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神戸:ファルコンの散歩メモ

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今年の読書(78)『卵町』栗田有起(ポプラ文庫)

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今年の読書(78)『卵町』栗田...
主人公<サナ>は、入院中の母<サラ>から「私が死んだら、ある人に知らせてほしい」との遺言通り、その相手<シイナ>が住むと教えられた「卵町」に会社を辞めて出向きます。

「卵町」は名称通り楕円形をしており、町の中は終末期を迎えた患者のための医療施設と、その従業員たちが静かに住んでいました。
個人情報の守秘義務が徹底されており<シイナ>の情報が判明せず、<サナ>は<シイナ>のことを探すために、女家主<スミ>のアパートに腰を落ち着けます。
散歩中に彫刻家の<エイキ>やその友達の<クウ>と知り合い、<クウ>の妻が昔お世話になった介護士が<シイナ>だとわかり、無事に母の遺言通り対面することができます。

いまはカウンセラーになっている<シイナ>から、看護師として働いていた母の過去を知り、わだかまりのあった母に対する気持ちが薄らいでいきます。

生命力あふれる<卵>という隠喩を用い、生と死をファンタジーの世界に取り込んだ一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(77)『インタビュー・イン・セル殺人鬼フジコの真実』真梨幸子

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今年の読書(77)『インタビュ...
本書は、前作の 『殺人鬼フジコの衝動』 を引き継ぐ内容で構成されていますので、刊行順に読まないとこのシリーズの面白さは半減してしまいます。

月刊グローブの編集室に、男女7人をリンチの果てに殺した罪で起訴された<下田健太>の母親<茂子>が独占インタビューに応じるという代理人と称する人物から連絡が入ります。
<下田健太>は裁判で無罪を言い渡され、内縁の妻<藤原留美子>は無期懲役の判決を受け拘置所内で自殺を遂げてしまいます。

検察側も2週間のあいだに控訴をしなければ<下田健太>の無罪が確定してしまうなか、月刊グローブ編集部の<井崎智彦>・<村木里佳子>、そして作家の<吉永サツキ>の3人で<茂子>の自宅に出向くのですが、なかなかインタビューに応じない<茂子>でした。

殺人罪ですでに死刑になっている<藤子>を中心とした複雑な血縁関係が絡み合い、前作の出来事を下敷きとしてマスコミの取材の裏側を垣間見せながら、驚きの結末に読者を引きずり込む一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(76)『すれ違う背中を』乃南アサ(新潮文庫)

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今年の読書(76)『すれ違う背...
それぞれに事件を起こした前科者の<小森谷芭子(はこ)>と<江口綾香>は一回りほど年齢が離れていますが、刑務所内で息が合い、出所後も谷中の下町でひっそりと暮らしています。

本書は前作 『いつか陽のあたる場所で』 に次ぐシリーズ2冊目に当たり、4篇の話が連作で納められています。

パン職人を目指して朝早くから働く<綾香>は、商店街のくじ引きで一等の「大阪旅行」を当て、<芭子>と一緒に夜行バスで「USJ巡り」や「なんばグランド花月」などを楽しんでいる最中、<綾香>の過去を知る男が現れたり、<芭子>がペットショップのアルバイトが決まり、刑務所で覚えた洋裁でペット用の服を作ると人気を博したり、二人がたまに出向く居酒屋「おりょう」で知り会った手伝いの女性<まゆみ>が、<綾香>の事件の引き金にもなったDVの被害者であることなど、本書も前科を隠しながらつつましやかに生きる二人の健気な生活が丁寧に描かれています。

脇役として著者の『駆け込み交番』でお馴染みの警察官<高木聖大>も登場、<芭子>はセキレイインコの<ぽっち>を飼い始め、生活も落ち着いてきたかのように見える<芭子>と<綾香>の今後が楽しみです。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(75)『黒猫の接吻あるいは最終講義』森晶麿(ハヤカワ文庫)

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今年の読書(75)『黒猫の接吻...
刊行順的には<黒猫>シリーズ2冊目に当たりますが、(ハヤカワ文庫)としては、『黒猫の刹那あるいは卒論指導』 に次ぐ3冊目になります。

文庫本の前2冊は連作短篇集で、主人公24歳の大学教授で通称<黒猫>と、同じ唐草ゼミで<エドガ・アラン・ポオ>を研究している<私>とで、身の回りに起こる事件を解決していきますが、本書は長篇の推理小説でした。

