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神戸:ファルコンの散歩メモ

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今年の読書(23)『看取りの医者』平野国美(小学館文庫)

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今年の読書(23)『看取りの医...
終末期医療の訪問医として、2002年につくば市で開業された著者の感動の実話が、9編収められています。

1950(昭和25)年当時は、8割の方が自宅での在宅死でしたが、1976(昭和51)年を境に病院での院内死が逆転、今では家族に看取られての在宅死は1割になっています。

<在宅医療を成功に運ぶためには、医師が患者さんの経過を正確に把握し、病状の回復や悪化の程度を適切に判断し、それに応じた投薬や検査などを行う必要がある>と述べられ、重ねて<看護婦やヘルパーに適切な指示を与え、相互に連絡を密にして、連携プレーで在宅医療の効果を高める必要がある>と、決して医者任せだけでは解決しない問題の難しさを感じました。

医者の立場として、患者に治療を行うのは当然の行為でしょうが、無駄な延命処置で死に際に家族が立ち会えない状況は、死にゆく人への冒涜だと著者は考えられています。

<けれども、延命治療後の患者さんの死に顔には、例外なく苦痛がにじみ出ている。死臭も強い。自宅で自然に息を引き取った患者さんが安らかな死に顔で、ほとんど死臭を感じないのとは対照的である>という記述は、開業9年間で630以上の在宅死を看取られた著者ならではの言葉だと思います。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(22)『絶頂美術館』西岡文彦(新潮文庫)

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今年の読書(22)『絶頂美術館...
古今東西の「ヌード画」を通して、その当時の美術界の流れ、書かれた時代の社会背景等を巧みに書き込みながら、名画と言われる作品の解説書です。

<ヌードは、単なる裸体のデッサンでもなければ、性的なエモーションを呼び起すための手段でもない。自分自身の理想や欲求やあこがれを写し出す鏡なのである>の著者の言葉通り、どのような視点から眺めるのかでとらえ方は違ってきますが、本質的には「性」への賛歌が見て取れます。

カバネルの『ヴィーナスの誕生』、アングルの『泉』や『奴隷のいるオダリスク』、ボッティチェルリの『ヴィーナスの誕生』、マネの『草上の食事』や『オランピア』等、どれも美術の教科書に出てきますのでおなじみですが、トリビアな知識をたくさんいただきました。

表紙の写真はジェロームの『ローマの奴隷市場』ですが、女性の姿は、アングルの『泉』に描かれている、壺を抱えた女性の裏返しのポーズです。
左のウエスト部分を垂直に描くことで、右側のウエストのくびれが強調されるという技法、「なるほど」と納得してしまいす。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(21)『不恰好な朝の馬』井上荒野(講談社文庫)

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今年の読書(21)『不恰好な朝...
とある郊外の団地を舞台に繰り広げられる、7作の連作短篇集です。
ひとつひとつの短篇の登場人物がそれぞれに関連しあい、現代にうごめく市井の生活を、見事に切り開いています。

推理小説を読むように、肩肘張って筋立てを読み解くような姿勢ではなく、「そうなんだ」という軽い気持ちで読み流さないと、作者の意図は分かりにくいかもしれません。

  (1) 夫の浮気癖に、離婚を決心すす妻
  (2) 教え子の中学生女子と関係を持ち続ける絵画教師
  (3) 結婚の約束を反故にされた喫茶店の女店主と、その相手の両親との交友
  (4) (1)の浮気男が、若い女をつれて先妻の娘の結婚式に出向く旅行
  (5) (2)の絵画教師と離婚した妻のその後
  (6) (3)の女店主と関係を持つやくざな男
  (7) (3)の結婚を反故にした男と結婚をした妻が、その後の女店主との関わり

てな具合で、ストーリーが進んでいきます。
軽いタッチで書かれた文章表現の中に、人間の喜怒哀楽・本性を垣間見せてくれる一冊だと思います。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(20)『追悼者』折原一(文芸春秋社)

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今年の読書(20)『追悼者』折...
小説の内容は、読み出せばすぐに分かりますが、1997年3月渋谷区円山町のアパートで起きました、「東電OL殺人事件」をモチーフにした推理小説です。

