『千年樹』荻原浩(集英社文庫)
4月
2日
冒頭は、9世紀ごろの地方豪族・浅子一族は、国司として派遣された夫婦と5歳の子供を追放しますが、やがて親子は冬山の中で餓死する場面から始まり、どのような物語が紡ぎだされるのか、わからないまま語り手の世界に読者は没入していきます。
現在では樹齢推定千年と言われる大木に育った「くすの木」は、「日方(ひかた)神社」のご神木となりますが、昔は「ことりの木」(=子盗りの木)と言われ、悲しい歴史を背負ってきています。
地方都市の高台にそびえ立つこの「千年樹」にまつわる人間ドラマが、時代を超えて交差する切ない物語が描かれており、特に『郭公の巣』は圧巻でした。