『桃源』の「新垣・上坂」、
『熔果』の「伊達・梁内」などバディーモノのエンターティメント小説シリーズが楽しめる<黒川博行>ですが、本作は「新垣・上坂」シリーズの『桃源』の延長線上の作品として、2022年11月に単行本が刊行され、2025年7月25日に文庫本(1155円)が発売されています。
食品卸会社の社長「篠原紀昭」が行方不明になったと妻の「篠原真須美」が、京橋署に捜索願を届けるところから物語は展開します。面接したのは、暴犯係の刑事「映画オタクの勤ちゃん」こと「上坂」と「礒野」でした。
当初京橋署は、単なる失踪事件だとみていましたが、「篠原紀昭」の遺体が高速道路の非常駐車帯で見つかり、死因は、資金繰りに行き詰まった末の自殺と見て捜査を始めますが、「篠原」に掛けられた巨額の保険金、不渡りになった手形とそれをサルベージしたヤクザ、そして篠原を巡る女たち、妻「真須美」の過去などがめぐり合い、「篠原」の足取りをたどる地道な調査で、その〈連鎖〉から事件の核心に迫る「上坂・磯野」でした。
相変わらずの「映画オタクの勤ちゃん」とバディーを組む麻雀好きの「礒野」とのコンビも秀逸で、<今野敏>や<堂場瞬一>の描くエリート刑事とは違い、どちらかというと品行不良の刑事ですが、エンターティナメントとして、十分に満足できる694ぺーじでした。