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神戸:ファルコンの散歩メモ

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今年の読書(43)『風花』川上弘美(集英社文庫)

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1996(平成8)年、『蛇を踏む』で第115回芥川賞を受賞され、それ以後も各種の作品賞を受賞されています。
芥川賞作品を読んで以来の、川上弘美さんの作品です。

堅い「刑事物」が続きましたので、恋愛小説で気分転換してみました。
恋愛小説ですが、恋焦がれるという若い男女が織りなすたぐいではありません。
結婚7年目を迎えている33歳の<のゆり>は、匿名の電話で主人の卓哉が3年越しの浮気をしていることを知らされます。

普通なら怒り狂い離婚問題となるのでしょうが、怒ることもせず淡々とした生活を続けていく中で、叔父や専門学校で出会う男子大学生、女子大時代のゼミの先輩等の関係を通じて、ゆるやかに心が変化してゆくさまが描かれています。

最後には「別れよう、わたしたち」の台詞を卓哉に向けて言いますが、結論じみた場面で終わることなく、お腹が減ったということで二人でラーメン屋に向かう場面で終わります。

切ないまでも移ろいやすい女心の変化、叔父との東北旅行で旅館から見上げた<風花>が、揺れる女心を見事に表現したタイトルに凝縮されています。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(42)『警官魂:反撃篇』松浪和夫(講談社文庫)

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今年の読書(41) 『警官魂:激震篇』 に続く後半です。

誘拐された本部長宅に戻った三島は、本部長の捜査方針を暴露することにより、犯人側との接触を保ちますが、本部長の命令に逆らえない県警の同僚たちに邪魔されて、思い通りに誘拐された娘を救出することがでません。
一度誘拐犯たちと立ち向かいますが、同僚の邪魔が入り犯人達にまたもや逃げられてしまいますが、その際同僚が犯人の顔を撮影していました。

この犯人の一人が、もと本部長の部下であることが判明するのですが、当時出世のために恋人を殺された恨みを抱え、裏金作りを進める本部長のスキャンダルを暴露させるために、娘を誘拐したことが明るみに出てきます。

三島は娘を無事保護し事件は解決しますが、裏金作りの解決は出来ず、やはり閑職のまま刑事生活を続けていくエンディングとなります。

著者は福島県生まれで、福島大学を卒業されています。
誘拐犯の指示に従い、街中を車で移動しますが、市内の街並みの描写や建物名が随時出てきます。
解説で、<本書は福島県出身の著者が、震災前に描いた最後の長編ということになる>という一文がありました。
郷土出身の作家として地元を愛する目で、東日本大震災に関連する著作が、今後出版されることを期待しています。

* ブログル仲間の<birdy>さんから、この本を原作としたテレビドラマが、3月31日(土)21:00から、テレビ朝日系で放送があると教えていただきました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(42)『夏天の虹』<みをつくし料理帖>髙田郁(ハルキ文庫)

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今年の読書(42)『夏天の虹』...
女料理人<澪>を主人公とする<みをつくし料理帖>シリーズも、前作の 『心星ひとつ』 に次いで7巻目になりました。
前作では、秘かに心を寄せている御膳奉行<小松原(=小野寺数馬)>との縁談の手順がまとまりかけていたのですが、料理の世界を捨てきれない<澪>は、読者の予想通り(小野寺)との縁談を断ってしまいます。

毎年師走に発表される「料理番付」にも、<澪>の「つる家」は名前も載らず、想い人(小野寺)との破局も重なり心労からか、<澪>は味も匂いもわからなくなり、店主の<種市>は、「三方よしの日」に手伝いに来てくれている吉原の「翁屋」の料理人<又次>に2か月だけの手助けを求めます。

約束の2か月が過ぎ役目を終えた<又次>を、<種市>と<澪>は吉原まで見送りますと廓には火事が発生、<又次>は<澪>の幼馴染の<あさひ太夫>を救い出すべく火事場に飛び込み太夫を無事に救い出しますが、<又次>自身は帰らぬ人となってしまいます。

「つる家」に来て心も開き、明るい笑え声も出し始め、客からも慕われ始めた<又次>の死は、<澪>や「つる家」の奉公人達にとって耐えがたい悲しみを与えましたが、<澪>にとっては匂いや味がわかるきっかけにもなりました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(41)『警官魂:激震篇』松浪和夫(講談社文庫)

