今年の読書(33)『輪舞曲(ロンド)』朝井まかて(新潮文庫)
5月
30日
<朝井まかて>の『輪舞曲(ロンド)』は、2020年4月17日に単行本が刊行され、2023年4月1日に文庫本が発売されています。シーボルトを描いた『先生のお庭番』や植木屋稼業の『ちゃんちゃら』など植物好きとして《植物系小説》として読み始めましたが、小気味よい文体で読みやすく、江戸時代の介護問題を扱った『銀の猫』、江戸随一の遊郭・吉原を舞台とした『落花狼藉』 など、史実に沿った歴史的な主題作品を楽しんできましたが、ついに大正時代の近代に入ってきました。
本書の主人公は「伊澤蘭奢」、「私、女優になるの。どうでも、決めているの」。「松井須磨子」の舞台に胸を貫かれ、27歳で津和野から夫と子を捨て出奔した<三浦繁>は、東京で女優「伊澤蘭奢」へと変身しました。「私、四十になったら死ぬの」とうそぶき、キャリア絶頂で言葉通りに世を去った女の劇的な人生を、愛人の「内藤民治」、恋人の「徳川夢声」、作家「福田清人」ら三人の愛人と息子「伊藤佐喜雄」の目から、その万華鏡のような人生を描いています。
「私、四十になったら死ぬの。」松井須磨子の後を継ぐと目された女優、伊澤蘭奢が口癖の通り早逝します。そして集まった四人の男。愛人兼パトロンである実業家の「内藤民治」、蘭奢が人妻だった頃からの恋人「徳川夢声」、サロンに出入りする帝大生の「福田清人」、そして生き別れの息子「伊藤佐喜雄」は、「伊澤蘭奢」の遺稿集を発行する話し合いのために集う場面から物語は幕開けです。その後、彼らそれぞれが見た「蘭奢」の姿が、一人ひとりの語りで紡がれていき、〈輪舞曲〉のように男たちを幻惑しながらもひとすじに生きた一人の女の姿を浮かび上がらせていきます。
大正期から昭和にかけてが舞台で、当時の世情や演劇業界や映画史の実情がよくわかり、別の意味でも著者の取材力の綿密さに感心しながら面白く読み終えました。やはり目が離せない作家の一人です。
本書の主人公は「伊澤蘭奢」、「私、女優になるの。どうでも、決めているの」。「松井須磨子」の舞台に胸を貫かれ、27歳で津和野から夫と子を捨て出奔した<三浦繁>は、東京で女優「伊澤蘭奢」へと変身しました。「私、四十になったら死ぬの」とうそぶき、キャリア絶頂で言葉通りに世を去った女の劇的な人生を、愛人の「内藤民治」、恋人の「徳川夢声」、作家「福田清人」ら三人の愛人と息子「伊藤佐喜雄」の目から、その万華鏡のような人生を描いています。
「私、四十になったら死ぬの。」松井須磨子の後を継ぐと目された女優、伊澤蘭奢が口癖の通り早逝します。そして集まった四人の男。愛人兼パトロンである実業家の「内藤民治」、蘭奢が人妻だった頃からの恋人「徳川夢声」、サロンに出入りする帝大生の「福田清人」、そして生き別れの息子「伊藤佐喜雄」は、「伊澤蘭奢」の遺稿集を発行する話し合いのために集う場面から物語は幕開けです。その後、彼らそれぞれが見た「蘭奢」の姿が、一人ひとりの語りで紡がれていき、〈輪舞曲〉のように男たちを幻惑しながらもひとすじに生きた一人の女の姿を浮かび上がらせていきます。
大正期から昭和にかけてが舞台で、当時の世情や演劇業界や映画史の実情がよくわかり、別の意味でも著者の取材力の綿密さに感心しながら面白く読み終えました。やはり目が離せない作家の一人です。