11月
30日,
2024年
《 雅羅・/・〝備忘録 24-62〟❖ ’24-335 ❖ 》

学名:Cirsium maritimum
別名:ハマゴボウ(浜牛蒡)
神奈川県レッドリスト2020「絶滅危惧IA類」
神奈川県レッドリスト2006「絶滅危惧IA類」

伊豆半島以西~四国、九州(太平洋岸)の海岸に生育。
海岸線に群生し、紅紫色の花を夏から初冬まで楽しませてくれる。
大型の頭花を下向きに咲かせるアザミ。
根生葉は花期にも生存する.茎高10-60 cm,
茎には長い白毛があり根際で分枝し地表を這い鋭い刺のある葉を密につける。
葉は互生し、羽状に深裂し、裂片が三角状に尖り、基部は茎を抱かない。
葉表は無毛、質が厚く光沢があり、葉裏の葉軸、脈上に長い白毛が密生する。
頭花は紅紫色、上向きにつき、総苞は幅2~3㎝の筒形。
頭花の基部に葉状の苞が数個つく。
総苞片は斜上し、総苞内片の先端部分が折れ曲がり、開出することがある。
痩果には褐色の枝分かれした長い冠毛がつく。
《 私的・・幻の草本〝浜薊〟》

(7)ハマアザミ Cirsium maritimum Makino
海岸礫地や砂地に生える雌雄同株の多年草.
葉は肉質厚く強い光沢があり,縁辺はしわがより,著しい刺がある.
茎は高さ 10~60cm,葉は羽状に深裂して茎を抱かず,
葉の下面脈上には白毛が密生.
頭花は 7~11 月に開花し,茎の先端に 1 花を直立する.
総苞は筒形,総苞片は下部で圧着し,上部は鋭く斜上する.
総苞片に腺体は無いか,あっても退化的で粘らない.
本州(関東地方以西),四国,九州に分布.
県内では三浦半島西岸に生育地があるが,
分布量が少なく現状は明らかでない(村上 2011 日本の浜辺を歩く 257-259).
『神 RDB06』では絶滅危惧ⅠA 類にされた.
産地が局限されているうえに個体数も少なく,絶滅が懸念される.
ハマアザミは,シマアザミ C. brevicaule A.Gray,
オガサワラアザミ C. boninense Koidz.,オイランアザミ C. spinosum Kitam.
などとともに,ナンブアザミ節のなかで海岸線に特化したグループで,
関東地方はその東限にあたる(門田 1990 国立科学博物館専報 (23): 51-61).
*

手元にあるメモだが、昭和30年前後のことと思われるが、
三浦半島荒崎から諸磯湾の間の浜で観たとある(広範囲で場所は??)。
又、伊豆の城ケ崎でも観たとある。現在では不明だ。要調査。
日当たりのよい海岸沿いの砂地、草地、岩場。
探すにも大変。絶滅してる可能性のほうが大きい。
解説書にある花の基部・総苞片が反り返らず、張り付き重り鐘形。
総苞片の下に大きな苞葉が少しつく(苞葉には1~4個のトゲ)、
想像するだけで楽しい薊。
ハマアザミの若い芽や茎は、食用になる。
この種ではないが、天婦羅、味噌漬け、きんぴらにしてよく頂いた。
ハマゴボウ(別名)とは、根の形や香味がゴボウに似る事よる。
昨今は、ごぼう堀りなどしないだろうが綺麗に掘り採るのは難しい。
「令和陸年(皇紀2684年)11月30日」
11月
29日,
2024年
《 雅羅・/・〝備忘録 24-61〟❖ ’24-334 ❖ 》

海岸の岩場に生え、草丈10cm程。茎は太く這って広がりロゼット状になる。
主幹は葉をつけるだけで、株そのものは数年間生育した後、
側枝を出して花をつけて果実ができると普通枯死する。
葉は厚く倒卵形。葉先が円く基部は次第に細くなって翼になり縁に細かい鋸歯がある。
根生葉は下半部が羽状に切れ込むことがある。
側枝は主幹の葉腋から出て10cmほど地を這った後上向して密散房状の花序をつける。
頭花直径約1.5㎝、黄色の舌状花。総苞は細長く総苞片は2列。外総苞片は短い。
花期は夏の終わりから冬の初め。
《 私的・・幻の草本〝畔唐菜〟》
11月
28日,
2024年
《 雅羅・/・〝備忘録 24-60〟❖ ’24-333 ❖ 》

静岡県以西、四国、九州、琉球列島に自生する。
暖温帯~亜熱帯の常緑広葉樹、やや乾燥した林床に生える。
シュンランと分布が重なる事もあるが、
カンランは、平野部近くに見える。
草丈20~60cmの多年草。
新旧の球茎が地表に連なり、太い根を地中に伸ばし、
角質で線形の葉を数枚つける。
花は茎頂に総状の5~10個、やや疎らに緑色~紫色の花を付ける。
苞は膜質で線形、長さ8~30mm。
萼片は広線形でよく開き鋭尖頭、長さ3~4cm,幅3.5~4.5cm。
花弁は披針状線形で長さ2~3cm、蕊柱を取り囲むように伸びる。
唇弁は舌状で肉質、長さ2~2.7cm、淡黄色で紫紅色の斑紋が入り、
中央に2本のひだ状隆起がある。
蕊柱は湾曲し、長さ約8mm。葯はやや角ばった半球形。
花は芳香があり、色は変化に富む。

シュンランの葉の鋸歯は微細でルーペがないと判らない。
※ 以上の画像、総て借り物 ※
《 私的・・幻の草本〝寒蘭〟》
** 神奈川県植物誌 **
A061 ラン科 ORCHIDACEAE
37.シュンラン属 Cymbidium Sw.
(中島稔,『神植誌 01』:秋山守・佐宗盈,図:秋山守)
地上生または着生.根茎の地上部は通常偽球茎となり,
根は一般に太いひも状で四方にのびる.
葉は線形~狭長楕円形で左右に叢生し,
一部は緑葉がなく菌従属栄養性が進化している.
また,緑葉がある種でも共生菌への依存度が高い事が判明している.
花茎は偽球茎基部から生じ,基部または上部に少数の鱗片葉をつける.
花はやや大きく 1 個または数個を総状につけ,苞は短い.
萼片と側花弁は離生し,開出または斜開する.
唇弁はずい柱基部につき 3 裂し,側裂片は幅広くずい柱を抱き,
中裂片は分裂せず基部から中央部まで 2 隆起線がある.
ずい柱は長く半円錐状.花粉塊は 2 個.
東アジア,マレーシア,インド,オーストラリアに約 55 種が知られ,
日本には 10 種が分布し,県内には 4 種が自生する.
*
両親の記録メモの中に聞いたことのない花名があった。
調べてみると“寒蘭”。阿波寒蘭、紀州寒蘭、日向寒蘭、薩摩寒蘭。
特に、高知県産のものを土佐寒蘭と称する由。
寒蘭は花の形、花の色、葉の形等、変化の多い植物らしい。
寒蘭全てでは、日本だけでも2千5百種を超える由!!
園芸種を含めてのことだろうが・・。
調べていくと、希少種が故に自生種は、盗掘で絶滅寸前!?!
園芸大国・日本だが、余りにも情けない実情でもある。
身近な里緑地に、同属の春蘭が居るがとても似ているようだ。
まだ観ぬ野生の寒蘭だが、是非に自生を観てみたい。
* *
あるブログに高知県の寒蘭を紹介している記事を見つけた。
* * *
ハルカンラン咲く 自然界ではまぼろし
2020.03.18 06:33|野生ラン・3月|
2014/4/20 の記事を改めて掲載しました。
牧野植物園で、ハルカンランが咲いています。だが、自然界でこの花に出会うことはないでしょう。
ハルカンランは、カンランとシュンランとの自然交雑種と推定されており、
学名は Cymbidium × nishiuchianum です。
種小名(nishiuchianum)は、寒蘭の栽培技術の研究、普及に努めると共に、
土佐愛蘭会を創立した西内秀太郎氏のことです。
カンランは花も姿もいろいろと変化がありますから、
ハルカンランと命名されるまでは、カンランの品種として栽培されていたのではないか、と想像します。
カンランの花期は秋から初冬にかけて、シュンランは春ですからずれがあります。
しかし、大昔の高知県ではカンランの開花株も沢山あったそうです。
シュンランは高知県人は手を出す者はいなかったので、いくらでも咲いていたはずです。
ですから、遅咲きのカンランと早咲きのシュンランとが出会う機会もあって、
ハルカンランが誕生したと考えられます。
これは昔の話。今はカンランの開花株は捜しまわても見ることはできません。
自然界に両者が同時に花を咲かせて、交雑種が誕生することは夢のまた夢でしょう。
「令和陸年(皇紀2684年)11月28日」
11月
27日,
2024年
《 雅羅・/・〝備忘録 24-59〟❖ ’24-332 ❖ 》

学名:Solidago decurrens Lour. var. decurrens
synonym Solidago virgaurea subsp. asiatica
別名:アワダチソウ、サイバナ

北海道〜九州の日当たりのよい山野に生える。茎高30〜80cm。
根生葉は、ふつう花期には枯れる。
茎葉は長さ7〜9cmの卵状楕円形で、基部は細くなって葉柄の翼に 続く。
枝の上部に直径約1.3cmの黄色の頭花を多数つける。
中心に両性の筒状花、まわりに雌性の舌状花がある。
総苞片はほぼ4列に並ぶ。外片は短い。
そう果は円柱形。冠毛は長さ約3.5mm。花期は8〜11月。(野に咲く花)
《 懐かしい草本〝秋の麒麟草〟》

51.アキノキリンソウ属 Solidago L.
(勝山輝男,『神植誌 01』:大場達之,図:大場達之)
多年草.葉は互生.
頭花は茎の頂部に円錐花序,散房状花序などをなして集まりつく.
総苞は狭筒形,楕円形など.花は黄色.総苞片は多列.花床は蜂巣状.
舌状花は雌性で,周辺に 1 列,中心に両性の筒状花がある.
または雌性花は退化してすべて同形の筒状花からなる.
痩果は円柱形で 8~12 本の縦肋がある.
冠毛は多数で細く,1~2 列,やや不同長.
北アメリカを中心に約 120 種があり,ユーラシアに少数があり,
また北アメリカの 2~3 種が世界に広く帰化する.
県内には在来種が 1 種分布し,帰化種が 4 種ある.

