今年の読書(40)『逍遥の季節』乙川優三郎(新潮文庫)
3月
26日
また博識な知識が、宝石のようにあちらこちらに光る文体も、これまた感動を覚えますが、この一冊は正に後者の一冊でした。
江戸の片隅に、恵まれない育ちを背負いながら、それぞれが自立するために手に職を持つ女たちを主人公にした、七篇からなる短篇集です。
『竹夫人』は三味線の師匠として生きる<澄(すみ)>、『三冬三春』は絵師として生きる<阿仁>、『夏雨草』は根付け作りに情熱を傾ける<ふさ>、『秋草風』は糸の染色に生きる<萌>、『細小群竹』は髪結いの見習いの<すず>、『逍遥の季節』では踊りの<藤枝>と生け花の<紗代乃>の葛藤等、その世界で生きる女たちの心の憧憬を見事に描き切っています。
パソコンも携帯電話もない時代に生きる、「男と女」・「親と子」・「師匠と弟子」の人情味あふれる生き様が、爽やかさを残してくれる一冊でした。
投稿日 2013-03-26 20:38
ワオ!と言っているユーザー
投稿日 2013-03-27 05:49
ワオ!と言っているユーザー