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今年の読書(41)『警官魂:激...
講談社より、2011年4月に『刑事魂』として刊行されたものが、『警官魂』として改題され、文庫本化になっています。
従来ですと、分冊の場合は(上・下)等の表現になると思いますが、改題と共に、<激震篇>と<反撃篇>との名称がつけられています。

福島県警の裏金作りの協力を拒否続けていた捜査一課特一係のエース三島は、本部長に楯付いたことで、警察学校の教官という閑職に追いやられていましたが、本部長の娘が誘拐されたということで、理解ある上司の声がけで、特一係に臨時的に戻ります。

本部長は、警察の体面と保身の考えで娘の命より犯人逮捕を優先させる捜査を進める指示を出しますが、身代金を抱えて誘拐犯に引きづり回された揚句、怪我をした母親を助けることにより、三島は犯人を取り逃がすミスを犯してしまいます。

本部長は、約束通り捜査ミスを犯したのだからと再度三島に辞職迫ります。一度は諦めた捜査も、ネゴシエーターとしての役目を果たすために、再度捜査現場に復帰して誘拐犯と立ち向かうところで<激震篇>は終わります。

警察の裏金作りを告発しようとする「警官オンブズマン」の三島との接触もあり、<反撃篇>はどのような結末になるのか、三島の動向と共に楽しみです。
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今年の読書(40)『警視庁情報官:トリックスター』濱嘉之(講談社文庫)

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今年の読書(40)『警視庁情報...
著者は2004年、警視庁警視を退官され、2007年にこの『警視庁情報官』で作家デビューされています。
これは同シリーズの三作目にあたりますが、(文庫書き下ろし)作品として発売されました。
前二作のように単行本からの文庫本化ではなく、いきなり文庫本での発売、確実にファンが増えている証のようです。

第一作『シークレット・オフィサー』、第二作『ハニートラップ』と続く連作です。上司の殺害事件や今迄のエピソードが随所に出てきますので、両二作を読んでいないと面白味は半減するかもしれません。

「トリックスター=詐欺師」事件を中心として話しは進みます。
主人公の情報室の黒田純一は、複雑な詐欺事件を追いながら、財閥夫人、新興宗教団体、暴力団、大物政治家等の複雑な関係を読み解き、上司の事件を解決すると共に、一網打尽のエンディングを迎えます。

主人公がノンキャリアの警察官として、たぐいまれな人脈と人間性で事件を処理してゆく姿は、殺人事件を扱う捜査第一課のような派手さはありませんが、情報に対する分析と想像力、部下を育てる思いがよく出ていて共感を呼びます。

今後もシリーズが続くと思いますが、楽しみに待てる作品です。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(39)『KAGEROU』齋藤智裕(ポプラ社)

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今年の読書(39)『KAGER...
2010年第5回ポプラ社小説大賞を、受賞した作品です。
著者の齋藤智裕さんは、俳優:水嶋ヒロとして活躍されていました。

自殺しようと廃屋の百貨店の屋上から飛び降りようとした大東は、臓器移植を扱う京谷という男に助けられます。
どうせ死ぬならきれいに死んで、なおかつ臓器提供の見返りとしてお金も入るという説明に、大東は自分の体を提供する契約をしてしまいます。

途中、心臓移植をしなければ助からない茜という少女に出会い、自分の心臓が彼女の体の中で生かされているのを知り仲良くなるのですが、もはや自分は生きながらえての人生はありません・・・。

メルヘンチックな物語ですが、自分に与えられた命とはなにかということ,臓器移植の問題に対して、前向きに考えさせられる一冊だと感じました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(38)『共喰い』田中慎弥(集英社)

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今年の読書(38)『共喰い』田...
今年度の第146回下半期の芥川龍之介賞を、受賞した『共喰い』です。
受賞インタビューで話題を提供した著者のようですが、特段作品を読みたいとは思いませんでした。
「どこがいいのか、よくわからん」という知人の声に押されて、本を拝借しました。

家々の汚水が流れ込むドロドロとした川辺を中心に、主人公が父と愛人の琴子と住む家があり、別れた母の仁子の魚屋があり、売春婦が住むアパートがあります。
17歳の主人公遠馬は、女とあれば見境なく性欲の対象とみなし、性交時には相手に暴力を振るう父を毛嫌いながら、自分も父と同じサディスティクな性欲があるのではと感じつつ、一つ年上の千種と関係を持ち続けます。
この千種を、父は祭りの日に犯してしまい、それをきっかけに別れた母の仁子が、父親を殺してしまうという荒筋です。

