今年の読書(125)『出署せず』安東能明(新潮文庫)
9月
13日
前作で、警視庁総務部企画課係長職から部下の不祥事で綾瀬署の警務課課長代理に左遷されていますが、春の人事異動でキャリアの女性署長として36歳の<坂元真紀>警視が着任してきます。
現場経験の乏しい署長の考え方と、現場の刑事たちの考え方との擦れ違いが生じる職場環境の人間関係が面白く、本書には4話が納められていますが、タイトルにある表題作は4話目で、前半3話の事件を踏まえながら総集編的なまとまりを見せる構成で、第4話だけでも200ページを超え、読み応えのある内容でした。
署長を筆頭に、脇役陣として56歳の副署長<助川>、<浅利>刑事課長たちの振る舞いも人間的で、刑事でもない<柴崎>が現場に赴き、推理を働かせながら犯人逮捕に至る経過と共に、警察組織自体の人間ドラマにも興奮させられました。
女性署長<坂元>と現場の刑事たちとの軋轢の中、一人奮闘する<柴崎>との物語は、シリーズとしてまだまだ読み続けたい警察小説です。