本屋さんの棚を独占するように場所を取っていた『おとなのねこまんま』という書籍。
「ねこまんま」という言葉が理解できるのかと思い、足が止まりました。
中身を見てみましたが、貧乏学生なら誰もが経験したことのある、ご飯の食べ方が写真入りで掲載されています。
玉子かけご飯などは定番でしょうが、身近にあるおかずをご飯にかけて食べるのは、一人暮らしの常とう手段だと思います。
やはりこのようなタイトルで書籍が売れるのは、飽食の時代を反映しているのでしょうか、考え込んでしまいました。
辺見庸氏の『もの食う人びと』の著作の中で、ベトナム(タイ?)のペットフードの工場のレポートがあります。日本に向けての生産ですが、工場で働いている彼女たちの日当よりもペット達が食べる缶詰の方が高いという事が指摘されています。
高価なペットフードを与えられる環境を含めて、食生活に困らなくなった時代を喜ぶべきなのかな。
駅に近いファッションビルの6階にある「成風堂書店」を舞台に、24歳のしっかり者の<木下杏子>と、推理の感が鋭いアルバイトの女子大3年生<西巻多絵>が、書籍や書店にまつわる事件の謎解きを中心に5話の短篇が収められています。
著者は13年間書店に勤務していた経験があり、書店業界の日常実務を細かく描きながら、ミステリー仕立ての謎解きが絡まり、この『配達あかずきん 成風堂書店事件メモ』がデビュー作品(2006年5月刊行)になります。
冒頭の『パンダは囁く』は、新潮文庫 < Yonda? Club > のキャラクターの「パンダ」が謎解きの中心になり、タイトルの『配達あかずきん』は、美容院や喫茶店などに配達する業務を軸に、天然ボケキャラの<吉川博美>が登場、結末を予想する読者を見事に煙に巻いています。
<成風堂書店事件メモ>シリーズとして、今までに『晩夏に捧ぐ』 ・ 『サイン会はいかが?』が刊行されていますので、また順次読んでみたい書店ミステリーです。
のぞみ22号に無事乗り込みました。春休みなのでしょう、子供連れが目立ちます。これから長い乗車時間ですが、先だってブログル仲間の<南極帰りの大城>さんが読んでいた、『最後の黄金時代が来た』を偶然本屋さんで目についたので、購入しました。東京駅までに、読みきる予定です。
ミステリー作家<島田荘司>の出身地である広島県福山市で、同氏を選者として開催された「第1回福山ミステリー文学新人賞」の受賞作品が、本書です。
小説の舞台は日本ではなく、ボストン郊外のコーバンという町を設定、イギリスから清教徒が移住した300年以上前にさかのぼる事件が伏線として描かれています。
3ヶ月前に交通事故に遭った11歳の少年<コーディー>は、事故の後遺症で人の顔が認識できない「相貌失認症」になり、コバーンの資産家であった<リリブリッジ>家の放置され朽ち果てた屋敷に忍び込みますが、そこで死体を焼く犯人を目撃してしまいます。
事件を担当したコーバン市警の<パロット>警部は、スタッブズ大学で「目撃証言の心理的研究」を行っている日本人の<トーマ>に助力を求め、<コーディー>との会話を通じて事件の真相に迫っていきます。
<リリブリッジ>家にまつわる300年前の魔女裁判、70年前に起こった列車事故で妻<マリオン>は失明、義理の妹とその娘が死亡し、一卵性双生児の弟<クロフォード>の射殺事件、40年前のヒッピーが屋敷内でLSDを過剰摂取で死亡した事件、そして今回の事件を絡めながら、心理学に関する博識な知識を駆使し、重厚な作品が楽しめました。
<新・旅情ミステリー>シリーズとして、柏木圭一郎の 『京都 大文字送り火 恩讐の殺意』 や風見修三の 『奥入瀬渓谷殺人情景』 などを読んできていますが、本書もその一環として「警察庁広域捜査官・梶山俊介」を主人公に据えて、日本の各地に出向いての捜査が描かれています。
秋田県角館で、日本刀による「辻斬り」的な事件で県議の娘<美奈>が殺され、<梶山>は部下の<叶野>とあわただしく現場に向かいますが、到着しますと<白咲>という整形外科医がすでに自首していました。
<白咲>は被害者との面識もなく、不審に思った<梶山>は妻<香奈>に背後関係を聞き取るのですが、要領をえないまま別れた夜に<美奈>と同様に日本刀で殺されてしまいます。
自首している<白咲>は明らかに誰かをかばっているのですが、捜査を進めてゆくなか、25年前に起きた一家心中事件が浮かび上がってきます。
整形外科医と「美への欲望」の<辰子伝説>を絡めた構成は、女心の本髄を付き、家族の悲劇に端を発する物哀しさ漂う作品でした。