日本の一流企業に勤めるエリート女性社員が、OLと売春婦との二面性を使い分けていたことに、当時のマスコミは飛びついて面白おかしく取材合戦を繰り広げていました。
ノンフィクションを始め、このテーマの主題での小説も多く書かれています。

この『追悼者』も、昼は大手旅行会社に勤めながら、夜は浅草の街娼として殺害され、ノンフィクション作家が事件を追う筋立てで、犯人までたどり着く過程が、ルポルタージュの手法で表現されています。

終り頃には、「なるほどそうか」と読者を納得させながら、最後にまたどんでん返しで終わらせる手法は、さすがだと言わざるを得ません。
<目には目>を思わせる最後の6行ほどの文章が、読者に心地よい終末感を与えてくれますので、殺人犯への鉄鎚として気分良く読め終えました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(19)『夜の桃』石田衣良(新潮文庫)

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今年の読書(19)『夜の桃』石...
2003年の直木賞を、『4 TEEN』で受賞されていますので、作家の名前だけは知っておりましたが、作品を読むのは初めてでした。
新潮文庫に入っている<今月の新刊>のお知らせで、イチオシということでしたので、恋愛小説ですが読んでみました。

45歳で広告会社の社長が主人公です。奥さん以外にも、4年続いている愛人がいる中、さらに会社にアルバイトに来ていた25歳の少女のような女とも関係が始まります。
禁断の関係ゆえに深まる性愛を究極までに描き、中年男の心情を実に巧みに表現しています。

どのような結末を迎えるのか、読みながら期待していたのですが、結末の付け方は単純すぎて、わたしには肩すかしでした。

渡辺淳一の『失楽園』や『愛の流刑地』の好きな方には、むいている一冊だと思います。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(18)『歌舞伎町セブン』誉田哲也(中央公論社)

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今年の読書(18)『歌舞伎町セ...
<姫川玲子>シリーズ や <ジウ>シリーズ などの警察小説で人気が高い著者ですが、今回は歓楽街歌舞伎町を舞台に繰り広げられるノワール小説です。

歌舞伎町の商店街の会長が死体で発見され、原因は急性心不全。
事件性はないように見えたところから、歌舞伎町の裏社会が絡んで話しは進みます。

表題の「歌舞伎町セブン」とは、歌舞伎町全体を守る闇の自警団的な存在で、必要とあらば殺人をもいとわないという7人の存在を指しています。
<・・・こういう性質の街はいつの時代も、司法や警察では処理できない問題を抱える運命にある・・・>
正当性の是非は問われるところですが、現実的に歌舞伎町は「そうだろうなぁ」と想わせる雰囲気を持つ街だと思います。

一度足を洗った主人公のバー『エポ』のマスター<陣内陽一>を中心に、暴力団組長の(市村>、若手警察官<小川>、ルポライター<上岡>等がそれぞれの境遇・立場を抱えながらひと段落付けていますが、個性ある登場人物たちですので、これまたシリーズ化されそうな一冊です。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(17)『カウントダウン』佐々木譲(毎日新聞社)

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今年の読書(17)『カウントダ...
警察関係の犯罪小説が好きで、著者の作品としては、北海道警を舞台にした 『笑う警官』 ・ 『警官の紋章』 ・ 『制服捜査』 等を読んできています。

今回の『カウントダウン』は全く別の分野で、北海道夕張市に隣接する幌岡市を舞台に、財政破錠をきたしてきたワンマン市長の6期目の選挙を阻止すべく、市議1期生の主人公が選挙戦を戦い抜く筋立てです。

著者は、財政破錠で財政再建処理が進んでいる夕張市の出身だけに、思い入れをこめて書かれているのがよくわかる内容です。

選挙戦の誹謗中傷、1万5千人という住民達の思惑、市議会与党のていたらくな様子等、どこの行政体にも当てはまる内容で面白く読みきりました。

スパイスも効いていて、どこの選挙にも出てくる戦国武将の名前の立候補者をおもわせる人物として、「高杉晋作」を登場させるなど、笑わせていただきました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(16)『TOKYO BLACKOUT』福田和代(創元推理文庫)

