今年の読書(91)『プリニウスと怪物たち』澁澤龍彦(河出文庫)
6月
30日
彼の著作は「河出書房」から多く刊行されていますが、学生時代によく読んだ作家として、新しい文庫本(2014年8月10日刊)の本書が目にとまりました。
表題の「プリニウス」は、古代ローマの博物学者<ガイウス・プリニウス・セクンドゥス>のことであり、自然界を網羅する史上初の百科全書『博物誌』(全37巻)を表した人物です。
本書は著者が興味を持つ『博物誌』を元に、いわゆる畸形と呼ばれる怪物たち(一本足の人間・火トカゲの「サラマンダ」・一角獣・スフインクス・ケンタウルス)等についてのエッセーを集めたアンソロジーです。
ユーモラスで自由な人間の想像力が生み出した数々の怪物たちを、幅広い博学の視点から分析しており、科学が優先する16世紀までの世界観がよくわかり興味深く読めました。