Solidago virgaurea L. subsp. asiatica (Nakai ex H.Hara) Kitam. ex H.Hara
茎は単立または数本叢生し高さ 30~80cm.
根生葉は花時には枯れている.茎中部の葉は披針形から卵状楕円形.
縁に鋸歯と毛があり,長さ 7~9cm.幅 1.5~5cm.
頭花は長さ 3~6mm の柄があって,径 12~14mm.
総苞は長さ 5~5.5mm.総苞片は外片ほど短かく,鋭頭.
舌状花は長さ 6.5~8mm.痩果は円柱形で,無毛.冠毛は長さ 3.5mm.
北海道,本州,四国,九州;朝鮮に分布.
乾いたススキ草原,明るい林縁,河原などに生える.ススキ群綱の標微種.
*
11月
26日,
2024年
《 雅羅・/・〝備忘録 24-58〟❖ ’24-331 ❖ 》

学名:Crepidiastrum platyphyllum
ワダン(海菜) ;アゼトウナ属
関東南部~東海地方、伊豆七島の海岸に生育する多年草。
草高30-60cm。1回繁殖型で花が咲くと枯れる。
全体に無毛で茎は太くて短い。
先端に多数の根生葉がロゼット状に叢生する。
葉腋から側枝が放射状に伸び匍匐した後,斜上する。
根生葉は倒卵形で、先は丸く全縁で長さ10-20cm。
側枝に付く葉は小さい。葉の質は柔らかくやや厚い。
裏面は粉白を帯び、千切ると白色の乳液が出る。
秋、側枝の先に多数の黄色の頭花を密に付ける。花期は9-11月。
ワダン名は、日本語の古語で「海」を意味する「ワダツミ」、
それと「ワタ菜」から来ているという説がある。
かの牧野博士は、「おそらくワタナの訛りであろう。
ワタは海を指し,ワタナは海岸生の菜という意味である」
(『改訂増補 牧野新日本植物圖鑑』)
近縁種にホソバワダンがある(根出葉の幅が狭い)。
島根県・山口県〜沖縄の海岸・岩場や礫地に生える。
《 懐かしい草本〝海菜〟》

(1)ワダン Crepidiastrum platyphyllum (Franch. & Sav.) Kitam.;
Crepis integra Miq. β. platyphylla Franch. & Sav., Enum.Pl. Jap., 1(2):
272 (1875) の基準産地は猿島(横須賀市)多年草.
葉は倒卵形で全縁.
主茎の葉腋から出る側枝はやや地上をはってから立ち上がり,
9~11 月に黄色い頭花をつける.1 頭花の小花はふつう 5 個.
西日本に産する近縁のホソバワダン C. lanceolatum (Houtt.) Nakai よりも
葉の幅が広く,総苞内片は 5 個で少ない.
本州(千葉県~神奈川県にかけての海岸と伊豆七島)に分布する.
杉本(1984静岡県植物誌)によると,
大正の頃に伊豆東岸に稀生したが今は絶滅とある.
海岸の岩場に生える.
県内では三浦半島にやや普通に産するほか,真鶴での記録がある.
*

三浦半島の岩礁では晩秋から冬にかけて黄色い花を見せる。
ワダン(クレピデアストラム プラティフィルム)、
種名のplatyphyllumは、幅の広い平たい葉を意味する。
又、漢字で海菜、海の事をワタと云う由。
ワタの菜っ葉が転じて海菜(ワダン)。
陽当りよい場所に広い葉を広げ、黄色い舌状花の頭花が魅せる。
遠目には、晩秋に見る盆栽を思わせ、
人工美に無い自然の強さがみえる。
ワダンは千葉県から静岡県の海岸崖に見える(東京湾では確認されていない。
潮騒・潮風が吹き付ける崖、岩の隙間に静かに佇んでいるが、減少している。
また、近縁種に中国地方・日本海側や沖縄にホソバワダンが自生している。
強い潮風に立ち向かい生きる樣を見せてくれる花々。自然界の妙だ。
遺伝子の塩基配列の研究で新しい植物分類が再構築されているが、
自然・土壌は、人間知能の上を先行しているように感じる。
かつて横須賀周辺で観られた所が、人の手によって消えた。
自然は、強い。何時か突然に顔を出すかもしれない。
「令和陸年(皇紀2684年)11月26日」
11月
25日,
2024年
《 雅羅・/・〝晩秋の草本〟❖ ’24-330 ❖ 》

北海道〜九州の沼沢地や河畔、水田用水路等に生え大形で群生する。
茎高1.5〜2m。根茎は太く横走し茎は円形、堅く平滑・無毛。
葉は長さ30〜50cm、幅25〜30mm、堅く平滑・無毛、縁はざらつく。
葉舌は毛状。葉鞘は長く、成長初期の頃には毛が密生する。
花序は長さ30〜50cm、先端はやや下垂し、ススキより密に小穂をつける。
枝は長さ15〜30cm、花軸と共に平滑・無毛、
各節から長短の小梗(枝)を双生して小穂をつける。
短い小梗は長さ3〜4mm、長い小梗は6〜7mm。
小穂は長さ5〜6mm、淡黄褐色、芒がなく基部に絹光沢のある毛をつける。
2個の包穎は薄膜質、白色の毛を生じる。 花期は8〜9月。(日本イネ科植物図譜)

(1)オギ Miscanthus sacchariflorus (Maxim.) Benth.
地下茎は長くはい,稈は 1 本ずつ離れて立つ.
高さ 2.5m に達し,大群落をつくる.基部の葉は早く枯れる.
花序は頂生し主軸は短い.花期は 9~10 月.小穂は長さ約 5mm.
小穂の基部や包穎から銀白色の長い軟毛が生え,
毛を含む小穂の長さは包穎の 2~3 倍になる.
本種の特徴として,「基毛が長い」と図鑑等に書かれているが,
必ずしも基毛は長くない.

県内では山地を除き全域に普通.河川敷や湿地に生える.
*
見た目は ススキ とそっくり。しかしいくつかの違いがある。
まず、ススキは一つの株根から多数の茎がまとまって出るが、
オギは根が横に伸びるため、一本づつ並んで出る。
また茎に竹の様な節(膨らみ)があり、小枝が出る。
穂先にある小穂の綿毛がオギのほうがずっと長く、
色が純白で銀色に見える。
云うは易し、見るは難し!!年寄は注意深く観察しないと、、、。
水辺で近寄れないから。ポイントを抑えて他人に説明する。
オギの群生は、見るものの心を掴んではなさない。
神奈川県の丹沢山地から相模湾に朗々と流れる相模川。
川の下流近い所、寒川に鎮座する寒川神社(雨の神様)。
その近くの河原に荻の群生地がある。そこでの景観は圧巻だった。
子供の頃に観た光景は、緑一線の奥に大山が鎮座していた。
時が流れると、そこの光景は、白い住宅中層建物が一線で眼の前を覆う。
遠景は変われど“オギ”の美しさは変わらない。白銀の晩秋景観自体は。
「令和陸年(皇紀2684年)11月25日」
11月
24日,
2024年
《 雅羅・/・〝備忘録 24-57〟❖ ’24-329 ❖ 》

学名:Orostachys japonicus (Maxim.) Berger.
synonym Sedum erubescens Ohwi
別名:ヒロハツメレンゲ

在来種で本州(関東地方以西)、四国、九州に自生している。
和名は葉が獣の爪のように先が尖り、仏の蓮華座を思わせる事による。
葉は長さ3~6㎝、幅0.5~1.5㎝の披針形、多肉質、先が尖る。
ロゼットの中心から長さ10~30㎝の長い花茎を伸ばし、
白い花を密につける。花は直径6~8㎜。
花弁は5個、白色、披針形。雄蕊10個、葯は紅色。雌蕊5個。
《 未見の 草本〝爪蓮華〟》

(1)ツメレンゲ Orostachys japonica (Maxim.) A. Berger
花は 9~10 月,白色.葯ははじめは赤黄色である.
本州,四国,九州;朝鮮,中国(東北部)に分布.
県内では愛川町半原,津久井町青根・東開戸,藤野町などにわずかに見られる.
愛川町では川岸の岩礫地にイワヒバなどにまじって生えている.
『神植目 33,神植誌 58』は丹沢塔ノ岳を産地としてあげている.
『神 RDB06』では絶滅危惧ⅠA 類とされた.
*
我が家のメモでは、1990年代初頭の11/24に見た、とある。
場所の詳細が帰されていないが、与瀬辺りらしい。
今の相模原市から上野原市あたりだろう。
現地探索してみたく、備忘録とする。
「令和陸年(皇紀2684年)11月24日」
11月
23日,
2024年
《 雅羅・/・〝備忘録 24-56〟❖ ’24-328 ❖ 》

学名:Acer amoenum Carr.
Acer palmatum Thunb. subsp. amoenum (Carriere) H. Hara
別名:ヒロハモミジ(広葉もみじ)

北海道中部以南、太平洋側は青森県以南、日本海側は福井県以南〜九州に自生。
多少湿り気のある日当たりのよい斜面に生える。太平洋側の山地に多い。
高さ10〜15m、直径50〜60cmになり、樹皮は灰褐色。
若木ではなめらかだが、のちに縦に浅く割れる。
若枝には毛があるが、のちに無毛となる。
葉は対生。葉身は直径7〜12cmで掌状に5〜9裂。基部は浅いハート形。
裂片は楕円形または長楕円状披針形で先は尾状に尖り縁に細かい鋸歯がある。
葉裏面の脈腋に毛がある。葉柄は葉身の2分の1〜5分の4の長さ。
成葉では無毛、ふつう葉柄の上面に溝がない。黄・紅葉が美しい。

果実は翼果。分果は長さ2〜2.5cm。
翼はやや鋭角または鈍角に開く。6〜9月に熟す。花期は4〜5月。
冬芽の芽鱗は4対で外側の1対だけ見える。
基部は黄褐色の膜質鱗片に包まれ、鱗片のふちに毛が並ぶ。
頂芽はふつうできず、枝先に仮頂芽が2個つく。
葉痕は三日月形。(樹に咲く花)
《 私的彩好の木〝大紅葉〟》

