本書『花の鎖』の単行本は2011年3月に刊行、文庫本としては2013年9月10日に発行されています。
趣味の「登山」経験を生かした 『山女日記』 が単行本として2014年7月10日に刊行される前に、本書も「登山」を伏線として大きな意味を持つ構成でした。やはり、同一著者の作品は時系列に読むのが、いいようです。
毎年届く謎の花束は、差出人「K」としか書かれていません。 両親を亡くし、愛する祖母もガンで入院中、さらに講師として働いていた英会話スクールが破綻し金銭的に困っている27歳の「梨花」を中心として物語は始まります。 建設会社で働いていましたが、伯父夫婦のすすめで営業職の「和弥」と結婚しましたが、子供が出来ずに悩む「美雪」。 公民館で水彩画教室の講師をしつつ、和菓子屋でバイトをしている「紗月」。 そして、「雪」「月」「花」の字を名前に持つ3人の女性3人の人生にからみつき影を落とす謎の人物「K」。
舞台は、東京から新幹線で一時間以上かかる地方都市から、さらに在来線で三〇分ほど行った田舎町での出来事が、町の中心の「アカシア商店街」のキンツバで有名な「梅花堂」が関連してきます。渓谷を有した風光明媚な土地柄として、画家の「香西路夫」の美術館の設計コンペが伏線として登場してきますので、同業者として業界ネタとして楽しめました、
第一章から第六章まで、「花」「雪」「月」の節に分かれ、それぞれのヒロインの出来事が紡がれ、女性3人の物語が語られていきます。
設計士を夢見ていた「和弥」が、「美雪」のいとこ「陽介」が立ち上げた建築事務所に転職することになりますが、任せられたのはまたしても営業職でした。
大学時代、山岳部に所属していたイラストレーターの「紗月」は、当時の仲間「希美子」から白血病の夫「浩一」のドナーとして助けて欲しいと頼まれます。大学時代「浩一」とはかつて互いに想い合っていましたが、理由があって離別していました。「希美子」の願いをきくべきかどうか葛藤する「紗月」は、水彩画教室を開く公民館の職員「前田」に誘われ、過去の因縁を断ち切るために八ヶ岳に登る決意をします。
複雑な人間関係が、最後に紐解かれたとき、驚きの事実が胸を打つ、感動の人間ドラマとしてのミステリーでした。
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