今年の読書(20)『城崎にて、殺人』西村京太郎(中公文庫)
2月
25日
ミステリー小説ながら、文豪<志賀直哉>の『城崎にて』(1917年5月)をもじったタイトルにも興味がわきました。
警視庁捜査一課を定年退職した「岡田利夫」は、山陰への旅の途中の車内で宝石店に勤める「北野敬」という青年に出会い名刺交換を行い、再会を約束します。翌日、「北野」の死体が城崎温泉で発見され、持っていた名刺から事情聴取を受ける「岡田」の元へかつての後輩、「十津川」警部が現れます。
東京で殺されたクラブママの女性「竹宮麻美」の部屋に、「北野」の名刺が残っていたので事件との関連を調べに来ていました。「岡田」が、別れた後の「北野」の足跡を辿ると、彼から宝石を買おうとしていた地元の名士3人が連続して不審死していたという事実が浮かび上がってきます。
山陰の3県に渡る温泉宿<城崎・三朝・玉造>において連続殺人に秘められた、事件の真相は本来主人公の「十津川」警部が捜査に乗り出すところですが、本書では引退した民間人の「岡田」が事件を追い求め、最後は犯人に殺されてしまう悲しい結末を迎えます。