今年の読書(48)『わくらば追慕抄』朱川湊人(角川文庫)
5月
21日
主人公は、人や物に触れることでその「記憶」を読み取れる不思議な力をもった姉「上条鈴音」と、お転婆で姉想いの妹「ワッコ(和歌子)です。「ワッコ」の語り口で、「ワッコ」たちの身の回りで起こる出来事に不思議な能力を持ち27歳で亡くなった姉の思い出の5篇が語られていきます。
固い絆で結ばれた姉妹の前に現れた謎の女は、「鈴音」と同じ力を悪用して他人の過去を暴き立てていました。女の名は「御堂吹雪」、その冷たい怒りと霜しみに満ちたまなざしが「鈴音」に向けられるとき、数々の異変がおこります。
昭和30年代の世相・風俗を背景に、人の優しさと生きる哀しみをノスタルジックに描く〈昭和事件簿〉『わくらば日記』(2005年12月・角川書店)の続編になります。