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神戸:ファルコンの散歩メモ

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今年の読書(63)『密命警視』南英男(文芸社文庫)

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今年の読書(63)『密命警視』...
東京都内で現金輸送車が襲われ、警備のガードマンたちが射殺される強盗事件が連続して起こります。犯人は、中国人、イラン人、コロンビア人等のメンバーが絡んでいるようで、排他的な国籍同士なのに裏社会で何かが進行している様相をみせ、物語りは始まります。

危機感を覚えた警視総監は、直属の特別広域捜査班『隼』のキャップである<鰐沢賢>に捜査を依頼、事件の解決を指示します。
『隼』は、超法規の覆面捜査活動を行うメンバーで、<鰐沢>をはじめ、<梶浦雄司>、<森脇麻衣>の3名に加え、白井組若頭<笠原友行>、ヤメ検で弁護士事務所を開いている<畑秀樹>、語学を得意とする<峰岸淳一>の6名で捜査を進めていきます。

歌舞伎町を舞台に、中国系マフイアと日本の暴力団との抗争かと思われた図式が、二転三転していきますが、容赦なく相手を撃ち殺す<鰐沢>の行動は、小説の中だけの行動だと分かりながら、小気味よく読み切れました。

裏で糸を引く神戸の暴力団<山根組>の登場には、地元神戸の垂水(たるみ)の地名が出てきたりと余録もあり、楽しめたハード・サスペンスでした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(62)『萩を揺らす雨』吉永南央(文春文庫)

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今年の読書(62)『萩を揺らす...
これはぜひ皆さんに読んでいただきたいなと思う一冊ほど、どう紹介しようかと悩んでしまいます。

主人公は、大恋愛の末に山形県に嫁いだものの、後妻を用意してから離縁され、残してきた3歳の子供を用水路で溺れて亡くしている、<杉浦草(そう)>76歳です。
65歳の時に、両親が残した家を「小蔵屋」という民家風の喫茶と小物を扱うお店に改装して、今に至っています。
副題に<紅雲町珈琲屋こよみ>とありますが、76歳の年齢においては、季節の移り変わりも「老い」という重要な意味を持つのだと感じました。また、「紅雲」は、「幸運」の語呂合わせでしょうか。

山里の簡素な紅雲町で起こる日常的な出来事を、持ち前の好奇心で解決してゆく様子が描かれています。坦々とした文章の中に、76歳という人生経験を積んだ女性の強さがにじみ出ており、著者の構成力に圧倒されました。

文庫の解説者<大矢博子>は、「おばあちゃん探偵」という表現を使われていましたが、わたしは<品のいいおばあちゃんの品のいいおせっかい顛末記>と表現したく、ミステリーの分野に含めるのには抵抗を感じます。

幼馴染の<由紀乃>との交流もほのぼのとし、76歳ならではの設定がよく生かされた連作短短篇集で、これは無条件にニ冊目を読まなければいけません。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(61)『仮面警官』弐籐水流(幻冬舎文庫)

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今年の読書(61)『仮面警官』...
恋人<真理子>が、家まで送り届けることなく帰宅した<南條達也>は、その後車にはねられて植物人間となった彼女の事件を調べるうちに、関係したと思われ暴力団の組員を殺してしまいます。
なぜか事件はあやふやな捜査の内にお宮入りとなり、<南條>は真相を探るべく自ら警察官となり、派出所勤務を続けています。

そんな中若い女性が刃物で殺され、また連続して二人目の犠牲者が出てしまいます。

過去のコンビニ強盗事件にて、思いを寄せていた先輩刑事<芳賀>が犯人に殺された過去を持つ<早乙女霧子>は、連続殺人事件を担当することになりますが、今回の事件の捜査責任者は<財前>であり、コンビニ強盗事件の担当者でもありました。

お宮入りの組員殺害事件を一人追う定年間際の<多治見>は、科学捜査研究所に勤める娘の協力で、組員殺害事件の犯人として<南條>にたどり着くのですが・・・。

読み手側は、連続殺人事件の犯人を知りながら、この<南條>を中心とする警察機構の複雑さと、刑事魂をもった<多治見>をはじめ、<財前>・<綿貫>・<早乙女>といった人間関係の面白さに引き込まれてしまいます。

