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神戸:ファルコンの散歩メモ

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今年の読書(38)『共喰い』田中慎弥(集英社)

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今年の読書(38)『共喰い』田...
今年度の第146回下半期の芥川龍之介賞を、受賞した『共喰い』です。
受賞インタビューで話題を提供した著者のようですが、特段作品を読みたいとは思いませんでした。
「どこがいいのか、よくわからん」という知人の声に押されて、本を拝借しました。

家々の汚水が流れ込むドロドロとした川辺を中心に、主人公が父と愛人の琴子と住む家があり、別れた母の仁子の魚屋があり、売春婦が住むアパートがあります。
17歳の主人公遠馬は、女とあれば見境なく性欲の対象とみなし、性交時には相手に暴力を振るう父を毛嫌いながら、自分も父と同じサディスティクな性欲があるのではと感じつつ、一つ年上の千種と関係を持ち続けます。
この千種を、父は祭りの日に犯してしまい、それをきっかけに別れた母の仁子が、父親を殺してしまうという荒筋です。

読み終えて、わたしも「どこがいいのか、わからん」と感じました。
権威ある作家さん達の選考ですので、私の読解力が足りないと思いますが、ギリシャ神話の焼き直しを感じさせる筋立てに魅力は感じませんでした。
また、主人公が千種と行う性交描写も意味があるように思えず、父に犯されたあとあっけらかんと主人公と向き合う千種の態度が、これまた納得がいきません。

残念ながら、受賞するほどの力量を感じさせる作品だとは、思えませんでした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(37)『プラチナタウン』楡周平(祥伝社文庫)

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今年の読書(37)『プラチナタ...
米国系企業に勤務中の1996年に発表した『Cの福音』で、華々しく作家デビューしました。
翌年会社を退職して執筆活動に専念し、『猛禽の宴・Cの福音』でゆるぎないファンをつかんだと思います。
ハードボイルとアクション、緻密な行動力の主人公、<朝倉恭介>が主人公のシリーズでした。

今回は、まったく180度違う分野での小説です。
大企業四井商事食料事業本部穀物取引部長の肩書を持つ<山崎鉄郎>が、出世街道を外され、同級生の<熊沢健二>に誘われて故郷である宮城県緑原町の町長になり、町の150億円にも登る累積赤字を解消するために、奮闘する物語です。

起死回生の策として考えたのが、工場誘致に失敗して遊んでいる3万坪の土地を利用して、老人向けの施設(プラチナタウン)を実行することでした。

冒頭に費やされる四井商事での大豆取引の描写は、本筋とはずれているのではと思いまがら読み進みましたが、老人向け施設の企業体として四井商事が登場することで、伏線として総合商社の企業とはどのようなものなのかの意味合いが与えられていたようです。

元気なうちはいいのですが、歳を取ると共に介護が必要となった時に、何処でどのように余生をすごすのか、考えさせられる一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(36)『寂聴あおぞら説法:愛をあなたに』瀬戸内寂聴(光文社文庫)

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今年の読書(36)『寂聴あおぞ...
時寂聴さんが、岩手県二戸市にある天台寺の住職になられたのが、1982(昭和62)年です。
東北最古の名刹も、当時は雨漏りがする状況でしたが、本堂や参道の整備よりも、一人でも多くの参拝者が詣でてくれることが大切だと考え、境内にゴザを敷いての<あおぞら説法>が始まりました。

軽快な口調で、参拝者からの悩みを聴きながら明快に答えてくれるということで、毎月全国から五千人前後の人が参加するというのには驚かされました。

寂聴さん自信子供と別れ、不倫問題も経験された経歴の持ち主だからこそ、凡人の我々も共感できる問答が成り立つのだと思います。

煩悩の世界からなかなか離脱して悟りを開くことはない凡夫ですが、あらためてこれからの生き方を考える一冊になりました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(35)『雪のひとひら』ポール・ギャリコ(新潮文庫)

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今年の読書(35)『雪のひとひ...
読む本を選ぶ基準は、好きな作家だというのが大きな要素だと思いますが、<本>自体の装丁などに引かれる場合が多々あります。

