今年の読書(140)『煙とサクランボ』松尾由美(光文社文庫)
11月
23日
舞台は、東京のとあるビルの地下にある<柳井>がバーテンをしている小さなバーです。
会社に勤めながら漫画家として活躍してる<立石春奈>は毎週火曜日、絵画教室に出向く前にちょっと寄り、56歳で常連の自称早期退職者<炭津(西島)>と飲むのを楽しみにしています。
この<炭津>は実は幽霊で、14年前の交通事故で56歳で亡くなっているのですが、以前から<柳井>は<炭津>が幽霊だと知りながら<春奈>との会話に耳を傾けています。
ある日<春奈>は自分が5歳の頃に起こった札幌の自宅の火事についての推理を、名探偵と推薦する<柳井>の言葉に従い<炭津>に語り始めるのですが・・・。
著者には幽霊のお婆ちゃん探偵が活躍するほのぼのとした 『ハートブレイク・レストランン』 がありますが、本書は学生時代の出来事に端を発し、「復讐」というキーワードが温かく切ない<炭津>の過去が余韻を残すミステリーでした。