今年の読書(64)『氷獄』海堂尊(角川文庫)
7月
30日
表題作を含む4篇が収録されていますが、圧巻はやはり表題作の『氷獄』でした。
全体的に過去の作品の登場人物やエピソードが絡んできますので、<海堂尊>ファンとしてはとても面白く楽しめましたが、さて、本書が初めてという方には、意味が分かりにくいかもしれません。
『氷獄』では、37歳にして弁護士になった「日高正義」が、手術室で行われた前代未聞の連続殺人事件『チーム・バチスタの栄光』(2006年2月・宝島社)での「バチスタ・スキャンダル」の被疑者「氷室」医師の国選弁護人となった活躍が描かれています。
有罪率99.9%を誇る検察司法の歪みに、「日高正義」が正義のメスを入れるのですが、ここで海堂作品でおなじみの厚生省技官の「白鳥圭輔」が絡んできます。
医療と司法の正義を問うエンタテインメントとして検察と対抗する弁護士としての「日高正義」がいいキャクターで描かれていましたが、最後に「氷室」が東日本大震災に紛れて仙台拘置所から脱走してしまいます。
刑務所内での健康診断と偽って、「氷室」に青酸カリの錠剤を渡した正体不明の女医も不明のままで、まだまだこれから続編が楽しめそうな伏線で、物語は終わっています。