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今年の読書(16)『TOKYO...
神戸市出身の女性作家としては、<安西篤子>、故<三枝和子>、故<久坂葉子>と思い付きます。
この作品は若い世代として、1967(昭和42)年生まれで神戸大学工学部卒業の<福田和代>さんの第2作目に当たり、10冊ほどの著作がありますが、初の文庫本化です。

6歳のときに、誰も手助けすることもなく、無関心な大都会の東京で母親を殺され、時効で犯人は捕まらず、また婚約者も行きずり殺人犯に殺されるという過去を持つエンジニアが、東京の街の停電を実行させるという荒筋です。

日本においてテロはないとないという安心感、また、電気は使えて当たり前だという意識を物の見事に覆してくれています。
タイトルに使われています「BLACKOUT」は、完全な停電状態を指す、業界用語です。

驚いたのは2008年の刊行(文庫化は2011年8月)ですが、<東都電力は今年、東北地方を襲った震災の影響により、最大の原子力発電所の稼働を停止する状態に陥っている>とあり、「エッ」と驚きました。
しかも、緊急対策として<輪番停電>まで書きこまれています。
工学部出身者らしく、非常に緻密な電力業界の描写、最後まで飽きることなく読めました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(15)『姐御刑事(アネゴデカ) : 大量爆殺』南英男(徳間文庫)

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今年の読書(15)『姐御刑事(...
<誉田哲也>の 『シンメトリー』 等の女性刑事<姫川玲子>シリーズと同様、この小説の主人公も、警視庁捜査一課の女性刑事<三田村利香>です。
32歳で女暴走族の総長でしたが、母親は暴漢に襲われその後に自殺、父親も敵対する暴走族との抗争で亡くなると、生活を改めて警察学校に入った経歴をもちます。

『姐御刑事』に続くシリーズ2冊目ですが、元暴走族ということもあり、男勝りの言葉と空手二段の特技で、軟弱な男には見向きもしない性格設定がされていて、小気味良いテンポで読み進めます。

人気ニュースキャスターがクレーン事故に見せかけて殺されるところから物語は始まりますが、過去の爆破事件との関連で、捜査は思わぬ方向に進んでゆきます。

警察社会の内部実態はわかりませんが、どうも警察関連の小説は、「キャリアとノンキャリアの区別」「警視庁と所轄の警察の上下関係」「捜査〇課と捜査〇課の対抗意識」「主人公の男刑事は離婚している、もしくは離婚協議中」といったステレオタイプ化された内容が多いのが、気になるところです。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(14)『心に龍をちりばめて』白石一文(新潮文庫)

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今年の読書(14)『心に龍をち...
読みたい本を選ぶ基準は、もちろん面白さが重要ですが、何かの縁や偶然の作用が働くときがあります。

著者の<白石一文>は、2000(平成11)年に『一瞬の光』で作家デビューをしています。
父の故<白石一郎>が1987(昭和62)年『海狼伝』で直木賞を取ったのに続き、著者も2010(平成22)年『ほかならなぬ人』で直木賞を取り、初めての親子二代の直木賞作家です。
この故<白石一郎>がわたしの亡父と同じ昭和6年生まれですので、何か縁を感じながら、息子の<白石一文>も読むようになりました。

今回も、ふと「龍」の文字が目に止まり、辰年ということも何かの縁かなと感じ読んでみました。

親子・兄妹・男女等の人間関係や愛情問題の主題が多いのですが、今回も恵まれた容姿とキャリアを持った<小柳美穂>を主人公に、一度別れた男のエリート記者<黒川丈二>、幼馴染の元ヤクザの仲間優司との男女関係を絡めながら、主人公の生い立ちや家庭環境を横線に、愛情と生きてゆくことの宿命を織り込んでいます。

時間や理屈を超え、それぞれの場面で人生の運命的な出会いがあることを、考えさせられる一冊で、とくに最後の2行の終わり方は秀逸です。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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