今年の読書(27)『紙鑑定士の事件ファイル』歌田年(宝島社文庫)
3月
26日
建築の設計を生業としてきましたので、大賞受賞作品と言うよりは、「模型の家」と言う単語に興味を持ち手にしたのですが、あまりの面白さに、一気加勢に366ページ読み終えました。
神保町で紙鑑定事務所を営み、どんな紙でも見分けられる男「渡部圭」の事務所に、ある日「紙鑑定」を「神探偵」と勘違いしたひとりの女性「米良杏璃」が、ピンボケした戦車のプラモデルのディオラマ写真一枚をもって「彼氏の浮気調査をしてほしい」とやってきます。
「渡部」はダメ元でホビー誌の知り合いを頼りに調査を始めますが、伝説のプラモデラー「土生井」と出会ったことで意外な真相が明らかになっていきます。
「土生井」は、ごみ屋敷に認知症の母と住む冴えない中年独身男性ですが、プラ模型のことが絡むと驚くべき洞察力と知識で、名推理を披露していきます。
そして無事に浮気事件を解決したその翌日、「渡部」の事務所に「行方不明になった妹・英玲奈を探してほしい」と言う女性「曲野晴子」が、妹の部屋にあった古い住宅のミニチュアを持って訪ねてきます。
再び「土生井」の模型に対する造詣の深さと推理力の協力を得て、住宅のミニチュア模型を調査していた「渡部」は、その中に恐ろしい大量殺人が示唆されていることを知り、真相を突き止めるため奔走します。
「紙」と「模型」の達人コンビが、知識と推理力を駆使して織りなすミステリーですが、ぐいぐいと引き込まれてゆく構成に圧倒されました。まだ3月ですが、早くも<濱嘉之>の『紅旗の陰謀』と並ぶ、今年のベスト3候補作品だと思います。
投稿日 2021-03-26 21:46
ワオ!と言っているユーザー
投稿日 2021-03-27 01:50
ワオ!と言っているユーザー