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- 今年の読書(43)『約束の海』山崎豊子(新潮文庫)
病院を舞台とした『白い巨塔』や銀行を舞台とした『華麗なる一族』、中国残留孤児問題の『大地の子』、など重厚な作品を精力的に書かれてきた<山崎豊子>さんが途中まで執筆され遺作となった『約束の海』は、2014年2月に単行本と発行されています。
本書『約束の海』は著者の遺作ということで、新作が出ることがありませんので。いつでも読めるわと思いながら遅くなってしまいました。
28歳の防衛大学出身の「花巻朔太郎二尉」が乗り込んでいた海上自衛隊の潜水艦「くにしお」と釣り船「第一大和丸」が、東京湾で衝突、多数の犠牲者が出る惨事が起こります。
真珠湾攻撃時に米軍の捕虜第一号となった旧帝国海軍少尉を父に持つ「花巻朔太郎」を主人公に、自衛隊の潜水艦の現状と、偶然知り合ったオーケストラのフルート奏者「小沢頼子」との淡い恋心を横線にしています。
衝突事故の海難審判が始まる中、潜水艦勤務に疑問が芽生え辞表を出した「花巻朔太郎」ですが、その将来性を見込まれ、米軍の原子力潜水艦に乗船する機会が訪れるところで物語は終わります。
本来なら、時代に翻弄され、抗う父子百年の物語が展開されるはずでしたが、幕を開けた段階だけでも、「花巻」の流転する自衛隊での立場、海難審判やライバルとの戦いが予想できそうな「頼子」との恋の結末、ブラジルの自動車工場の責任者で赴任していた父の帰国とこの先の動向が気になる序章でした。
3日の憲法記念日には、各政党の憲法改正の話題で賑わっていましたが、本書が完結していれば、自衛隊とは、平和とは、戦争とはへの道筋が見えた作品だったと思われるだけに、未完は残念でなりません。
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