(10)オオモミジ Acer amoenum Carrière
雌雄同株の落葉高木.よく植栽され,数多くの園芸品種がある.
前種とよく似るが,葉が大きいこと,単鋸歯であることのほかに,
分離翼果の開度 120~130 度で翼が長いこと,
果皮が厚いことでも区別できる.
ただし若い木ではしばしば重鋸歯となるので注意を要する.
また,葉の切れ込み方には変化が多く,
葉の裂片が幅広いものはヒロハモミジ form. latilobatum (Koidz.) K.Ogata,
深裂するものはフカギレオオモミジ form. palmatipartitum (Koidz.) K.Ogata
と呼ばれることがあるが,変異は断続的であり,
県内でもさまざまなタイプのものが見られる.
4 月ごろ開花し,新枝の先に暗紅色の花を散房状につける.
北海道,本州(東北地方~北陸地方までの日本海側を除く),四国,九州に分布する.
山地のブナ帯下部の落葉広葉樹林を中心に分布する.
県内では丹沢,箱根,小仏山地のシイ・カシ帯~ブナ帯下部に普通に見られるほか,
多摩丘陵,三浦半島,大磯丘陵などにもわずかに見られる.
なお,1 年中葉が赤い園芸品種をノムラカエデと呼び,
近年,自然公園内の園地や歩道沿いにも植栽されていることがある.
また,そうした植栽には,日本海側に分布する変種であるヤマモミジ系
と考えられる園芸品種もまざっている.
自然公園内への植栽は,本来の景観を大事にする意味からも,
フローラの混乱を防ぐためにも,自生種に限るべきであり,
園芸品種や近縁の別種が分布しているような種は避けるのが当然であろう.
こうした点で関係者の配慮を望みたい.
*
オオモミジはイロハカエデ・ヤマモミジによく似ている。
イロハカエデの変種、ヤマモミジの亜種とも分類されてきた。
オオモミジは、葉が大きく鋸歯の細かな所、色合いも微妙。
山間に見る“褐葉”色、その先に魅せる黄葉から紅葉への移り変わり、わび・さびの世界。
11月
22日,
2024年
《 雅羅・/・〝不明の葉〟❖ ’24-327 ❖ 》
今年も泉の森で魅せてくれた“杜鵑草”。
この野草の特徴としては、紫色の斑紋がある。
斑紋には横縞模様から大小の斑点まで様々。
ユリ科ー カロコルツス亜科ーホトトギス属。
ホトトギス属植物は19種あり日本には12種分布している。
この内の10種は日本だけに生育する日本固有種。
分布の地図からすると日本はホトトギス属分化の中心地。
1,白色(基本色)で、上向きに咲く花を着け、
茎に斜上する毛の出るホトトギス節にホトトギスとタイワンホトトギス。
2,白又は黄色(基本色)の花を上向きに咲かせ、
茎に斜め下向きの毛の出るヤマホトトギス節に、
ヤマホトトギス、ヤマジノホトトギス、セトウチホトトギス及びタマガワホトトギス。
以上の中で泉の森で見られるのは、ホトトギスとタイワンホトトギス、
ヤマホトトギスの3種と確認している(野生種・園芸種を問わず)。
こうした杜鵑草の中には、自然交雑したと見れるものも居る。
観察しているものからすると楽しいかぎりだ。
泉の森植物を知り尽くしている観察者がおられる。
保護・保全をされている中での貴重な情報を頂いた。
「以前、森の中に白い単色の杜鵑草が立っていた由。
詳細観察しようと再観察に行くと盗掘されてしまっていた。
今年、その周辺で新茎・葉を見つけた事を教えてくださった。」
生育地を案内して頂き観ると、唸ってしまった。
かわいい互生の葉、茎等を見ると、ヤマホトトギス!!
一般的に云われている白い、白系単色花弁の杜鵑草なのか??
よく紹介されているシロバナホトトギスは、園芸種か。
野生自生種の杜鵑草は、シロバナヤマジノホトトギスと云う由。
眼前の若い茎(葉も)の姿は、ヤマホトトギスそのものだった。
来年へに向けて生育を観察を続けたい。楽しみだ。
11月
21日,
2024年
《 雅羅・/・〝備忘録 24-55〟❖ ’24-326 ❖ 》

センボンヤリ(千本槍) キク科(Asteraceae)
学名:Leibnitzia anandria (L.) Nakai
別名:ムラサキタンポポ(紫蒲公英)

センボンヤリ(千本槍);多年草
日本全土の山地や丘陵の日当たりのよい草地などに生える。
葉は根もとに集まってロゼット状になる。
春の葉は卵形で、縁には欠刻があり、裏面には白いクモ毛が密生する。
秋の葉は長さ10〜16cm、幅3〜4cmの倒卵状長楕円形で、羽状に中裂する。
頭花にも2型ある。
春の花は直径約1.5cmで、高さ5〜15cmの花茎の先に1個つく。
頭花はまわりに裏面が紫色を帯びた舌状花が1列に並び、
中心部に筒状花がある。
夏から秋には高さ30〜60cmの花茎をのばし、先端に閉鎖花を1個つける。
閉鎖花は筒状花だけが集まったもので、
長さ約1.5cmの総苞に包まれたまま実る。
そう果は長さ約6mm。冠毛は淡褐色で長さ約1cm。
花期は4〜6月、9〜11月。(野に咲く花)
《 私的未見の花・魅せる花〝千本槍〟》

[Ⅰ.センボンヤリ亜科 Subfam. Mutisioideae]
(亜科の解説と属への検索表:勝山輝男)
キク科の初期に分化したグループの大部分は南アメリカに産するが,
本亜科のみが日本に産する.
南アメリカを中心に約 46 属がある.
日本にはセンボンヤリとノブキの 2 属 2 種のみがある.
A.頭花の中心の筒状花は 2 唇形の花冠をもつ................... 1.センボンヤリ属
1.センボンヤリ属 Leibnitzia Cass.(佐々木あや子,『神植誌 01』:大場達之,図:佐々木あや子)
多年草.葉は根生しロゼット状.
頭花は長い柄の先に単生し,春に咲くものは舌状花があり,
夏から秋に出る花は閉鎖花で,筒状花のみからなる.
葉は頭大羽状(ダイコン状).総苞は管状.花床は平坦で浅い穴がある.
小花は2 唇形.痩果は偏平で,短毛があり,多数の冠毛がある.
東アジア~ヒマラヤと北アメリカに 6 種があり,日本には 1 種のみがある.
(1)センボンヤリ Leibnitzia anandria (L.) Turcz.
春に咲く舌状花は白色で下面は紅色を帯びるためムラサキタンポポの名もある.
葉にはクモ毛があり,下面には密生して白く見える.
また秋の閉鎖花は長く伸ばした花茎の先につく.
北海道,本州,四国,九州;東アジアの東北部に分布.
シイ・カシ帯~ハイマツ帯に分布.
乾いた林,草原,崩壊地周辺などに生える.冲積地には見られない.
*
日本の各地で見られる野草のようだが、神奈川県内では東側地域では見かけない。
春・秋と二度開花するようだ。秋に咲く花は、特徴的に由。
秋の花茎、その姿を千本の槍に見立てたとか。
センボンヤリの春花は、黄色い管状花。一見するとタンポポ!!
それ故に、ムラサキタンポポと別名する由。
名前の由来となっている秋の花は、花が開かずに実ができる閉鎖花。
実際に観察したい千本槍。詳しい解説は下記を参考にされるといい。
11月
20日,
2024年
《 雅羅・/・〝備忘録 24-54〟❖ ’24-325 ❖ 》

学名:Limonium tetragonum (Thunb.) A.A.Bullock
synonym Limonium japonicum (Siebold et Zucc.) Kuntze

イソマツ属の在来種で本州(太平洋岸)、四国、九州に自生する。
ハマサジは、塩湿地に生える草本。国の絶滅危惧Ⅱ類。
和名は葉の形が匙に似て、海岸に生えることによる。
2年草、高さ30~50㎝。
葉は根際に束生し、長さ8~17㎝のへら形、質は厚く、全縁、
先は鈍頭~鋭頭、基部は次第に狭くなり葉柄となる。
葉の中央から花茎を伸ばし、著しく分枝し、
円錐花序に多数の小穂をつける。
小穂は稔性の花1個と不稔性の花1個からなる。
小穂の基部の苞は1個つき、緑色、長さ2~3㎜、鋭頭。
その内側に2個の小苞がある。
上側の小苞は大きく、長さ約4㎜、下側の小苞は長さ1~1.5㎜。
萼は長さ5~6㎜の筒状、先が白色で浅く5裂し5稜があり果時にも残る。
花冠は長さ約7㎜、萼より長く下部が白色、先が黄色、
深く5裂し、裂片はさじ形。雄しべ5個。
雌しべ1個、花柱5個。果実は長さ2.5㎜の紡錘形の痩果。花期は8~11月。
*
かような解説文を拜すると、一度は見に行かないと。。。!
《 私的未見の花・魅せる花〝浜匙〟》
河口の汽水環境を代表する植物に由。
本州の宮城県以南~九州に分布するらしいが、
関東地方の海岸線は、環境の多くが埋め立てられてしまい、
目にする機会がありません(引用文)。
我が家にあるメモだけでは、何処で観たのか不明。
九州の何処かで観たらしい。
今でも群生している場所は、あるのだろうか??
「令和陸年(皇紀2684年)11月20日」
11月
19日,
2024年
《 雅羅・/・〝備忘録 24-53〟❖ ’24-324 ❖ 》

アケボノシュスラン(曙繻子蘭) ラン科(Orchidaceae)
学名:Goodyera foliosa (Lindl.) Benth. ex C.B.Clarke var. laevis Finet

本州〜九州の山地の林内に生える。
茎の基部は地をはい、上部は斜上し、高さ5〜10cm。
葉は数個互生し、長さ2〜4cm、ふちは波打つ。
茎頂に数個の淡紅色の花をややかたよってつける。
萼片は狭卵形で長さ約8mm、側花弁、唇弁もほぼ同長。
側花弁の先端は萼片に少し合着する。
唇弁の基部は膨らむ。花期は8〜9月。(山に咲く花)
《 私的未見の花・魅せる花〝曙繻子蘭〟》

(4)アケボノシュスラン Goodyera foliosa (Lindl.) Benth. ex C.B.Clarke var. laevis Finet;
G. foliosa var. maximowicziana(Makino) F. Maek.; G. maximowicziana Makino
常緑性.茎は高さ 5~10cm.
葉は 4~6 枚が互生し淡緑色の主脈を中心に縦脈 3 本が目立つ.
花序は無柄で,軸にまばらに腺毛がある.花期は 9~10 月.
花は花軸の片側につけ淡紅色をおびた白色.苞は披針形.萼片は狭卵形.
側花弁は広倒披針形で背萼片と重なる.
唇弁は卵形で基部は胞状に膨らみその内側に腺毛状の毛がある.
小嘴体は細長く2 裂する.蒴果は長卵形.
北海道,本州,四国,九州;朝鮮,中国,台湾,インド,ヒマラヤに分布する.
おもに落葉樹林の林床に生える.
県内では箱根山麓と三浦半島の樹林内に点在するが少ない.
『神 RDB06』では絶滅危惧Ⅱ類とされた.
基本変種のツユクサシュスラン var. foliosa は
全体に大きく,九州~琉球,伊豆諸島,小笠原諸島に分布する.
*
八丈富士・三原山の標高の高い場所に自生が観られる由。両親のメモ。
茎の基部は地表近くをはう。環境の厳しさを伺わせる。高山植物に通じる。
メモを読むと、刺激が強すぎる。
「令和陸年(皇紀2684年)11月19日」
11月
18日,
2024年
《 雅羅・/・襍録〝東山薊-Ⅱ〟❖ ’24-323 ❖ 》
学名:Cirsium microspicatum Nakai
本州(東北地方南部から近畿地方の主に太平洋側)に自生している日本固有種。
先月、10月17日付けBloguruで東山薊を記した。
その後、泉の森植物観察精通者の御三方に助言を頂けた。
10月~11月に観察を続けると色々とわかって来る。
生育の過程、環境の違い等々興味・関心がたかまる。
数メートルしか離れていないのに環境的生育差が大きい。
11月
17日,
2024年
《 雅羅・/・〝晩秋の樹葉〟❖ ’24-322 ❖ 》
学名:Celtis sinensis Pers.
synonym Celtis sinensis Pers. var. japonica Nakai
別名:エ、エノミノキ、エンノキ、ヨノキ等
エノキ(榎木);
近在の社寺境内、公園、山地に普通に見られる。
大木になると、1本でも林のような大きな梢を作る。
大木に育つが先駆種で暗い樹林内では育たない。
林縁部や新しく開けた場所に多く見える。
樹皮は厚く灰黒色ぽい小さな皮目でざらざら感がある。
横方向に皺がより象の皮膚の様にも見える。
葉は互生、左右不同の広卵形または楕円形。
縁の上部に鋸歯がある。葉の基部から出る3脈が目立つ。
これがエノキの葉の特徴。雌雄同株、雄花・両性花。
4月に新枝の下部あるいは葉腋に雄花をつける。
そして、新枝上部の葉腋に両性花が付く。
枝の上で雄蕊の開いていない花が両性花で雄花が早く開花。
果実は核果で10月頃に赤褐色に熟す。種子は果実に比べ大きい。
食べる部分は少ないが、小鳥の好物の様で結果、鳥の広散布になる。
昔は、子供のおやつだった由。
種子の表面に皺があり、ひび割れ模様ができる。
鳥の消化器を通過できるように堅い(自然界の妙)。
1年枝は、春になるとすべての芽から一斉に芽吹く。
しかし基部の方の枝はあまり成長せず、翌年には枯れてしまう。
エノキの黄葉。ケヤキより葉が厚く、艶のある黄色は鮮やか。
エノキノ花は、ケヤキの花と良く似て識別が難しい(私自身だが)。
葉は、葉脈の形で識別できる。
《 黄葉が眩しい。輝いて魅せる木〝榎木〟 泉の森 》

