『感染』で第1回小学館文庫小説賞を受賞し、医療ミステリーの第一人者として、
『治験』・
『細胞異植』などを詠んできています<仙川環>の『鬼嵐』です。2018年に単行本として刊行され、2021年12月12日に文庫本として発行されています。
女医の「及川夏未」は、東京の大学病院での感染症研究者生活の軋轢から挫折し、北関東の父が経営するクリニックがある地元に戻ります。過疎化が進み、農業では外国人労働者の増加が目立つ地元では、町おこしの目玉にと、中国産の羊(シャオヤンカイ)を地元産の食肉として商品化しようとする動きが進んでいました。
そんな中、クリニックの患者や看護師が出血を伴う謎の感染死が連続して起こります。
感染病の疑いを感じた「夏未」独自に調査を始めるのですが、他県でも発病が確認され、先輩医師の「友永雄介」が国の調査チームの代表になり、「夏未」は助手としてチームに参加することになりますが、調査は思うように進まず妨害する出来事が次々に起こります。
感染源は何か、そしてその裏側には何があるのか。読み応え満載の社会派医療ミステリーとして最後まで面白く読めた一冊でした。