組員の殺人事件と、若い女性の連続刺殺事件は一見関係ないように話は進んでいきますが、最後に二つの事件が複雑に絡み合う構成はさすがだと感じました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(60)『冷やかな肌』明野照葉(中公文庫)

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今年の読書(60)『冷やかな肌...
前作に読みました 『その妻』(中公文庫) の前に刊行されています『冷やかな肌』です。
前作は、明野照葉の最新作ということで優先して読みましたが、この作品も<明野ワールド>が広がり、女性主人公の「女」のしたたかさが描かれています。

総合商社「ダイショー」に勤める<相沢夏季>と年下の<小谷野良佳>と二人は、急成長している飲食店「シノワズリ」に、共同事業の展開を視野に入れての調査目的で出向させられます。
出向先では38歳ながらにして、経営母体である「王琳」の取締役であり、フランス人の夫があり、野菜を仕入れる農家と交渉しながら、3店舗の「シノワズリ」の人員配置までこなす<渡辺真理>の力量に圧倒されてしまいます。

その反面、感情を乱すことなく冷静に物事の判断をこなしてゆく<渡辺>の姿に、何か特別な思惑が隠されていることに気付き始め、<良佳>と二人で<夏季>は「王琳」や<渡辺>の周辺調査に乗り出してゆきます。

<「女」の執念・怨念・すさまじさ>という言葉がぴったりとくる<明野ワールド>ですが、<したたかさ>も加わり、いつもながら楽しめる一冊でした。
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今年の読書(59)『中国の「反日」で日本はよくなる』宮崎正弘(徳間書店)

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今年の読書(59)『中国の「反...
「尖閣問題」や東シナ海の公海上でおきた<おおなみ>に対する「レーザー照射」事件など、中国の動向が気になるところです。

中国の反日政策に対して、面白いタイトルだとおもい読んでみました。

著者は、中国ウオッチャーと言われるだけあって、現在の中国の分析、特に<習近平>を中心に据え、細かい軍内部の人事関係を網羅しており、面白く読めました。

欧米諸国が中国への投資を引き上げ、「チャイナ・プラス・ワン」のもと他の東南アジア諸国に活路も見出す中、日本だけがいまだ中国に固執する企業が多いのに警告をならしています。
安倍総理のASEAN諸国への積極的な訪問も、中国に対し懸念を抱く各国からの歓迎され、日本の立場の変換期が来たと著者は説きます。

社会における所得配分の不平等さをはかる「ジニ係数」も、中国は騒乱多発の警戒数(0.4)を超えて(0.63)と算出されています。
中国国内の暴動はこれからも予見でき、「反日感情」をあおることで共産党幹部の汚職問題等から国民の目をそらそうとする政策が垣間見れ、チベット・モンゴルの民族問題も含み国内情勢が不安定な中、今後の動向が気になる中国です。
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今年の読書(58)『幻想郵便局』堀川アサコ(講談社文庫)

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今年の読書(58)『幻想郵便局...
著者は、2006年『闇鏡』にて、第18回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞してデビューした作家で、この『幻想郵便局』も、分類的にはファンタジーノベルで、癒し系の物語りです。

就職先が決まらない<安倍アズサ>は、狗山のてっぺんにある登天郵便局にアルバイトとして務めることになりますが、不思議な人々や現象と遭遇してゆきます。

登天郵便局は、黄泉と現世をつなぐ希少な場所にあり、黄泉の出先機関としての役目を背負っています。
本来は<狗山比売>の社があった場所なのですが、追い出された<狗山比売>が封印をとかれ、再び戻ってひと悶着が起こります。

地獄にも極楽にも行けない<真理子>に取りつかれる<アズサ>ですが、<真理子>が殺された事件を解決したりと、「探し物をみつける」という特技が生かされ、ほのぼのとした登場人物たちともども楽しめた一冊でした。
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今年の読書(57)『ふがいない僕は空を見た』窪美澄(新潮文庫)

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今年の読書(57)『ふがいない...
昨年11月17日(土)に全国公開されました映画『ふがいない僕は空を見た』の原作本です。
5編が収録されており、第1編の『ミクマリ』が、2009(平成21)年の<女による女のためのR-18文学賞>の大賞を受賞、その後同作品を含めたタイトルの単行本で、<本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10第1位>、<本屋大賞2位>、<第24回山本周五郎賞>を立て続けに受賞しています。