エノキ Celtis sinensis Pers.;
C. sinensis var. japonica (Planch.) Nakai; C. japonica Planch. in DC. Prodr.
17: 172 (1873)の基準産地の 1 つは横浜.
樹皮は灰褐色.1 年生枝には軟毛がある.
葉は左右不同で,先の方半分に鋸歯があり,長さ 5~9cm,
上面はほとんど無毛,側脈は 3~4 対で先端は鋸歯に達しない.
冬芽は軟毛があり,芽鱗は 2 対.雌雄同株.花期は 4~5 月.
果柄は長さ 0.5~1.5cm,果実は赤褐色に熟し,
直径 6~8mm で食べられる.材は建築,器具などに用いられる.
本州,四国,九州;朝鮮,中国の暖帯~温帯に分布.
人里に多く,昔から一里塚として街道沿いに植栽された.
県内ではブナ帯を除いて広く分布する.
「余録」
「一里塚」・・一里塚を広辞苑で調べると
「街道の両側に一里ごとに土を盛り里程の目標にした塚。多く榎を植えた。」
古くは平安時代末期に奥州藤原氏が里程標を立てたのが始まりとされる。
室町時代の一休和尚の歌に
「門松は冥土の旅の一里塚 目出度くもあり目出度くもなし」があり、
一里塚の言葉は一般化していたことが分かる。
江戸時代に主要街道の整備と共に一里塚も整備された。
その整備の際に、並木としては松や杉を植え、
一里塚にはエノキが植えられた。
エノキは成長が早く枝を繁らせ、
よく根を張るので塚の土盛りが崩れるのを防ぐので
採用されたと解釈できるが、いろいろな説がある。
当時の総奉行大久保長安が
「一里塚には余の木(松以外の木)を植よ」
との家康の命を聞き誤りエノキを植えた、
という説が面白いとしてあちこちで紹介されている。
明治36年刊行の「大日本有用樹木効用編」には、
エノキは生でも燃えやすいので軍事上、
夜戦のときに使うことができるとして
植えられたという説が紹介されている。
実際に五街道の一里塚の樹種を調べるとエノキは過半数(55%)を占め、
以下、松、杉、栗、桜と続くようだ。
塚の大きさは一般に五間(9m)四方、高さは一丈(3m)で、
道の両側に作られたのでかなり大がかりなものだった。
現在でも各地域の史跡として保存されている場所が多い。
地名にも笹塚など「塚」の字が残っている。
一里塚は一里約3.9Kmごとに設けられた。
同様の目的で作られたものは他の国(単位)にもあり、
マイルストーンとかキロポストと呼ばれる。
マイルストーンはその名の通り1マイルごとに石の構造物が置かれた。
ローマ帝国のアッピア街道が始まりとされる。
古代ローマの1マイルは1000歩の距離で約1.5Kmとされ、
現在の国際マイルは約1.6Kmである。
一里塚もマイルストーンも、
大きなプロジェクトの途中の区切りの比喩で用いられることが多い。
「令和陸年(皇紀2684年)11月17日」
11月
16日,
2024年
《 雅羅・/・〝晩秋の樹実〟❖ ’24-321 ❖ 》

北海道、本州、四国、九州、沖縄、と全国各地で普通に見られる。
山野の林内や林縁に生え、樹高3m前後。樹(枝)皮は灰褐色。
はじめ細かい星状毛があるが、のちに無毛。皮目は縦長の楕円形。
幹は、灰褐色で枝は真っ直ぐに斜上する。
樹幹自体、真っ直ぐで堅く強い。道具の柄や杖、箸に用いられた。
葉は対生し、葉身は楕円形または長楕円形で、薄い洋紙質。
両端は次第に尖り、縁全体に細かい鋸歯があり両面とも無毛。
裏面には淡褐色の腺点が散在する。葉柄は長さ2〜7mm。
6~7月に葉腋から集散花序を上向きに出し、
淡紫色の花を多数開く(コムラサキより花の密度は少ない)。
花冠は長さ3〜5mm、上部は4裂し、裂片は平開する。
花弁は筒状で4裂、雄蕊4本、雌蕊1本。
雄蕊、雌蕊ともに花冠の外へ長く突き出る。
10月~11月に、球形の果実(核果)が紫色に熟す。
核果は直径3~5㎜、核(種子)は長さ2~2.5㎜、淡褐色。
落葉後も果実は残る。
属名のCallicarpaは「美しい果実」の意。
英名は、Japanese beauty-berry「日本の美しい実」。
葉は、気候条件によって黄葉の色合いは異なる。
似た仲間にコムラサキやヤブムラサキがある。
更にはヤブムラサキとの交雑種にイヌムラサキシキブがあり、
葉の裏面に星状毛が残る。
ムラサキシキブ・・・葉の鋸歯はほぼ全体。花序は腋生かわずかに上から出る。
コムラサキ・・・・・葉の鋸歯は上方のみ。花序は葉腋より少し上から出る。
《 果実と黄葉の色合いが綺麗な〝紫式部〟 》

1.ムラサキシキブ属 Callicarpa L.(関口克己,『神植誌 01』:城川四郎,図:城川四郎)
高木または低木,葉は対生し,腺点をもつものが多い.
花は葉腋から出る集散花序につく.花冠は短い筒部があり先は 4 裂する.
雄しべは 4 個,同長で花冠につく.柱頭は 2 裂,核果は球形.
世界に約 140 種,ヨーロッパ,北アメリカ,アジアに広く分布する.
日本には 6 種がある.県内には 2 種が自生し,逸出が 1 種ある.
A.枝,葉,花序は萼とともに密に星状毛があり,萼は深裂する.
葉の両面に腺点がある ..............(1)ヤブムラサキ
A.新芽や花序には星状毛が目立つが,他はほとんど無毛に近い.
萼は浅く裂け低い 4 歯をもつ.葉は下面だけ腺点がある
B.花序は腋芽に接するか,またはやや腋芽の上から出る.
鋸歯は葉の基部近くから出る
C.有花枝の葉は長さ 14cm 以下,葉面に光沢はない(無花枝の葉は長さ 15cm を超えることもある).
山地~丘陵に生える........................................................................(2a)ムラサキシキブ
C.有花枝の葉は長さ 15cm を超え,枝も太く,葉面はやや光沢がある.
海岸近くに生える....................................................................(2b)オオムラサキシキブ
B.花序は腋芽の上から出る.
鋸歯は葉の半分から上に出てやや粗い .............................................(3)コムラサキ
(1)ヤブムラサキ Callicarpa mollis Siebold & Zucc.
落葉低木.全体に星状毛が多いが,葉の上面は単純短毛がある.
本州(宮城県以西),四国,九州;朝鮮半島に分布する.
県内では箱根,丹沢,小仏山地,多摩丘陵,三浦半島に分布するが,
沖積地にはほとんど見られない.特に葉の小型のものをコバノヤブムラサキ
form. ramosissima (Nakai) W.T.Lee という.
標本:コバノヤブムラサキ 湯河原町 1985.5.23 山口育子 KPM-NA1018296;
厚木市七沢 1996.5.15 諏訪哲夫 ACM-PL007282.
(2a)ムラサキシキブ Callicarpa japonica Thunb. var. japonica
落葉低木.花も果実も淡紫色で,特に果実の優美さを才媛,
紫式部の名をかりて美化したものという.
成葉では全体ほぼ無毛であるが,脈腋には微細な星状毛が残る.
毛の量はかなり変異がある.
北海道,本州,四国,九州;中国,朝鮮半島に分布.
県内では全域にごく普通に分布する.
小葉品をコバムラサキシキブ form. taquetii (H.Lèv.)Ohwi といい,
本品種は山地分布である.
特に箱根に典型的な小葉品の分布が多いが,開花個体はほとんど見られな
い.
果実の白くなるものをシロシキブ form. albibacca H.Hara という.
(2b)オオムラサキシキブ Callicarpa japonica Thunb. var. luxurians Rehder
前種の海岸型である.花序がやや腋上性の傾向がある.
ムラサキシキブとの中間形があり連続する.
本州,四国,九州に分布する.県内では沿海地を中心に分布している.
→(3)コムラサキ Callicarpa dichotoma (Lour.) K.Koch
落葉低木.ムラサキシキブの名でよく栽培されている.
果実が白色に熟するものもある.
箱根,丹沢,三浦半島以外の地域で採集されているが,
県内に自生していたものではなく,栽培品の逸出と考えられる.
雑種
1)イヌムラサキシキブ Callicarpa ×shirasawana Makino
ムラサキシキブとヤブムラサキとの雑種と考えられる.
ヤブムラサキに比べ各部の星状毛が少なく萼は中裂する.
横浜市,川崎市,相模原市などで採集されている.
*
「余録」
ムラサキシキブ名に付いて興味深い資料がある。
江戸期・町人文化の粋、化政文化(1804年-1830年)時代。
園芸の隆盛を極めた頃に記された文献に『本草綱目啓蒙』がある。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』(1806)32 紫荊の条に、
「ヤマムラサキト云、一名ムラサキシキミ 紫式部 タマムラサキ
コメウツギ紀州 コメゴメノ木越後」。
この文面で、“一名ムラサキシキミ”に関心を持った。
ムラサキシキミ「紫重実」と書くが、重実とは実が重なり合うを意味する。
紫の実が重畳と重なり合うように稔る様だが、ムラサキシキブの同義語。
京都地方に伝わる古くからの呼び名。
こうした呼び名が、いつしか紫式部に落ち着いたか。和の美的表現。
「令和陸年(皇紀2684年)11月16日」
11月
15日,
2024年
《 雅羅・/・〝晩秋の果実〟❖ ’24-320 ❖ 》
関東以西〜九州のスギ林や竹林に生える腐生植物(菌従属栄養植物)。
茎は高さ2〜3cm。膜質鱗片がある。
花序は短縮し、茎頂から数個の花が束生状にでる。
花柄は長さ約2cm、果期には数倍に伸長する。
花は汚紫褐色。萼片は合着して先は3裂する。
花期は9〜10月。(山に咲く花)
《 特定できない 、判らない菌従属栄養植物〝黒八代蘭〟 》