読み終えて、わたしも「どこがいいのか、わからん」と感じました。
権威ある作家さん達の選考ですので、私の読解力が足りないと思いますが、ギリシャ神話の焼き直しを感じさせる筋立てに魅力は感じませんでした。
また、主人公が千種と行う性交描写も意味があるように思えず、父に犯されたあとあっけらかんと主人公と向き合う千種の態度が、これまた納得がいきません。

残念ながら、受賞するほどの力量を感じさせる作品だとは、思えませんでした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(37)『プラチナタウン』楡周平(祥伝社文庫)

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今年の読書(37)『プラチナタ...
米国系企業に勤務中の1996年に発表した『Cの福音』で、華々しく作家デビューしました。
翌年会社を退職して執筆活動に専念し、『猛禽の宴・Cの福音』でゆるぎないファンをつかんだと思います。
ハードボイルとアクション、緻密な行動力の主人公、<朝倉恭介>が主人公のシリーズでした。

今回は、まったく180度違う分野での小説です。
大企業四井商事食料事業本部穀物取引部長の肩書を持つ<山崎鉄郎>が、出世街道を外され、同級生の<熊沢健二>に誘われて故郷である宮城県緑原町の町長になり、町の150億円にも登る累積赤字を解消するために、奮闘する物語です。

起死回生の策として考えたのが、工場誘致に失敗して遊んでいる3万坪の土地を利用して、老人向けの施設(プラチナタウン)を実行することでした。

冒頭に費やされる四井商事での大豆取引の描写は、本筋とはずれているのではと思いまがら読み進みましたが、老人向け施設の企業体として四井商事が登場することで、伏線として総合商社の企業とはどのようなものなのかの意味合いが与えられていたようです。

元気なうちはいいのですが、歳を取ると共に介護が必要となった時に、何処でどのように余生をすごすのか、考えさせられる一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(36)『寂聴あおぞら説法:愛をあなたに』瀬戸内寂聴(光文社文庫)

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今年の読書(36)『寂聴あおぞ...
時寂聴さんが、岩手県二戸市にある天台寺の住職になられたのが、1982(昭和62)年です。
東北最古の名刹も、当時は雨漏りがする状況でしたが、本堂や参道の整備よりも、一人でも多くの参拝者が詣でてくれることが大切だと考え、境内にゴザを敷いての<あおぞら説法>が始まりました。

軽快な口調で、参拝者からの悩みを聴きながら明快に答えてくれるということで、毎月全国から五千人前後の人が参加するというのには驚かされました。

寂聴さん自信子供と別れ、不倫問題も経験された経歴の持ち主だからこそ、凡人の我々も共感できる問答が成り立つのだと思います。

煩悩の世界からなかなか離脱して悟りを開くことはない凡夫ですが、あらためてこれからの生き方を考える一冊になりました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(35)『雪のひとひら』ポール・ギャリコ(新潮文庫)

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今年の読書(35)『雪のひとひ...
読む本を選ぶ基準は、好きな作家だというのが大きな要素だと思いますが、<本>自体の装丁などに引かれる場合が多々あります。

この『雪のひとひら』も、きれいな青い表紙が目にとまり手にしてみました。
著者の名は、1972(昭和45)年に封切られた映画『ポセイドンアドベンチャー』の原作者として印象が強く残っていましたので、読んでみることにしました。

ある寒い朝、空から<雪のひとひら>は生まれ、地上に舞い降ります。
地面に落ち、小川に流され、大きな川を下る長い旅が始まります。
旅の途中で人生の伴侶となる<雨のしずく>と出会い、4人の子供を授かります。
火事場の消化水として働き、苦難を超え大海に流れて行きますが、旅の途中で伴侶である<雨のしずく>を亡くし、子供たちもそれぞれの水の分岐に沿って旅だって行きます。

雪の発生から、太陽の熱で気化消滅するまでの過程を、女性の一生に擬人化し比ゆ的に表した、大人の童話でした。

水の属性になぞらえ、人生の流転を流れるままに受け止める<雪のひとひら>の姿勢は、生きてゆく限りとどまることなく活動を続けることが大切であり、人間として自然な姿なのだと感じさせてくれた一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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