まさに著者<堂場瞬一>が読売新聞東京本社に入社、社会部記者としての経験が生かされた新聞記者を主人公に据えた『帰還』は、2019年4月に刊行され、2021年11月10日に文庫本が発売されています。
東日新聞の四日市支局長の「藤岡裕巳」が、工場の夜景を撮影中に水路に転落して溺死してしまいます。警察は事故死として処理しましたが、30年前「藤岡」と共に新人記者時代を津支局で過ごした同期3人は、水辺を嫌っていたのを知っているだけに納得がいきません。
現在は編集委員になっている「松浦恭司」、初の女性役員になりそうな独身の「高木歩美」、出世コースを外れ東日文化財団に出向している「本郷太郎」は、なぜ東京本社勤務から四日市支局に転勤願を出したのかという疑問と合わせ、真相究明に動き出します。
まずは「藤岡」の通夜と葬儀にも顔出ししていた元衆議院議員の「猪熊」の存在に疑問を持ち、自由行動がとりやすい「松浦」が再度四日市に出向き、調査を始め、「高木」と「本郷」は調査の後方支援に回ります。
新聞記者という職業の習性や取材本能を随所にちりばめながら、事件の背景に迫っていきますが、「本郷」自身の結婚にまつわる思わぬ展開に唸る幕切れでした。
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