(3)アキザキヤツシロラン Gastrodia confusa Honda & Tuyama
植物全体が通常緑褐色.
地下には短毛におおわれ,
また環状線のある蛹状の塊茎とうじ虫状の小体が多数ある.
梅雨期には黄褐色をした糸状の根状器官を盛んに伸ばす.
開花時の茎は高さ 3.5~15cm とクロヤツシロランより高く出る.
花期は 9~10 月.花は茎頂に 2~8 個つけ半開性.
萼片は合着し表面にいぼ状の小突起がある.
側花弁は背萼片と側萼片の合着部分に癒着し萼片より短い.
唇弁はほとんど黄白色であるが先端部と基部の横じわは橙色.
基部には 2 個の横に長いいぼ状隆起がある.
また,前部は卵形で先が細く,表面に二股の隆起線がある.
花柄は花後急速に伸び 40cm くらいになる.蒴果は細い紡錘形.
本州(茨城県以西),四国,九州;朝鮮(済州島)に分布する.
マダケやモウソウチクなどの竹林に生育する.
県内では南部の沿海地を中心に点在している.
(4)クロヤツシロラン Gastrodia pubilabiata Y.Sawa
アキザキヤツシロランによく似た種であるが,植物全体が暗紫褐色.
開花時の茎は高さ 1~3cm.花期は 9~10 月.
花は茎頂に 1~8 個つけ平開性.側花弁は狭楕円形.
唇弁の基部にある 1 対の球体の表面は網毛状突起に被われ,
先端には黒褐色をした 2 個の隆起線がある.蒴果は細い紡錘形.
本州(千葉県以西),四国(徳島県,高知県),
九州(福岡県,宮崎県,鹿児島県)に分布する.
アキザキヤツシロランと同じ竹林に混生する場合もある.
県内では南部の沿海地から多摩丘陵までの内陸部杉林,竹林,
ときに広葉樹林に広く点在し,
寄生菌の多様性からアキザキヤツシロランよりもはるかに多い.
*

クロヤツシロランは高知大学の澤助教授(当時)が、
1980年に新種として発表した草本。
花茎は地上部がほとんど伸びない。
花が暗紫褐色、葉は鱗片状で葉緑素はない。
果実になると花柄が40cm位まで伸びると図鑑等にあるが。。。
泉の森でこの10年来見れた種子茎は低かった。
クロヤツシロランは光合成を止めて、
地中のキノコ類(クヌギタケ科やホウライタケ科)
から栄養分を吸収するように進化した「菌従属栄養植物」。
そのため養分を作る葉は持たず、
花と種をつける短期間だけ地上に現れる。
地上ギリギリに咲く。受粉者のハチやチョウは飛来しない。
腐ったキノコの匂いを出してショウジョウバエを呼び寄せる。
クロヤツシロランの果実は見つけられるが、花を見たことがない。
頻繁に観察しないと出会いはない。今年も花を見損なった。
「令和陸年(皇紀2684年)11月15日」
11月
14日,
2024年
《 雅羅・/・〝晩秋の樹実〟❖ ’24-319 ❖ 》

学名:Rhamnus crenata Sieb. et Zucc.
synonym Frangula crenata (Siebold & Zucc.) Miq.

この樹の名前を知ったのは、20年以上前の事。
両親の話を聞いてであった。その後すっかり忘れて。。
親のメモを整理していて思い出したのである。
未だ見たことのない落葉低木。
地味な花らしいが、赤から黒く熟した実は綺麗。
それより関心を持ったのは、樹名の由来や用途。
メモには昔の丹波地方の伝聞や民族学者の話があった。
山仕事で枯れ木等の枝を結束するのに用いていた由。
“磯の木”という表現を見ると、海沿いを思うものだが、、!
自生している場所は、山間部が殆ど。関東では余り見ないらしい。
メモに、丹波地方では、イネを束ねるワラを“ユイソ”と呼んでいた。
“結いそ”という表現は、しなやかな枝を山仕事での結束に使っていた。
それが簡略され“ユ”が省略されて“イソノキ”として樹名が付いた。
命名の云われ由来は、定かではないがイソノキとは面白い名前だ。
11月
13日,
2024年
《 雅羅・/・〝里緑地の花 '11-3〟❖ ’24-318 ❖ 》
学名:Pertya scandens (Thunb.) Schultz-Bip.
synonym Pertya ovata Maximovicz
別名:キジカクシ
本州(関東地方以西)、四国、九州の山地の日当たりのよい林縁などに生え、
やや乾いた明るい雑木林の林床や林縁に見える、と図鑑等にある。
が、自生地環境に付いては場所や日陰等で色々な場所で見られる。
草本に見えるが、キク科木本に分類されている。面白い樹である。
花の付き方も注意しないといけない。
本年枝の先に直径1cmほどの頭花を1個ずつ付ける。
2年目以後の茎には葉が数個ずつ束生、縁には浅い鋸歯。
2年目以後の茎には花はつかない。興味深く観察している。
《 キク科の低木〝高野箒〟泉の森・クヌギの森下 》

5.コウヤボウキ属 Pertya Sch.Bip.
(佐々木あや子,『神植誌 01』:大場達之,図:佐々木あや子)
多年草または小低木.葉は互生.頭花は穂状,円錐状あるいは単生.
頭花は 1 個または 10 個内外の小花からなる.
総苞は鐘形で,総苞片は多列.小花はすべて筒状で,先は 5 裂し,裂片は反り返る.
痩果は縦肋があり,不同長多数のざらつく冠毛がある.
日本,中国,インドに 25 種が知られる.日本には 6 種.県内には 3 種と 1 雑種がある.
A.低木で,茎は分岐し,頭花は枝の先に 1 個ずつつく
B.頭花はその年に伸びた長い枝の先につく.花枝の葉は互生し有毛.
当年枝の葉は 5 対以上の突起状鋸歯がある.................................(1)コウヤボウキ
コウヤボウキ Pertya scandens (Thunb.) Sch.Bip.
小型の落葉低木.高さ 60~100cm.1 年生枝の葉は卵形,
2 年生枝の葉は節に束生し細い.いずれも 3 行脈があり,圧毛がある.
花は秋に咲き,頭花には 13 個位の小花がある.痩果は長さ 5.5mm.
長く伸びた先端近くの節から根をおろし,そこから発根して増えていく性質があり,
林床,林縁には群落しているところも見られる.冬芽は白い毛でおおわれる.
本州(関東地方以西),四国,九州;中国に分布.
シイ・カシ帯とブナ帯下部の乾いた林と,林縁に生える.
*
11月
12日,
2024年
《 雅羅・/・〝里緑地の花 '11-2〟❖ ’24-317 ❖ 》
立派な姿に驚く。この場所で・・・?自然・自生したのか??
而して種別、花名特定できない(己の知識不足)。
泉の森には、観察調査されてる見識者おられる。情報を待ちたい。
観る楽しみ・調べる楽しみはあるが、目の衰え(老化)がひどい。
識者の特定を待ちたい。情報不足(私的)。
だが散策の楽しみは、倍加する。それにしても泉の森は楽しい場所だ。

