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今年の読書(39)『弾丸メシ』堂場瞬一(集英社文庫)

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<堂場瞬一>といえば、警察小説とスポーツ小説を軸に多彩な作品をハイペースで生み出す作家で、日本の戦後警察シリーズとして文庫本で『焦土の刑事』『動乱の刑事』『沃野の刑事』の三部作を読み終えたばかりです。著者の作品の中にはジャンルを超えて共通する特徴があり、それが食の描写です。

マメに家庭料理を作るシングルファーザーを登場させる一方で、カレーとファストフードばかりの刑事を描いています。珈琲にこだわりのある刑事を出したかと思えば、ストイックなまでに栄養管理をするランナーの話も出てきます。その食の描写は、そこに著者が人間と生活のリアル感を追及しているに他ならない部分ではないでしょうか。

本書『弾丸メシ』は、2019年10月25日に単行本が刊行されていますが、文庫版書下ろしが一篇追加されて、2022年6月25日に文庫本が発売されています。著者が料理を食べてそれをレポートするという極めてオーソドックスな構成ですが、ルールが設定されています。①日帰りであること、②食事は1時間以内に済ませること、③食べ残さないこと、の三つです。それゆえにタイトルの『弾丸メシ』に納得です。

紹介されるている12篇は福島の円盤餃子や横浜での各国料理、函館のハンバーガー、高崎のソースカツ丼、熊本の太平燕、東広島の美酒鍋、ヘルシンキのカラクッコ、アントワープのフリットとワッフルなどが登場していますが、 日帰りの「弾丸メシ」でヘルシンキやアントワープとは、そこは本文を読めば「そういう日帰りなのか」と納得できます。

各料理の描写は割愛しますが、とにかく具体的で美味しそうで食べたくなりますが、それだけならグルメ情報を読めばすみます。やはり面白いのは〈堂場瞬一の目線での描写〉なのです。

本人に言わせると本書は「ルポ」なのだそうですが、かって<堂場瞬一>は「エッセイ」は書かないと言っていました。本書はまさに、<堂場瞬一>自一自身がしっかりと描かれた食エッセイではないのかなと読み終えました。
#グルメ #ブログ #文庫本 #読書

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