今年の読書(56)『流転』笹本稜平(双葉文庫)
10月
14日
著者<笹本稜平>は、2021年11月22日、急性心筋梗塞のため70歳で亡くなられています。訃報は翌2022年1月14日に公表され、ファンとして驚きました。本書『流転』は、遺作として、2022年4月 双葉社より刊行され、「越境捜査」シリーズ『相剋』に続く9作目として、2024年8月10日に文庫本が発売されています。
神奈川県警の「宮野」が横浜で偶然見かけたのは12年前のIT富豪の沼田一家殺人事件で指名手配され、20億円の資産とともに海外逃亡したとされる男「木津芳樹」でした。捜査をはじめた警視庁の「鷺沼友哉」たちでしたが、その矢先、「木津」が突如、隠れ家のマンションから飛び降り自殺を図ります。
一命を取り留めた男の容態を気にしながら調べを進めていくと、マンションの管理会社の総務部長「中村和俊」と「木津」とのかかわりが判明、また「中村」の背後に半グレ、闇金女王、中国人殺し屋など裏社会の人間が関わっていることがわかってきます。
富豪一家殺人事件の真相は、そして本物の巨悪の正体は、消えた20億円の行方とともに、「鷺沼」を中心とする刑事5人の〈タスクフォース〉の奮闘が小気味よく進みます。
消えた20億円の行方とともに最後は、「宮野」が企む、経済的制裁という名の金儲けができずに終りますが、ニンマリとする結末が待ち受けています547ページで、これから<笹本稜平>の新作が読めないと思う悲しい気持ちで読み終えました。