A111 キンポウゲ科 RANUNCULACEAE
11.トリカブト属 Aconitum L.
日本の種類はすべて多年草で,多年生の根茎をもつレイジンソウ亜属 subgen. Lycoctonum と,2 年生の塊根をも
つトリカブト亜属 subgen. Aconitum に大別される.茎は斜上あるいは直立,ときにつる状になる.葉は掌状に 3 深
裂~3 全裂し,裂片は欠刻するか鋸歯がある.花序は有限あるいは無限,頂生または腋生し,総状~散房~円錐花
序となる.花は淡紅紫色~青紫色または黄色,稀に白色.左右相称で,1 個の上萼片(かぶと),1 対の側萼片,1対の蜜弁(花弁),多数の雄しべ,3~5 個の雌しべからなる.花糸は中部以下が翼状に広がり,縁は先端が多少と
も尖り,歯となる.果実は袋果,種子には翼がある.北半球の温帯~寒帯に約 300 種が分布し,中国西南部が分布
の中心.日本には 19 種,県内の独立種としては 3 種がある.
トリカブト類の形態による識別は Kadota(1987)によってよく整理されたが,雑種や生態型と見られるものは変
異が連続的で,識別は困難である.ただし,県内の平地から低山地で最も多く見られるツクバトリカブトとヤマト
リカブトは,葉の形態で比較的容易に識別が可能である.
文献: 門田裕一 , 1983. 茨城県植物ノート(1):Aconitum. 筑波実験植物園研究報告 , (2): 93-107.
Kadota,Y., 1987. A Revision of Aconitum Subgenus Aconitum (Ranunculaceae) of East Asia. xvii + 249pp., 65pls.
Sanwa Shoyaku, Utsunomiya.
A.地下部は多年生の根茎.かぶとは明らかに幅より高さの方が大きい.蜜弁の舷部は細く,膨大しない.花柄に
は粗面屈毛が生える.花は淡紅紫色.根生葉は花時に宿存する ...........................................(1)アズマレイジンソウ
A.地下部は 2 年生の塊根,かぶとは高さより幅の方が大きい.蜜弁の舷部は太く,膨大する.花は濃青紫色~淡青紫色,
稀に黄白色~白色,根生葉は花時に宿存しない
B.花柄は無毛,葉は 3 深裂~3 全裂,裂片は粗い鋸歯があるか欠刻する ...........................................(2)カワチブシ
B.花柄は有毛,葉は 3 中裂~3 全裂,裂片は欠刻する
C.花柄には粗面屈毛のみが全面に密生する
D.葉は 3 深裂~3 中裂する.左右裂片の欠刻は比較的浅い傾向がある .............................(3a)ヤマトリカブト
D.葉は 3 全裂~3 深裂する.左右裂片の欠刻は比較的深い傾向がある .........................(3b)ツクバトリカブト
C.花柄には粗面屈毛と滑面開出毛の両方が生え,ときに腺毛がまじる
D.葉は 3 深裂~3 中裂する.左右裂片の欠刻は比較的浅い傾向がある ...................(4)イヌハコネトリカブト
D.葉は 3 全裂~3 深裂する.左右裂片の欠刻は比較的深い傾向がある .....1)ツクバトリカブト×センウズモドキ
(1)アズマレイジンソウ Aconitum pterocaule Koidz.; フジレイジンソウ A. fudzisanense Nakai
花柄には全面に粗面屈毛が生える.茎は円形または稜があり,稜はときに発達して翼状となり,直立またはつる
状に伸長する.葉身は輪郭が円形,3 浅裂~3 中裂し,裂片には粗い卵形~広卵形の鋸歯がある.葉柄と葉身の下面
脈上に粗面屈毛が生え,ときに粗面開出毛がまじる.花序は総状,下の花から開花する.花の外面には普通粗面屈
毛がまばらに生えるが,ときに粗面開出毛あるいは粗面伏毛が生える.かぶとは円筒形で,頂部は長く伸長し,し
ばしば粗面屈毛が生える.雄しべは無毛.本州(中北部の主として日本海側)に分布する.県内では小仏山地方面
に分布するが稀.『神 RDB06』では絶滅危惧ⅠA 類とされた.茎に稜があり,萼片の外面に直毛がある型はフジレ
イジンソウ A. fudzisanense とする見解がある.ただし,アズマレイジンソウには,茎の稜の発達の程度,萼片外面
の毛に変異があり,明瞭な識別点を認識できないため,アズマレイジンソウの一型とみなす.
標本:相模湖町小仏 1987.10.3 高橋秀男ほか KPM-NA1036754;藤野町佐野川 1987.10.14 高橋秀男ほか KPM-
NA1100246.
(2)カワチブシ Aconitum grossedentatum (Nakai) Nakai; ヤビツブシ A. maruyamae Nakai in Bull. Nat. Sci. Mus. Tokyo
32: 45-46 (1953) の基準産地は丹沢ヤビツ峠(1950.10.1 N.Maruyama TNS)
茎は斜上する.葉身は輪郭が 5 角形,稀に円形.普通 3 全裂するが,県内では 3 深裂のものがもっとも多い.また,
裂片は粗い鋸歯縁となるのが普通であるが,披針形の終裂片となるものもある.葉形の変異の幅は広い.花柄は無
毛.花冠のかぶとは円錐形,嘴は長い.雄しべと雌しべは普通無毛である.本州(関東地方西部~紀伊半島の太平
洋側),四国に分布.県内では丹沢に見られ,標高 1,400m を越える地域に分布するトリカブト類のほぼ 45%は本種で,
少し標高が下がって 1,100m~1,400m の地域になると本種は 15%,それ以下の標高になると本種の分布はなくなる.
丹沢山ヤビツ峠の標本に基づいて記載されたヤビツブシ A. maruyamae はカワチブシの一型と考えられる.雄しべの
花糸の歯が発達しないか,発達の程度が弱いことがその主要な特徴とされた.しかし,1 つの花のなかでも歯の発
達の程度には変異があり,独立した分類群とは認められない.
(3a)ヤマトリカブト Aconitum japonicum Thunb. subsp. japonicum; タンザワブシ A. unguiculatum Nakai in Bull. Nat.
Sci. Mus. Tokyo 32: 43-44(1953)の基準産地は丹沢の蛭ヶ岳(1927.10.30 K.Hisauti TI); ハコネトリカブト A.
senanense Nakai var. hakonense Nakai in Bot. Mag. Tokyo, 49: 504 (1935) の基準産地は箱根(1930.10.5 Nakai TI)
茎は直立または斜上する.葉身は輪郭が円形~5 角形,3 中裂~3 深裂し,裂片の切れ込みは浅いものから深いも
のまで幅の広い変異が観察される.葉形の変異の幅は広い.花柄には全面に粗面屈毛が生える.花冠のかぶとは僧
帽状~円錐形でしばしば頂部が前方に屈曲し,嘴が長い.雌しべは無毛,稀に粗面屈毛あるいは粗面斜上毛が背軸
側にまばらに生える.雄しべは普通粗面開出毛が密生するがときに無毛となる.本州(関東地方~東海地方)に分
布.県内では主として相模川以西の山地および丘陵地に分布する.丹沢の標高 1,400m を越える地域では,分布す
るトリカブト類のうち 15%だけが本種であるが,標高が下がって 1,100m~1,400m の地域になると 80%を本種が占
め,それ以下の標高になるとほとんど本種だけになる.丹沢の蛭ヶ岳の標本に基づいて記載されたタンザワブシ A.
unguiculatum はヤマトリカブトの一型と考えられる.雄しべの花糸の歯がよく発達することを特徴とされたが,前
述のヤビツブシの場合と同じ理由で独立した分類群とは認められない.
箱根の草原に生え,全体が小型で,茎が直立し,葉の裂片の切れ込みが深く,花序が散房状で,花が密集してつ
く型をハコネトリカブト var. hakonense (Nakai) Tamura といい,『神植誌 01』では区別したが,標本による明確な識
別は困難であり,ヤマトリカブトが草原に生えた直立型とする見解(Kadota 1987,門田 1988 神植誌 88)に従った.
(3b)ツクバトリカブト Aconitum japonicum Thunb. subsp. maritimum (Tamura & Namba) Kadota
茎は直立または斜上する.葉は輪郭が 5 角形,3 全裂~3 深裂し,左右裂片の欠刻が深いため葉身が 5 裂したかの
ように見えるものもある.葉形の変異の幅は広いが,ヤマトリカブトと比較すると,鋸歯は粗く,鋸歯先端の突出
が顕著な傾向にある.花柄には全面に粗面屈毛が生える.花冠のかぶとは僧帽形,嘴が長い.雌しべは無毛,稀に
粗面屈毛が背軸側にまばらに生える.雄しべはふつう粗面開出毛が密生するが,ときに無毛となる.本州(関東地
方~中部地方)に分布.県内では主として東部の海寄りの丘陵地に分布する.神奈川県が分布の南限にあたる.
11月
11日,
2024年
《 雅羅・/・〝里緑地の実 '11-1〟❖ ’24-316 ❖ 》
学名:Dumasia truncata Sieb. et Zucc.
別名: キツネササゲ
* ノササゲの花は、以前2021年7月10日に記した。 *
《眼福(157)“7月の泉の森(1)!?!》
熟すと紫色になり裂開(2裂)、中には3〜5個の種子が入っている。
種子は黒紫色で直径4~6㎜の球形で白粉をかぶる。豆果は無毛。
果皮についたままで、はじき飛ばない。
《 立派な種子〝野ささげ〟泉の森・アセビの道 》

つる性の草本で,葉は羽状の 3 小葉からなり,托葉と小托葉がある.
花は黄色で葉腋から出る総状花序につき,萼は先端まで合着して萼裂片は不明.
豆果は線形で裂開する.
アジア,アフリカに約 10 種あり,日本には 1 種が自生する.
(1)ノササゲ Dumasia truncata Siebold & Zucc.
繊細なつる性の多年草.
小葉は薄く,上面は無毛,下面は白色を帯び少し圧毛がある.
8~9 月に葉腋から出る総状花序に,黄色い花を数個~10 数個つける.
豆果は熟すと淡紫色になり,
白い粉をかぶった黒紫色の種子は豆果が裂開しても縁についている.
11月
10日,
2024年
《 雅羅・/・〝里緑地の花 '11-1〟❖ ’24-315 ❖ 》
学名:Gentiana scabra Bunge var. buergeri (Miq.) Maxim. ex Franch. et Sav.
茎高20〜100cm、細い茎を直立または斜上させ長く伸び、4条線がある。
先端に青紫の花を複数つける。
葉は対生、卵状披針形、3脈がいちじるしく目立ち、長さ3〜8cm。
表面は緑色、裏面は淡緑色、先は長く尖り、基部は丸い。
縁には細かい突起がありややざらつき柄は無く両側から茎を抱く。
花は茎頂および上部の葉腋にかたまってつき、苞がある。
萼筒は長さ10~20mm、萼裂片は線状披針形で筒部より長・短あり開出する。
花冠は5裂し紫色、内面に茶褐色の斑点があり、長さ3〜4.5cm。
副片は三角形で小歯があり、子房の基部に5個の蜜腺がある。
花の重みのため、細い茎は地を這うことが多い。
開花直後は、雄蕊と雌蕊がまだ一つにまとまっている。
雄蕊5個、雌蕊1つで柱頭が2裂する。花期は9〜11月。
種子は紡錘形で、両端に短い尾がある。
種子は小さく1mmほど。薄い膜状の翼がある。

A.多年草.茎は丈高く,根生葉はない.秋に開花......(1)リンドウ
(1)リンドウ Gentiana scabra Bunge var. buergeri (Miq.) Maxim. ex Franch. & Sav.
茎は直立または倒伏し,高さ 15~60cm.
葉は柄がなく顕著な 3 脈があり,
幅の広いものから狭いものまであって変化が多い.
花は 9~11 月.花冠は長さ 3.5~4.5cm,筒状の鐘形で先は 5 裂し,
青紫色または紅紫色で,茎頂か上部の葉腋につく.
本州,四国,九州,奄美に分布.草地や崖,明るい雑木林の中などに生える.
県内ではほぼ全域に見られるが,山地を除く平野部では激減した.
白花品をシロバナリンドウ form. albiflora Makino といい,
『神植誌58』に記録されている.
基準変種のトウリンドウ var. scabra は対馬;朝鮮,中国,ウスリーに分布す
る.
「令和陸年(皇紀2684年)11月10日」
11月
9日,
2024年
《 雅羅・/・襍感〝庭の紅葉〟❖ ’24-314 ❖ 》

今年は、“秋晴れ”と感じる瞬間が少なかった気がする。
雑務に翻弄され、天気など気にする暇などなかった。
野放図な自宅の小さな花壇に可愛い草花が姿を見せる。
この暫くの間、草花の生育変移が楽しかった。
《 小さなフウロソウ科・・〝現の証拠〟2024年晩秋・自宅 》

(7)ゲンノショウコ Geranium thunbergii Siebold ex Lindl. & Paxton;
G. nepalense Sweet var. thunbergii (Siebold & Zucc.) Kudô
多年草.茎は基部が倒れて地をはい,よく分枝して広がる.
8~9 月ごろ,花茎の先に 2 花をつける.
葉は対生し,茎,花茎,萼片,果実などに腺毛をもつが,
そのつき方は個体差が大きく,
全体に腺毛が多く花柄と萼片の外面などに密生するものと,
花柄にはほとんど腺毛を欠き,
萼片の外面にまばらに生える程度のものに大別される.
しかし,中間的なものもあり,またほとんど腺毛をもたない個体も稀にある.
北海道,本州,四国,九州;朝鮮,台湾に分布.
市街地の空き地や路傍から山地の草原まで,草原的な環境に広く見られる.
全県的に普通で,シイ・カシ帯~ブナ帯まで広く分布する.
県内には,花の白いシロバナゲンノショウコ
form. pallidum (Nakai ex Murata) Murata が多いが,
西日本に多く分布する花が紅紫色のベニバナゲンノショウコ
form. thunbergii も稀に見られる.
「令和陸年(皇紀2684年)11月09日」
11月
8日,
2024年
《 雅羅・/・〝備忘録 24-52❖ ’24-313 ❖ 》

