今年の読書(37)『沃野の刑事』堂場瞬一(講談社文庫)
7月
2日
第2作目から18年が経った1970年。大阪万博を控え、高度経済成長で沸き立つ日本を舞台としています。
捜査一課と公安一課を対立させたある爆破事件以降、袂を分かった刑事の「高峰靖夫」と公安の「海老沢」は、それぞれ理事官に出世し、国と市民を守ってきましたが、かつてふたりの同級生だった週刊誌編集長「小嶋学」の息子「和人」の飛び降り自殺で亡くなったことがきっかけで、再び3人の立ち位置の違いがありながら絡み合っていきます。
「小嶋」は、息子が学生時代に参加した学生デモの参加で逮捕されたことが原因で自殺したと思い、公安か警察が情報を流したと信じており、「高峰」や「海老沢」が独自に自殺の真相を調べを進めるうち、総合商社に勤める「和人」に関して、アメリカの戦闘機導入にまつわる汚職事件の存在が徐々に明るみに出てきます。
尊重すべきは国家の利益なのか、それとも名もなき個人の名誉なのか。「警察の正義」を巡り、「高峰」と「海老沢」はまたしても踏み絵的な事件に向き合うことになります。
本書で三部作として完結ですが、「高峰」の高校生の息子「拓男」が将来の職業として「警察官」の夢があるようで、高峰家の「警察官」三代目としての伏線なのかなと期待しながら読み終えました。