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- 今年の読書(74)『田舎のポルシェ』篠田節子(文春文庫)
著者<篠田節子>の作品は、公害問題と自然の驚異と神秘に触れた『アクアリウム』以後、NHKでも放送が控えていますドラマ『仮想儀礼』の原作となりました、宗教問題を扱った『仮想儀礼』にいたく感動、『沈黙の画布』・『冬の光』・『銀婚式』・『鏡の背面』と読み継いできています、お気に入りの作家です。
本書『田舎のポルシェ』は、2021年4月に単行本として刊行、2023年10月10日に文庫本が発売され、中篇3作品が収録されています。
◆表題となっています『田舎のポルシェ』は、東京の実家の米を引き取るため大型台風が迫る中、岐阜から強面ヤンキーの運転する《軽トラック(=田舎のポルシェ)》で東京を目指す「増島翠」の、波乱だらけの強行軍を、お互いの人生の境遇を綴りながら、家父長制度と気質・田舎と都会の対比に鋭いメスを入れた作品です。
◆「ボルボ」は、妻同士が知り合いで不本意な形で大企業勤務の肩書を失った「伊能」と「斎藤」が意気投合し、「伊能」は20年落ちの《ボルボ》を廃車する前に最後の思い出と学生時代を過ごした北海道へ旅行することになりますが、《ボルボ》の最後は思わぬ展開を迎えます。
◆「ロケバスアリア」は、コロナ禍で劇場が使えない中、貸し切りでレンタルできるとあって、憧れの歌手「宮藤珠代」が歌った会場で唄いたいという「畔上春江」は思い立ち、孫の「大輝」は、勤め先の《ロケバス》をレンタルして、映像と曲のDVD作成のために具術者の「神宮寺」と一緒に「春江」と浜松のホールまで出向きます。
それぞれの作品は、その時代を背景として、登場人物の歩んできた人生を見事な文章で優しく表し、自動車と道路の関係のように、それぞれに登場する《自動車》もまた主人公とするロードムービーならぬロード小説として味わい深く楽しめました。
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