24歳という同じ年齢ながらパリ留学を経て<黒猫>は大学教授、<私>こと「付き人」は<ポオ>の研究をしている博士課程一年生という微妙な関係の二人ですが、バレエ『ジゼル』を観劇中、第一幕でダンサーが倒れるという事件が起こり、プリマの<幾美>は舞台を降りてしまいます。
5年前の『ジゼル』が上演された際には、<幾美>の異母姉である<愛美>が、本物の短剣で自殺するという事件が起きていました。

「付き人」は持ち前の好奇心で、探偵よろしく事件を探り始めるのですが・・・。
いつもながら美学的な論述が文中に挿入され、<ポオ>の作品解釈を事件と絡めながらの手法は、見事でした。

留学していたパリのポーエイシス大学の恩師<ラテスト教授>が重体ということで、またもやパリに旅立つ<黒猫>ですが、「付き人」との二人の心の動きも楽しめる恋愛小説としても、今後の展開が気になるシリーズです。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(74)『黒猫の刹那あるいは卒論指導』森晶麿(ハヤカワ文庫)

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今年の読書(74)『黒猫の刹那...
<黒猫>シリーズは、 『黒猫の遊歩あるいは美学講義』 を第1巻として現在までに5冊が刊行されており、本書は第4巻目に当たりますが、ハヤカワ文庫としては2冊目になります。

第1巻目では若き24歳の大学教授の<黒猫>とその付き人を務める大学院生の<私>を中心に日常に潜む謎解きが楽しめましたが、本書は<黒猫>と<私>の大学生活時代を舞台に、短篇が6篇納められています。

美学部の学部長である<唐草ゼミ>在籍から博識の<黒猫>と、<エドガ・アラン・ポを卒論とする<私>との関係がよくわかる構成で、<ポオ>の作品を下敷きにして作品に新たなる解釈行いながら、謎解きが進んでいきます。

本書では<唐草学部長>の推薦を受けて、フランスの現代思想の大家<ラテスト教授>の元へ留学するまでの<黒猫>の推理が、冴えわたる一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(73)『賞の棺』帚木蓬生(集英社文庫)

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今年の読書(73)『賞の棺』帚...
本書は単行本として新潮社から1990年12月に刊行、1996年2月に新潮文庫に納められており、2013年11月に集英社文庫として発売されています。

イギリス医学界の権威者<アーサー・ヒル>がノーベル医学・生理学賞を受賞を知らされた<津田孝>は、同じ分野で研究を続けながらも4年前に急性白血病でなくなった恩師<清原修平>の家に焼香を兼ねて挨拶に出向いた際、恩師の娘<紀子>が絵画の勉強のためにパリいることを知ります。

ブダペストの学会出席に合わせて<津田>は長期休暇を申請すると共に、<紀子>や旧友と会う予定を組みますが、何気なく手にした恩師の記念集に、<アーサー・ヒル>より先に筋肉の「第三のフィラメント」与呼ばれる物質を発見していた<アントニオ・ルイス>の話に興味を持ちます。

ブタベストの生理学研究所を訪れた<津田>は、以前の所長もまた4年前に急性白血で亡くなっているの知り、<清原>の研究室に6カ月いた<アイリス・サンガー>が、この研究所にも<アーサー・ヒル>の推薦で6カ月ばかりいたことを知り、何か策略めいたものを感じ取り、真相を求めてヨーロッパを駆け巡ります。

世界の最高権威であるノーベル賞を舞台に、臨床医学者としての生き方を主軸に、娘と父、息子と母親等、複雑な親子の関係を絡ませながら、また<津田>と<紀子>の淡いラブロマンスの要素もある、本角的な医療ミステリーとして楽しめた一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(72)『叫びと祈り』梓崎優(創元推理文庫)

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今年の読書(72)『叫びと祈り...
本書には5編の短篇が納められており、タイトルは収録されている第4番目の『叫び』と第5番目の『祈り』を合わせたようです。

主人公は国際動向を分析する雑誌を発行する会社に勤めている<斉木>で、7か国語を喋れるということで、世界各地に派遣されますが、その派遣先で殺人事件やミステリーじみた出来事に遭遇してしまいます。

サハラ砂漠に残る塩の道の取材中の殺人事件、友人の失恋物語にまつわるスペインでの出来事、ウクライナに隣接する南ロシアの丘陵地に立つ修道所での殺人事件、アマゾンの先住民の部落で発生した伝染病、そして<斉木>自らの身に起こるアクシデント等、読者を功名なな語り口で引き込んでいきます。

