りかかるのを避け妻「美雪」を実家の西条家に戻しますが、文中「離縁」のことは出てこないのですが、 「美雪」は「宗次」の婚約者として物語は進みます。「廣澤」は「美雪」を奪われた復讐心に燃え、打貫流の剣術を極めるために道場主の遠縁に当たる人物たちの元で過酷な修行を積み重ねていきます。
一方「宗次」の居る江戸では、老中「堀田正俊」の暗殺を狙う一味が登場、「宗次」も襲撃される立場となり、怒涛の一巻目が終わります。
娯楽小説の押え処は随所に散りばめられており、「美雪」を中心とする「廣澤」と「宗次」との対立を中心に、江戸徳川幕府への謀反が並行して展開されていきそうです。