この『雪のひとひら』も、きれいな青い表紙が目にとまり手にしてみました。
著者の名は、1972(昭和45)年に封切られた映画『ポセイドンアドベンチャー』の原作者として印象が強く残っていましたので、読んでみることにしました。

ある寒い朝、空から<雪のひとひら>は生まれ、地上に舞い降ります。
地面に落ち、小川に流され、大きな川を下る長い旅が始まります。
旅の途中で人生の伴侶となる<雨のしずく>と出会い、4人の子供を授かります。
火事場の消化水として働き、苦難を超え大海に流れて行きますが、旅の途中で伴侶である<雨のしずく>を亡くし、子供たちもそれぞれの水の分岐に沿って旅だって行きます。

雪の発生から、太陽の熱で気化消滅するまでの過程を、女性の一生に擬人化し比ゆ的に表した、大人の童話でした。

水の属性になぞらえ、人生の流転を流れるままに受け止める<雪のひとひら>の姿勢は、生きてゆく限りとどまることなく活動を続けることが大切であり、人間として自然な姿なのだと感じさせてくれた一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(34)『遮断』堂場瞬一(中公文庫)

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今年の読書(34)『遮断』堂場...
2009年2月に発行された 『蝕罪』 を一作目とし、前作の 『波紋』 に次いで、本書の『遮断』で<警視庁失踪課・高城賢吾>シリーズも七作目となりました。

主人公の<高城賢吾>は、失踪課第三方面分室の刑事で45歳、室長として<阿比留真弓>がいますが、実質のトップとして采配を振るっています。
かっては捜査第一課に所属していましたが、7年前に一人娘の<綾奈>が学校から帰宅中に失踪してしまいます。この事件で弁護士との妻とも別居の上、離婚に至ります。
それ以来仕事に身が入らず、酒びたりの生活が続き、捜査第一課から所轄の転属を繰り返していたところ、<阿比留>室長に引き抜かれ失踪課に籍を置いています。

今回の『遮断』は、同じ失踪課の刑事<六条舞>の父親(厚生省高級官僚)が突然いなくなり、誘拐かと思わせる事件が起こります。

癖のある新メンバーの<田口>刑事もいいボケ役で登場してきますが、反面、父親の事件の責任を感じて<六条舞>が刑事を辞職、シリーズの登場人物から消えてしまいました。

個性ある失踪課のメンバーたちの活躍、まだまだ続きそうで目が離せません。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(33)『白い鴉』新堂冬樹(朝日新聞出版)

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今年の読書(33)『白い鴉』新...
『白い鴉』は、新堂冬樹の一番新しい著作です。
自ら高校を中退した十代の頃より、闇金融の世界で働いていたことを公言されておられますが、その経歴を生かした「カネ」や「女」などの欲望渦巻く裏社会を描いてきています。

今回の作品も孤児院で育てられた「白い鴉」と呼ばせる主人公が、夜の六本木を舞台に、詐欺を働く様子が連綿と続きます。

冒頭に詐欺罪の被告人としての描写がありますので、読者は主人公が逮捕されるていることを知り得ながら、その手口のうまさに感心させながら、「白い鴉」の背景を読み進むことになります。

最後には、悪徳大物政治家が騙されるのですが、ノンフイクション的で、笑えました。

育った孤児院の地上げに絡む悪徳大物政治家を詐欺に遭わせ、恨みを晴らして物語は終わります。
巻き上げたお金は心の母と慕い続けている孤児院の園長に届けられますが、銀行の貸しはがしに遭遇している園長がそのお金で孤児院を守るのかどうかは、読者が想像しなければいけません。 これまたうまい結末の付け方だと、感心しました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(32)『仮想儀礼』篠田節子(新潮文庫)

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今年の読書(32)『仮想儀礼』...
文庫本(上・下)で、1200ページを超す大作です。
著者の作品は今回が初めてでしたが、緻密な構成と人物設定の見事さに、圧倒されました。
2009年に「柴田錬三郎賞」をこの作品で受賞していますが、十分に納得できる作品でした。