高校1年生の<斉藤良太>は、12歳年上の主婦<あずみ>と不倫関係にあり、<あずみ>の趣味であるコスプレの姿でセックスに励む日々が続いています。
同級生の<松永>は<斉藤>に気持ちを寄せているのですが、人妻としての<あずみ>にのめり込んでゆく中で、彼自身性欲とは違う感情が生まれ、自分自身の原点に悩みをかかえます。

第1編だけを呼んで、「これで映画一作撮れるのかな」と不思議に感じましたが、それぞれの登場人物たちのが残り4編に主人公として話がすすみます。第1編と絡み合い、複雑な人間模様を浮き上がらせ、「なるほど」と納得すると共に、著者の文章力にみいられました。

<斉藤>の母親は助産院を開いていますが、女でひとつで息子を育てる環境の中で、生きることの痛みと喜びを中心に据えて、どこまでも優しく読者に語りかけてくれる一冊でした。
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今年の読書(56)『もぐら 闘』矢月秀作(中公文庫)

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今年の読書(56)『もぐら 闘...
「もぐら」<シリーズ>として5作目になる『もぐら 闘』です。
主人公は、元警視庁組織犯罪対策部に所属していた「もぐら」こと<影野竜司>です。

新宿のビル街にあるオープンカフェ似て大規模な爆破事件が起こり、多数の死者がでますが、その中にiPS細胞の研究に関わる研究員がいたことがわかり、また爆破に用いられた手口が、共に「ONGAWARA」という企業に結びついてきます。

<シリーズ>前作で昏睡状態に陥った恋人<紗由美>の看護で、浜松市内にある医療施設でリハビリの付き添いをしている<竜司>ですが、入院患者が突然姿を消すという不審な出来事が続き、人体実験が行われていることを突き止めてゆき、この施設も「ONGAWARA」と関連があるのが判明します。

トラブルシューターの「もぐら」として、警察の人間ではありませんが、元同僚との連携プレーで事件を解決してゆきます。

捜査責任者の<垣崎>は、功をあせるあまり情報屋の<波留間>に翻弄されますが、最後は立ち直り一皮むけた人間に成長して終わる場面は、思わずニヤリとして読み終えました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(55)『鬼神曲』化野燐(角川文庫)

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今年の読書(55)『鬼神曲』化...
副題に「考古探偵一法師全」と付いていますが、『葬神記』に次ぐ<考古学ミステリー>シリーズの第二冊目です。

第一冊目は読んでいなくても独立した内容ですので困りはしませんでしたが、前作との関連が出てきますので、シリーズ物としては順番に読むのが王道のようです。

主人公は遺跡発掘アルバイトをしている<古屋達司>で、考古学の学芸員<呉>から出雲市に近いD町にある「鬼の墓」の調査で訪れるところから始まります。
調査目的地では、地元大学の古代史同好会の顧問<篠田史子>をリーダーに4人の学生メンバーと合流するのですが、人里離れたセミナーハウスに宿泊中、次々と学生たちが殺人事件の被害者になっていきます。

古代史に絡む「鬼」伝説を主軸に、考古学に冠する雑学も楽しめましたが、ミステリーとしては読者にすべての情報を提示しておくという手順を踏んでいない感じがしないでもなく、また「考古探偵一法師全」も最後だけの登場で、<シリーズ>の主人公誰なのかなと疑問のまま読み終えました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(54)『Dカラーバケーション』加藤実秋(創元推理文庫)

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今年の読書(54)『Dカラーバ...
2003年「インディゴの夜」で、第10回創元推理短編賞を受賞、2005年受賞作を含む連作短編集『インディゴの夜』を刊行、以後も連作短編集としてこの『Dカラーバケーション』(2012年2月)で4冊目になります。

登場人物たちは、渋谷のホストクラブ「club indigo」の女性オーナー<高原昌>を中心に個性あるホスト達が登場、<高原>を中心に難事件などのトラブルを解決してゆくという筋立てです。

<高原>の台詞として、「相手が誰だろうと気が乗らない、ノリが違うと思ったらそっぽを向き、梃子でも動かない。実に分かりやすいが扱いは面倒。それがこの連中だ」とあるように、一筋縄ではいかないホスト達の活躍は、なかなか会話のやり取りも面白く、肩を張らずに気楽に読めました。

表題の「Dカラー」はダイヤモンドが絡む事件に乗り出すのですが、最高ランクの表示としての意味合いが含まれています。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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