神奈川県内全域に自生。草地、樹林内、林縁などに生える。
山野の木陰に生え、枝の先に長い花穂をつける。
茎の断面は四角い(4稜形)、下向きに曲がった毛がある。
葉は対生し、長さ3~6㎝の広卵形、葉の基部は急に細くなり、
縁には粗い鋸歯があり翼のついた葉柄に続く。葉柄は長さ0.5~3.5㎝。
葉裏には腺点がある。花穂は次第に長くなり節ごとに何段にも花がつく。
節には小さな葉もある。花冠は青紫色で長さ7~9㎜の唇のような形。
上唇は濃紫色の班点が多数つき4裂して立ち上がる。
下唇は2裂して前に突き出る。下唇は内側に巻き、雄蕊と雌蕊を包む。
下唇の縁が内巻きになって舟形に突き出す。
雄蕊、雌蕊とも花冠より短くて見えない。
萼は長さ2.5~3㎜、短毛が密生し先が5裂して5個の萼歯がほぼ同長、果時には大きくなる。
果実は4分果、熟すと紫色~褐色になる。分果は長さ約1.5㎜。
ハッカの名前がついているが、ほとんど香りはない。
白花品はシロバナヤマハッカという。

(1)ヤマハッカ Isodon inflexus (Thunb.) Kudô
多年草.茎は高さ 40~100cm.葉柄は長さ 0.5~3cm.
葉身は長楕円形または披針形,長さ 3~6cm,幅 2~4cm,
基部は葉柄にながれる.花は 9~10 月.
花冠は長さ 6~7mm.萼には密に短毛が生える.
北海道,本州,四国,九州;朝鮮半島,中国(中部~東北部)に分布する.
県内ではほぼ全域に分布し,シイ・カシ帯~ブナ帯までの沖積地~山地の草地,
樹林内,林縁などに生える.
白花品をシロバナヤマハッカ form. leucanthus (Nakai) H.Hara といい,
県内では厚木市,南足柄市,伊勢原市などで採集されている.
基礎異名の Amethystanthus inflexus (Thunb.) Nakai form.
leucanthus Nakai in Bot. Mag. Tokyo 48:
786 (1934) の基準産地は武蔵横浜.
* *
泉の森に自生しているが、ひと目に触れない、否、気付かない程に小さな花。
それ故、生き延びてきたようだが・・・!
昨今、袖群落箇所の一括的下草刈り処理が行われて、貴重な野草も刈られていた。
貴重・希少な植物保護・保全に奔走されている人々が居られる。
植物観察、希少・貴重種を探して居られる姿勢に畏敬の念を禁じ得ない。
泉の森は、驚くほどに特異な環境と映る。
「令和陸年(皇紀2684年)11月08日」
11月
7日,
2024年
《 雅羅・/・〝備忘録 24-51❖ ’24-312 ❖ 》

良く分枝し草丈50cm前後。茎は四角形断面で軟毛がある。
葉は対生、長さ3〜9cm、幅1〜4cmの卵形で先は尖り縁には鋸歯がある。
9~10月に枝先や葉腋から4cm程の花穂を伸ばす。
唇形で先端が細裂する0.5cm程の淡紅紫色の花を一方向だけに付ける。
花は下から上に咲きあがる。花冠は長さ約5mmの唇形。
縁は細かく裂け、毛が生えているように見え、花の反対側に苞が整然と並ぶ。
苞は中心部がもっとも幅広く、縁に短毛があるが、背面は無毛。
雄蕊は4本、下の2本が長く花冠より付き出る。全草に強い臭気がある。
果実は4分果。分果は長さ約1㎜の狭卵形で茶色。
《 どことなくシソ科・・〝薙刀香需〟泉の森1990年代》

17.ナギナタコウジュ属 Elsholtzia Willd.(関口克己,図:関口克己)
草本,半低木,または低木.葉は鋸歯がある.
花は一方に偏った穂状または円錐花序につく.
苞は果時まで残り,披針形,卵形,偏円形,または扇形.
花冠は白色,淡黄色,淡紫色,または淡紅色で 2 唇形.
上唇は直立して先端がやや凹み,下唇は 3 裂して中央裂片が大きい.
雄しべは 4 本で花冠より突出して下側の 2 本が長い.
萼はほぼ等しく 5 浅裂する.分果は卵球形~長円形.
アジア,ヨーロッパ,北アフリカに約 40 種があり,
日本には 3 種があり,県内には 2 種がある.
A.花穂の直径は 5~7mm.苞は偏円形で中央付近の幅が最大.
外面は殆ど無毛で縁に短い毛がある.........................................(1)ナギナタコウジュ
A.花穂の直径は約 10mm.苞は扇状の扁円形で中央よりも先の幅が最大.
外面,特に脈上に短毛があり,縁に長い毛がある
(2)フトボナギナタコウジュ
(1)ナギナタコウジュ Elsholtzia ciliata (Thunb.) Hyl.
1 年草.茎は高さ 15~60cm で直立し,下向きの毛が密生する.
葉柄は長さ 0.5~3cm,葉身は長さ 3~9cm,幅 1~4cm,卵形または卵状楕円形.
鋸歯はほぼ鈍頭.花は 9~10 月.仮輪の花はふつう 3 個.苞は腺点がある.
花冠は長さ 3~5mm,淡紅色で外面に短い白毛が多数生える.
萼は花時に長さ 2mm,果時には長さ 3~4mm で外面に白毛が密生する.
分果は狭倒卵形,長さ約 1mm でやや偏平.
北海道,本州,四国,九州;ユーラシア大陸に広く分布する.
県内ではほぼ全域に分布し,
シイ・カシ帯~ブナ帯の沖積地~山地の路傍や林縁などに生える.
(2)フトボナギナタコウジュ Elsholtzia nipponica Ohwi
1 年草.茎は直立し,高さ 30~80cm,下向きの毛が密生する.
葉柄は長さ 1~5cm.葉身は卵形で長さ 2.5~7cm,幅 1.5~4cm,
鋸歯は鈍頭~やや鋭頭で先端付近が外側に反るため,
前種よりも鋭くみえ,上面や下面中肋に毛が生え,下面に腺点が密生する.
花は 9~11 月.苞には多数の明瞭な腺点がある.仮輪の花はふつう 5 個.
花冠は長さ3~5mm,淡紅色で外面に白毛が多数生える.
萼は花時に長さ 2mm,果時には長さ 4mm で外面に白毛が密生する.
本州(福島県以西),四国,九州に分布する.
丘陵地~山地の路傍や林縁などに生える.
県内では箱根や丹沢南面を中心にシイ・カシ帯~ブナ帯に分布する.
* *
花名由来は、花穂がナギナタのような形をしており、
香りが漢方の香薷(こうじゅ)に似ている事による。
「令和陸年(皇紀2684年)11月07日」
11月
6日,
2024年
《 雅羅・/・〝備忘録 24-50❖ ’24-311 ❖ 》

本州(長野、愛知、岐阜)に自生・分布する(神奈川県内に自生は無い)。
山地の湿地に見えるが、栽培され公園樹や街路樹としてはよく見る。
樹皮は淡灰褐色。若いうちは滑らかだが、縦の縞模様ができる。
大きくなると、浅く裂け、剥がれるようになる。
葉は対生し、葉身は倒卵形。基部から3主脈が出て、浅く3裂するする。
縁には不揃いの鋸歯がある。雌雄異株。3~4月、葉に先立って花が開く。
花は束生し、紅色。樹全体が赤く見える。
雌花だともみえる種子。カエデの仲間は、きれいに目を楽しませてくれる。
花の後、種子が早く形成するが、熟すのは遅い。秋には紅葉もする。
カエデ科 は現在のAPG分類ではムクロジ科に含められた。
トウカエデは幹の樹皮が短冊状に剥がれ、葉が浅く3裂し、全縁。
ウリカエデは幹に黒い縦縞があり、菱形の割目が入る。
葉裏の脈腋の薄膜はなく、赤褐色の毛がある。
ホソエカエデは幹がウリハダガエデによく似ている。
葉裏の脈には薄膜がつくが、赤褐色の短毛はない。
小花柄が1㎝以上あり、細い。
《 この時期、紅葉として賑をみせる〝花楓〟》
** 神奈川県植物誌 **
《12.ハナノキ節 Sect. Rubra Pax》
*アメリカハナノキ Acer rubrum L.
別名ベニカエデ.雌雄異株の落葉高木.
葉は卵形~楕円形で 3 浅裂するものが混じる.
葉下面粉白色,鋸歯は日本のハナノキに比しやや低平.
花芽から多数の花を垂下.果梗は 2~5cm.
分離翼果は開度 40~55 度の狭角に開く.
アメリカ東部原産で公園木や街路樹として賞用.
本州中部(長野県,岐阜県,愛知県)に自生のあるハナノキ
(ハナカエデ)A. pycnanthum K.Koch は大変よく似た種,
アメリカ産と識別は難しい.日本のものを変種にする説がある.
* *
11月
5日,
2024年
《 雅羅・/・〝備忘録 24-49❖ ’24-310 ❖ 》

各地の山野に自生しているが、生活様式の変化に伴い
山林、草原が管理されなくなった結果、数を減らした。
都道府県レベルで絶滅危惧種に瀕している所もある。
センブリは春に発芽し、翌年の秋に開花する野草。
又、2年間で大きく育たなかったものはその次の秋に開花する。
開花後、種子を残して枯れ落ちる。
センブリは初め円形ないしは倒披針形の根生葉で過ごす。
2年目の夏に茎をのばして線形の葉を出し、
先端付近に密に花を付ける。開花期は一般に8~11月半ば。
花冠は白色で紫色の筋がある。花冠は深く5裂し、
基部には緑色円形の蜜腺溝が2個あり蜜腺溝の周囲には細毛が生える。
一つ一つの花は直径2cm程度で小さいが、多数咲き華やか。
センブリは「千回振り出しても(煎じても)苦い」に由来する。
それほどに苦みが強く、そして苦味に残留性のある植物として有名。
開花期の全草を採集、乾燥して薬用とされる。
ドクダミやゲンノショウコ同様、苦味健胃薬、整腸薬として用いられる。
センブリは山野草として栽培されている様だが、発芽しにくい植物。
茎は4稜形、根元から分枝し、紫色を帯びることが多い。
葉は対生、無柄。葉身は長さ1.5~3㎝の広線形で全縁。
淡紫色を帯び、上部で分枝した枝先や上部の葉腋に花を数個つける。
小花柄は長さ0.5~1.5㎝。花冠は5裂、稀に4裂、裂片は長さ10~15㎜、幅2~4㎜。
表面が白色で紫色の条線があり裏面は紫色を帯びる。
蕾の時は紫色に見える。
花冠の基部に緑いろの蜜腺が2個ずつあり、蜜腺の縁に長毛がある。
萼は5深裂し、萼片は長さ4.5~8.5㎜、幅0.5~1㎜の線形、鋭頭。
果時にも残る。雄蕊は花冠裂片と同数。花糸は長さ約5㎜、線形。
子房は紡錘形、雌蕊は短い。蒴果は長さ12~16㎜、幅1.5~2㎜の紡錘形。
熟すと乾き、先が3~4㎜ほど2裂開する。
種子は長さ0.5~0.7㎜、卵状の不定形、暗褐色、表面に微細な凸凹がある。
イヌセンブリは湿地に生え、苦味がなく、花冠基部の毛が多い。
ムラサキセンブリは花が一回り大きく淡紫色、蜜腺が明瞭には見えない。
※ 以上の画像は、総て借り物 ※
《 この時期、山岳地で見た野草〝千振〟》