ゲーム作家に憧れて職を失くした元東京都職員の鈴木正彦は、ゲーム本出版社が倒産した矢口誠と、金儲け目的のために宗教教団「聖泉真法会」を立ち上げます。

最盛期には7000名を超える信者がいた教団も、他の悪徳教団や仏具店の脱税のとばっちりを受けて、衰退の一途をたどります。
人間の心に巣くう孤独感、閉塞感、虚無感、罪悪感が相互に絡んで、一大抒情詩の体を表した物語りとなっています。

関西地区の始点として神戸に支部が開設されたりと、読んでいて楽しい伏線もありました。

批評家大森望が<読み終えたあとしばしぐったり放心してしまうほどだが、この心地よい疲労感こそ、傑作の証>と述べられていましたが、まさにぴったりの称賛の言葉です。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(31)『陽だまりの彼女』越谷オサム(新潮文庫)

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今年の読書(31)『陽だまりの...
2004(平成16)年、『ボーナス・トラック』で日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞している著者ですが、この一冊を読み終えて「なるほどな」と思いました。

さわやかな大人の恋愛小説でもあり、最終的にはファンタジーの世界で締めくくられます。
詳しく書きますと、今後読まれる方に悪いので、ほのぼのとした気持ちにさせられる一冊だとだけ申しておきます。

読み終えて「なるほど」という伏線が、文章のあちらこちらに散りばめられているのに気が付きました。
タイトルも読まれた方は、「なるほど」とうなづかれたはずです。

解説を書かれている<瀧井朝世>さんが、<恋愛小説はあまり読まない、という人こそ、自信をもってお勧めしたくなる>と書かれていますが、その気持ちがよくわかる一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(30)『サクリファイス』近藤史恵(新潮文庫)

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今年の読書(30)『サクリファ...
『サクリファイス』というタイトルだけでは、どのような小説なのか理解しにくいのですが、表紙の写真の通りプロのロードレースを舞台とした、青春小説でもあり、ミステリーでもある小説です。

主人公の白石誓は、陸上選手でしたが自転車競技にあこがれ、ロードレースの世界に飛び込みます。
所属したチームでは、プロ選手としての嫉妬やプライドが交差するなか、3年前に起きた自転車事故がクローズアップされ、思わぬ結末に引きずり込まれてしまいます。

ロドーレースは団体競技で、「エース」と呼ばれるトップスターを勝たせるために、チームメンバーは「アシスト」ととして全力を尽くします。

タイトルの<サクリファイス=犠牲>という意味が、読み終えたあと特殊な自転車競技の世界を通して、ゆっくりと心に沁み込んでくる一冊です。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(29)『悪道 西国謀反』森村誠一(講談社)

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今年の読書(29)『悪道 西国...
講談社100周年記念の一環として『悪道』が出版され、2011(平成23)年に第45回吉川英治文学賞を受賞しています。
五代将軍・綱吉の急死をうけて、権臣・柳沢吉保は秘密裏に影武者を立てて徳川家存続を図りますが、陰謀に気づいた伊賀忍者の末裔・流英次郎に刺客を向けるという荒筋でした。

『悪道 西国謀反』では、西国の要、中国地方の大藩・42万5千石の浅尾家に渦巻く世継ぎ騒動を中心に、英次郎一統と浅尾藩家老・外村監物引きいる戦国忍者の生き残り・風炎衆との戦いが待ち受けています。

綱吉(影武者)や柳沢吉保・紀伊国屋文左衛門など歴史上の人物と、伊賀忍者の末裔や残忍な暗殺集団・風炎衆とのフィクションが織りなす時代小説で、史実に基づきませんが、楽しく読めました。

『悪道』では、主人公の英次郎の敵であった<主膳>も味方になり、今回も果心居士伝来の妖しの術や忍びの術を使う<貴和>が、英次郎一統側につきそうな終わり方で、これはシリーズ化されそうな予感がしています。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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