巻頭に納められた『砂漠を走る船の道』は、「第5回ミステリーズ!新人賞」(2008年度)受賞作品で、本書はデビュー単行本の文庫本ということで手にしてみましたが、物語性を主軸に据えたミステリーの覆面作家として今後の活躍が楽しみです。
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今年の読書(71)『メグル』乾ルカ(創元推理文庫)

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今年の読書(71)『メグル』乾...
巡り合わせというのは不思議とあるようで、過去に取り上げた<乾ルカ>さんの本を検索しましたら、デビュー作の 『夏光(なつひかり)』 が2012年度の(71)冊目でした。

本書には5つの短篇が納められており、どのタイトルもカタカナでまとめられています。
H大学の学生課奨学係のアルバイト紹介には、無表情な女性職員<悠木>が担当者として座り、窓口に来た学生たちになぜか各人の過去を見つめ直す機会を与えるべくアルバイトを世話していきますが、その決め台詞は「あなたは行くべきよ。断らないでね」です。

『ヒカレル』は古くからの因習として死後に手が硬直しないのはこの世に未練がある「引く手」といわれるもので、あの世に連れて行かれないように一晩中死人の手を握るバイト、『モドル』は父が入院した病院の販売店で商品の異例替え作業のバイト、『アタエル』は海外旅行に出かけているあいだの犬の餌やりのバイト、『タベル』はクローン病のために食べる楽しみがなくなった患者が作る料理を食べるバイト等、どれもが心に余韻を残す構成でした。

最後の短篇が『メグル』ですが、ここで<悠木>自身の過去にも触れられ、ミステリーチックな短篇として、心静かに読み終えることができました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(70)『二都騒乱:新・古着屋総兵衛7』佐伯泰英(新潮文庫)

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今年の読書(70)『二都騒乱:...
著者の時代小説はシリーズ物が多く、『古着屋総兵衛』は全11巻、『居眠り磐音江戸草紙』にいたっては現在48巻目です。
人気作家ですのでシリーズ物の発刊が急になくなるとは思えず、<新・古着屋総兵衛>シリーズも、第6巻の 『転び者』 から間が空きましたが、のんびりと読み続けています。

タイトルの「二都」は、江戸と京都を表していますが、許嫁の<桜子>と付添いの<しげ>が、京の錦市場で消息を絶ってしまいましたが、<総兵衛>はあわてることなく、敵である薩摩藩の動きを冷静に見極めていました。

そのころ江戸では、「大黒屋」の地下大広間につながる秘密の地下通路を探り当てた元同心<池辺三五郎>が、薩摩藩に取り入られようと密告、薩摩藩上屋敷当主の<東郷清唯>の妾腹の子<石橋茂太>と出向きますが、両名とも憤死してしまいます。

薩摩藩から<桜子>拉致に関する連絡が<総兵衛>に届き、策略を感じて裏をかくべく部下を引き連れ、無事に<桜子>と<しげ>を取り戻します。

「大黒屋」は神君家康公の影旗本として、将軍からの命令を伝える<影>の存在が本書では<九条文女>とわかります。彼女は100年に渡る「大黒屋」と薩摩藩との和睦をすすめ、薩摩藩主も同意しましたが、薩摩藩京屋敷目付<伊集院監物>や、息子を殺された薩摩藩上屋敷の<東郷清唯>などの動きが、今後気になるところです。
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今年の読書(69)『デッド・リミット』遠藤武文(集英社文庫)

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今年の読書(69)『デッド・リ...
スナックの深夜営業で疲れて眠る<藤村智子>の家に一箱の小包が届き、開けてみると息子<大翔(はると)>の冷凍された小指でした。早く解放すれば整形手術で接合できると電話が入り、身代金5000万を用意するために<智子>は銀行強盗を働き、指定された場所に向かいますが、あわてて降りた電車内に置き忘れてしまいます。

指定された駅に降りた<智子>はそこで<藤村>と名乗る若者と接触しますが、彼は誘拐犯の<山田浅右衛門>ではなく、彼もまた両親を人質としてとられ、なぜかその場に<大翔>の小学校の担任<柳原佳葉子>も登場してきます。

全5章の構成ですが、各章ごとに登場人物を中心とした物語が進み、最後の章で全体のつながりがわかるのですが、各人が各様に自己中心的な行動を取る展開で、結末までどうなるのかと思わせながら読者を最後まで引っ張ります。

結末的に教師の<柳原>や悪徳刑事<磯崎>の処遇が不明なまま物語は終わり、消化不良の感はいがめませんが、全体的によくできた構成で楽しめました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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