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今年の読書(87)『十津川警部、沈黙の壁に挑む』西村京太郎(光文社文庫)

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今年の読書(87)『十津川警部...
著者<西村京太郎>は鉄道ミステリーと呼ばれる作品が多い中、これは鉄道に関するものは登場せず、<十津川警部>を主人公とする刑事物で、初出は全日本ろうあ連盟の『季刊MIMI』に(1990年6月号~1992年2月号)に連載された作品『海の沈黙』で、1996年12月20日に改題され発行されています。

殺人事件の容疑者として60歳の「秋本つね子」が逮捕されます。彼女は資産家の社長の家で家政婦をしていましたが、彼女の家から盗まれたダイヤの指輪が自宅から発見され、その主人夫婦殺しの容疑をかけられていますが、耳が聞こえないので捜査が進まず、福祉事務所の手話通訳士の「小早川京子」が間に入りますが、かたくなに沈黙を押し通します。

そんなおり、第二の殺人事件が起こります。被害者は、私立探偵で、彼の事務所から見つかった写真から「秋本つね子」と同じ家政婦をしている「野口みどり」が男と映っている写真が見つかります。<十津川警部>は、さきの社長夫婦の殺害事件と関係があると思い、合わせて捜査に入ります。

「秋本つね子」の一人息子の「神田浩」は、ス-パー社長の娘と結婚、営業主任として働いており、社長は社会への奉仕としてろうあ者の老人ホームを建てる計画を持っていました。
「神田浩」が母親のために依頼した「関口弁護士」は、ろうあ者ですが、彼は口話法と手話の両方をこなせますが、「秋本つね子」のために「小早川京子」を事務所員として採用しますが、事件のカギを握っている「秋本つね子」が、拘置所内で自殺を図り、一命を取り留めたものの記憶障害が心配され状況の中、さらに第三の殺人事件が起こり、<十津川警部>の捜査も複雑になっていきます。

ろうあ連盟の季刊誌連載ということもあるのでしょうが、ろうあ者への温かい眼差しと、ろうあ者の健聴者への不信感に焦点を当てた、<十津川警部>シリーズとして異色作の社会派ミステリーでした。
#ブログ #文庫本 #読書

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