(3)センブリ Swertia japonica (Schult.) Makino
全草苦味があり,健胃剤として有名.
茎は高さ 5~20cm で,よく分枝し紫色を帯びる.
葉は細く,縁がやや裏側に反る.花は 9~11 月.
花冠は長さ約 1cm.白色で紫色の筋がある.
三浦半島で見られる海岸型は葉が厚い.
北海道西南部,本州,四国,九州;朝鮮,中国に分布する.
山地から海岸にいたる日当たりのよい草地や路傍に生える.
県内では丹沢,箱根,小仏山地に多く,
丘陵地でも稀に見られるが減少傾向にある.
八重咲品をヤエセンブリ form.albiflora Tuyama といい,
『横植誌 68』に記録がある.
標本:ヤエセンブリ 横浜市鶴見区三ツ池 1946.11.1 出口長男 KPM-NA0080325.
* *
千回振り出し(煮出し)てもまだ苦みが出てくるとされる。
どくだみ、げんのしょうこ、と日本三大薬草と称されている。
丹沢や箱根で幾度となく見かけた野草。足元に可愛く見せた。
かつては、山地で普通に見れたが今や神奈川県内では絶滅寸前に由。
「令和陸年(皇紀2684年)11月05日」
11月
4日,
2024年
《 雅羅・/・〝備忘録 24-48〟❖ ’24-309 ❖ 》

しかし、今や低湿地植物として、減少している高さ20~40cmの1年草。
葉は長さ14~20㎝、幅1~3㎜での線形で先は針状に尖る。
花茎は明瞭な4肋があり、細長く直立できるようにねじれている。
8~10月、 茎頂に直径6~8mmの白色の球形頭花を1個つける。
雄花と雌花が混生する。
雄花は萼も苞状であり、萼や苞の上部に白色の太い短毛が密生する。
花弁3個、白色の短毛が上部にある。雄蕊6個、葯は黒色。
雌花は基部に長毛があり、萼や苞の上部に短毛が密生する。
子房は3室で、3個の種子が出来る。柱頭も3分岐。
《 楽しげな野草〝白玉星草〟》
11月
3日,
2024年
《 雅羅・/・〝備忘録 24-47〟❖ ’24-308 ❖ 》

キクタニギク(菊渓菊);日本固有種、多年草
岩手県以南の東北地方南部、関東・中部地方・近畿地方、九州北部に分布する。
山地の谷間のやや乾いた崖に生える。根茎を長く伸ばさない。
茎は叢生し、高さ1〜1.5mで、多く分枝する。
葉は有柄で、葉身は長さ5〜7cm、幅4〜6cm、やや薄く、羽状に深裂する。
裂片の先はとがり、基部は切形またはやや心形。
頭花は黄色で、やや散房状に多数つき、径1.5cm、花が終わると点頭する。
総苞は長さ4mm、総苞片は3〜4列で覆瓦状、外片は線形または狭長楕円形。
そう果は長さ1mm。
1990年代以降、法面緑化に使われたヨモギの種子に交じって侵入した外来種
キクタニギクが、分布域以外の地域でも発見されている。
国外では朝鮮半島・中国に分布する。
別名アワコガネギク(粟黄金菊)花期は10〜11月。(日本の野生植物)
《 キク科の野草は判らない花〝菊渓菊〟》

(3)キクタニギク
Chrysanthemum seticuspe (Maxim.) Hand.-Mazz.; C. boreale Makino; Dendranthema boreale (Makino) Y.Ling ex Kitam.
別名アワコガネギク.本州,九州(北部);朝鮮,中国(東北部)に分布.
県内では林縁や肥沃な土手などに生えるが少ない.
最近緑化牧草に混じって生える国内帰化のものが報告されており,
韓国産の緑化牧草種子に由来するという
(植村 1998 近畿植物同好会会報 (73): 5-10).
学名上の母種は皇居に現存する稀少な園芸品種のカモメギクform. seticuspe で,
野生種のキクタニギクが form. boreale (Makino) H.Ohashi & Yonek. となる.
キクタニギクの学名は従来 C. boreale とされていたが,
カモメギクの基礎異名の Pyrethrum seticuspe Maxim.
が種ランクでは優先するため,表記学名が正名とされた.
* *
キク科の野草は、沢山あって判別に苦労する。
それでも思いを馳せて楽しく散策したい。
「令和陸年(皇紀2684年)11月03日」
11月
2日,
2024年
《 雅羅・/・〝備忘録 24-46〟❖ ’24-307 ❖ 》

本州(福島県・新潟県以西)、四国、九州に自生分布。
神奈川県内では、全域に見られ山野の林縁に生える。
茎が細いため花の頃に立ち上がることは少なく、
崖から垂れ下がるように咲くことが多い。
葉は互生し、カエデ類の葉のように浅く3裂する。
表裏に毛があり表面は緑色、裏面は毛が密生し白っぽい。
花は秋の遅く、ノコンギクなどの終わりの頃に咲く。
蕾は、花が開くまでは目立たない。
茎の先端に1~3個の白い頭状花を咲かせる。
舌状花は丸みを帯び、園芸種の菊の花に近い。
花はかすかに青味を帯び、茎にも毛が密生している。
果実の成熟も遅く年を越しても頭状に種子を付けている。
種子に冠毛は無いので風散布にはならない。
茎、葉に竜脳のような香りの揮発油が含まれ、
葉を手でもむと良い香りがする。
キクほど臭いは強くない。
* *

URL: https://jousyuu2.sakura.ne.jp/tsutsuzakiryuunougiku.html

葉は卵形~広卵形で3中裂、裏面は丁字状毛を密生し、灰白色。
頭花は直径3~5cm、 舌状花は白色だが、後に淡紅色を帯びる。
栃木のある岩場には基本種に混じって、筒咲きが多数生育していた。
文献に記載は無く、ツツザキリュウノウギク(筒咲き竜脳菊)や
シモツケリュウノウギク(下野竜脳菊)を提唱したい!
※ 以上、総ての画像は、借り物 ※
《 身近で確認できていない花〝竜脳菊〟》

2)リュウノウギク
Chrysanthemum makinoi Matsum. & Nakai; Dendranthema japonicum (Makino) Kitam.
多年草.舌状花は始め白色であるが,次第に紅色を帯びる.
本州,四国,九州に分布.
シイ・カシ帯~ブナ帯の乾いたススキ草原や岩場などに生える.
ヤグルマリュウノウギク
form. frondosum Honda in Bot. Mag. Tokyo, 44: 668(1930) の基準産地は箱根(1928 K.Hisauchi).
チョクザキリュウノウギク var. tuberosum Honda in Bot. Mag. Tokyo, 45:
139 (1931) の基準産地は横浜(1924 K.Hisauchi)
*
茎や葉の香りが竜脳樹から採る香料「竜脳」に似ていることからついた名。
キクは栽培菊が中国から伝来し、漢音をほぼそのまま通用したもの。
あるいは、香りが久しいことから久久(クク)としそれの変化ともされる。
*
竜脳菊、神奈川県内では広域でちらほら見かける普通種といわれているが、
自宅近くの里緑地では、未だ見つけていない(探し方が、悪い)。
又、”乾いた草原や岩場などに生える”とあるが、林縁部の湿った岩崖で見ている。
葉を揉んでみると、昔・昭和時代に使われた防虫剤(樟脳)に似ている。
「重陽の節供」
旧暦の9月9日は重陽の節供。陰陽道で陽の数(奇数)の重なる日。
往古から年中行事(節供)として祝ってきた。
1月(人日)、3月(上巳)、5月(端午)、7月(七夕)。
最大の数が重なる日を9月(重陽)の節供とした。
江戸時代には五節供として公式の祝日とされていた。
重陽の節供は、作物の豊作を感謝する秋の収穫祭、
別称「菊の節供」ともいわれる。
菊はその香気から不老長寿の薬草と考えられていた。
新暦の9月では菊には早いこと等で五節供としては廃れた。
インドでは、法華の秘術(長生きの術)は、菊花酒を指した。
日本でも平安時代には長寿を祈り宮中で観菊の宴が催された。
日本酒の名に菊の字が多いのは、シルクロード繋がりか。
花が美しいキク種はノジギクを始めとして西日本に多い。
東日本では、リュウノウギクが代表格と言われる。
「令和陸年(皇紀2684年)11月02日」
11月
1日,
2024年
《 雅羅・/・〝備忘録 24-45〟❖ ’24-306 ❖ 》

学名:Allium virgunculae var. virgunculae
※ 未見の希少・貴重な菊花を知った。羨望のまなこ!! ※

西南日本の植物雑記IV.より転載 :
九州南部から南西諸島のヤマラッキョウ群の分類
堀田 満;故人、鹿児島大学名誉教授(鹿児島大学理学部地球環境科学科)
九州南部に分布する「ヤマラッキョウ」とされていたものは,
葉が中実で雌しべの基部の蜜腺に帽子状の覆い構造が発達しないことで
ヤマラッキョウから区別できるので,
ナンゴクヤマラッキョウAllium austrokiushuenseとして新種記載した。
初島住彦によってヤクシマヤマラッキョウと呼ばれていたものは
イトラッキョウに所属することが確かめられたので,
新しくヤクシマイトラッキョウAllium virgunculae var. yakushimenseとした。
また,アマミラッキョウA. amamianumは夕マムラサキA. pseudojaponicumと
同種で,しばしばヤマラッキョウと混同されてきたこのタマムラサキは
形態的にも,染色体数でも異なる明確な種であることを明らかにした。
《 この季節に対面したい野草〝糸辣韮〟》
色々なブログを参考にして、感慨を;
両親の植物メモを見ていて気になる植物名を目にした。
メモの日付が、11月1日なので今日付けのブログ記事にした。
九州の山野草の中で最後まで観に行けなかった野草。
“イトラッキョウ・オトメラッキョウ”僕自身全く知らなかった花。
晩秋、山野草の花は少なくなる。そんな中で極めて限定的に咲く花。
九州、平戸島に咲くイトラッキョウは一見の価値ある、と知った。
草原の岩上に咲く。花茎は高さ8~22cmで、
根生葉は長さ10~20cmのごく細い円筒形である。
花茎の先に紅紫色の花を散形状に2~12個つける。
白花品種はオトメラッキョウと呼ばれている。
雄しべは花被片より少し長く、花の中の子房は緑色である。
日本固有種で、長崎県の平戸島のみに分布する。
ヤマラッキョウに比べ花は小さく、
花の付き具合も疎らで弱々しさも感じられ、
守ってあげたいという気持ちにさせる可愛らしい花である。
薄い赤紫色の花は、その可愛らしさを一層引き立たせ、
さらに白色のオトメラッキョウは、清楚で、純粋な印象を受ける。
急斜面の岩場に、晩秋の寒風の中、強風に耐えている健気な姿が印象的。
海に面した斜面ということもあるのかいつも風が強いイメージがあり、
小さく可愛い姿を写真に収めるのには結構苦労する。
白花品種はオトメラッキョウと呼ばれ、
イトラッキョウより、清楚で、純粋な印象を受ける。
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かようなブログ記事を拝すると、是が非でも会いに行きたい。
「令和陸年(皇紀2684年)11月01日」