医学の発達と共におおざっぱに括られていた障害の分類が、それぞれの特性に応じて細分化され、「広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)」 や 「注意欠陥多動性障害(ADHD)」 ・ 「学習障害(LD)」などに分けられています。
本書は増える軽度発達障害の傾向が詳しく分析され、また歴史上の偉人といわれる<ニュートン>や<アインシュタイン>・<坂本龍馬>・<エジソン>などがみな(ADHD)であった逸話などを取り上げ、その特殊な才能を伸ばす教育環境の大切さを説かれています。
親の感情を踏まえながら、その子供にとって何が幸せなのかを成長過程に合わせて対処していく姿勢の大切さを、教育学<鈴木陽子>の立場と医学<金澤治>の立場から分かりやすく解説されていました。
主人公「みちのく麺食い記者」こと<宮沢賢一郎>は、大和新聞東京本社から左遷され、東北総局友軍担当として会津若松支局に出向中です。
大好きな蕎麦を食べているときに、田子倉ダム湖畔で、大手ゼネコン「鹿田建設」の副社長<薗田幸四郎>が他殺死体で発見された現場に出向くところから、物語は始まります。
事件を捜査していくうえで支局にアルバイトに来ている<坂内春香>を道案内に取材を始める<宮沢>ですが、東京勤務時代に知り合った捜査二課の<田名部>と協力しながら取材の途中、新たに<薗田>の部下<保科>も姿を消してしまいます。
会津を地盤とする代議士<稲本芳正>と、土木・建設業の利権絡みの二極対立に見えながら、実は古くからの因習がはびこる問題点を基盤とした社会派ミステリーとしての重みが心に残る一冊でした。
大学を卒業、大手銀行に勤めながらアトピーに患い故郷に戻ってきた<紺屋長一郎>は、チャット仲間の<GEN>の薦めもあり、犬を専門に探す調査事務所を開設しますが、同級生の役所に勤める<大南>の口コミで来た依頼主は「探偵事務所」として訪問してきます。
<大南>の紹介で訪れた依頼主は、孫の<佐久良桐子>が東京から行方不明になっているので探してくれという失踪人調査であり、また二人目は地元の神社に伝わる古文書の解明でした。
高校の剣道部の後輩<半田平吉>(ハンペー)は探偵稼業にあこがれ、歩合制の所員として入り込み、古文書の件を調査し始めます。
片田舎を舞台に、<紺屋>の女性の失踪事件と<ハンペー>の古文書の調査内容が重なり合い、事件は思わぬ方向に展開していきます。
チャット仲間<GEN>とのやり取りや、<桐子>の失踪の原因が彼女が開設しているブログが問題となるなど、現代社会の様相を捕えながら、田舎の時代歴史的な要素を絡ませての構成で、面白く読み終えれました。
イラストレターの<青木>は、突然中学2年生の息子<優馬>が、マンションの屋上から飛び降り自殺をし、遺体から幻覚剤であるLSDが発見されたと知り、なぜ14歳で死ななければいけなかったのかと原因を探り始めていきます。
<優馬>と仲の良かった生徒を担任から教えてもらい、級友たちを訪ねて回る途中で、話を訊いた<永井>もまた中学校の屋上から飛び降り、遺体からLSDが検出されます。
ますます<優馬>の自殺の真相を知りたいと考える<青木>ですが、<子供の社会には、大人の論理は通用しない>ということを身を持って感じる最中、<青木>は息子<優馬>が登場するアダルトビデオの恐喝の電話を受け、自ら出向いていくのですが・・・。
子供たちはなぜ死んでいくのかと読者に疑問を持たせながら、父親としての<青木>の行動を通して、共に謎解きに参加すること構成で面白く読み終えれました。
主人公<布施京一>は、TBNテレビ報道局の看板番組である『ニュース・イレブン』所属の遊軍記者です。
定例会議には遅刻や欠席をするという、素行には問題がありますが、独自の取材ルートで班員逮捕の現場をスクープしていきます。
強引な捜査で時には身の危険を感じさせる場面もありますが、お互いの立場を認め合う警視庁捜査一課<黒田裕介>との共同戦略で、危機を乗り越えています。
本書には<布施>のスクープ七話が収められており、「住専問題」や「ドラッグ」・「援助交際」と言った社会性を含んだストーリーが楽しめます。
<黒田>刑事との駆け引きや、東都新聞社会部記者<持田豊>などの脇役も人間性があり、市井的には縁がない事件を身近な現実として感じさせる著者の手腕が光っていました。
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