今年の読書(79)『シーソーモンスター』伊坂幸太郎(中公文庫)
12月
20日
表題作以外に『スピンモンスター』の中編2篇が収められ、〈螺旋プロジェクト〉として「共通ルールを決めて原始から未来までの歴史物語を書く」というもので、<伊坂幸太郎>の呼びかけに8人の作家<朝井リョウ・天野純希・伊坂幸太郎・乾ルカ・大森兄弟・澤田瞳子・薬丸岳・吉田篤弘>が参画しています。
物語の〈ルール〉は3つあり、①「海族」VS[山族」の対立を描く、②共通のキャラクターを登場させる、③共通シーンや象徴モチーフを出すというものです。10月に2冊、11月二さつ、12月に2冊のペースで文庫本発売されますが、単独でも楽しめるということで呼びかけ人の<伊坂幸太郎>を読んでみました。
表題作『シーソーモンスター』は、一見家庭内の嫁「北山宮子」と姑「セツ」のいざこざ問題に見せながら元情報員の妻とこちらも元諜報員の姑の争いをコミカルに描いています。
『スピンモンスター』は近未来の日本を舞台に描かれ、SNSやメールでの連絡ではなく手書きの手紙のフリーの配達人「水戸直正」に託された謎の手紙を元に、情報管理社会を揶揄して描いています。警察組織の情報管理社会を描いた<誉田哲也>の『背中の蜘蛛』を読んだ後だけに、現実感を感じながら(480ページ)読み終えました。