今年の読書(81)『飛蝗の農場』ジェレミー・ドロンフィールド(創元推理文庫)
6月
27日
ヨークシャの荒れ野で農場を営む<キャロル>のところへ、大雨の夜に一晩泊めてくれと乞う男<スティーヴン>が現れましたが、彼女は断ってしまいます。
翌朝納屋で勝手に一晩過ごした彼を見つけた<キャロル>は、思わず散弾銃で彼を撃ってしまいますが、もと看護師としての経験を生かし、回復まで彼の面倒を見ることになります。
<スティーブン>は過去の記憶がないと<キャロル>にいい、嘘か真実かと心の揺れ動く中、次第に彼に愛情を感じ始めます。
この農場での出来事と並行して、田舎町で平穏な暮らしをしている<ナイジェル>、車の修理工<ポール>、「汚水溝の渉猟者」と名乗る人物からの匿名の手紙などが、二人の生活の各場面に挿入され、読者は最後にその伏線がわかり、一気にクライマックスへと引きずり込まれ、異常心理としての<サイコロジカル・スリラー>のだいご味が味わえました。